照ノ富士(寄り切り)若隆景話題豊富な名古屋場所の中でも、一番の目玉は照ノ富士の綱取りだ。この1年で3回優勝し、2場所連続優勝中。審判部長の伊勢ケ濱親方(元横綱旭富士)が、「(優勝できなくても)優勝に準ずる成績なら」と言うのも、師匠だから甘くというのではなく、当然と思われる。
初日は先場所敗れた遠藤を中に入れさせず、自分の体勢に持ち込むというよりは、相手を十分にさせないことを心掛けて、前に圧力をかけて快勝。「落ち着いて取れてよかった。(綱取りの)緊張感は特にないので、集中してやるだけです。今できることをやってきたので、それを信じてやるだけです」と語っていた。
2日目の対戦相手は新小結の若隆景。過去の対戦は4勝1敗も、1敗は不戦敗で相撲を取って負けたことはない。相手は小兵なので、一気に持っていかれることはないとどっしり構えて取っている印象だ。
立ち合いで左に動いて左上手を取りにいった若隆景。出し投げで崩そうとするが、照ノ富士はしっかりと足がついていき、右で左を抱え込む。若隆景はこれを嫌って、左廻しを離して右で前ミツを取るが、これも抱え込まれる。モロ差しの体勢から、あおって前に出るが、照ノ富士は左に回りながら残すと左手を伸ばして上手をつかむ。これで勝負あり。照ノ富士は左上手から引きつけて密着し、正対したままジリジリと前に出て寄り切った。
敗れた若隆景は、「とにかく先に仕掛けていこうという意識で取りました。相撲は悪くなかったと思いますけど、重かった」と悔しそうに振り返った。
私は2日目、西の担当だったので、照ノ富士の声は聞けなかったが、初日と同じようなコメントだっただろう。とにかく落ち着いている。慌ててバタバタすることがない。どっしりと構えて、格下には取りこぼさないという負けない相撲を取っている。2日間の相撲を見る限り、かなりの高確率で綱をつかむのではないか。
もう1人の注目力士である白鵬は、遠藤をうまくさばいて送り出し。最後は上手にかかっていて決まり手は上手出し投げになった。相撲のうまい遠藤だが、うまさなら白鵬の方が上。連勝スタートで気持ちも少し楽になっただろう。
心配なのは貴景勝。逸ノ城に頭から当たった瞬間に首に電気が走り、力が抜けてしまったようだ。簡単に寄り切られ、車イスで引き揚げた。大事に至らなければいいが……。
文=山口亜土