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2021-07-24

【Tokyo2020 ボクシング】展望:男子ウェルター級 絶対の優勝候補マコーマックをもっとも苦しめたのは岡澤セオン

ヨーロッパ予選決勝。マコーマック(左)はザムコボイを難なく破った

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 プロ、アマチュア問わず、もっとも層が厚いのがこのウェルター級周辺だ。今大会も粒ぞろいの好選手が集まっている。ただし、自信を持って優勝候補は言えるのは1人しかいない。イギリスのパット・マコーマックだ。速さ、強さ、うまさ。そのすべてにおいて一歩も二歩も抜きんでている。そして、このマコーマックをもっとも追いつめたのが日本の岡澤セオン(INSPA)である。

男子ウェルター級(69㎏級)

シード選手
1 パット・マコーマック(イギリス)
2 アンドレイ・ザムコボイ(ロシア)
3 ロニエル・イグレシアス(キューバ)
4 ゼヤド・イーシャシュ(ヨルダン)

日本代表
岡澤セオン(INSPA)

 マコーマックの実力が際立って見える。身長183センチのスリムな長身にして、スピード豊かで動きも軽快。いざ攻撃態勢に入ると、どのパンチも強烈だし、コンビネーションは多彩。さらにカウンターのタイミングも素晴らしい。2019年世界選手権決勝ではザムコボイに速攻を仕掛けられてしまう。2ラウンドにバッティングで左目上を大きくカットしてストップがかかり、それまでスコアであまりに不運な形で判定負け。この6月のヨーロッパ予選決勝での再戦では、つけ入るスキを与えずに快勝。現在地の力関係をしっかりと証明してみせた。マコーマックのいるブロックには強敵が見当たらず、よほどのアクシデントがない限り、決勝までひとっ飛びでやってくるはず。
ヨーロッパ予選決勝。マコーマック(左)はザムコボイを難なく破った
日本期待の岡澤(左)は強敵ぞろいのブロックでスタート

 2018年あたりから無敵状態が続いているマコーマックがもっとも苦しんだのが、2019年世界選手権準々決勝でぶつかった岡澤だ。岡澤の速い身のこなしに空転を重ね、判定は3対2の僅少差だった。もともとサウスポー相手にはやや窮屈な戦い方になるマコーマックだけに、もし岡澤と再び戦えば、あるいは、ということも十分に考えられる。
ロンドン五輪の金メダリスト、イグレシアス(右)は2019年パンアメリカン大会でも優勝した
ロンドン五輪の金メダリスト、イグレシアス(右)は2019年パンアメリカン大会でも優勝した

 ただし、岡澤のいるサイドは、難敵がずらりとそろう。初戦から昨年のアジア予選2回戦で敗れたクリシャン・ビカス(インド)との対戦。おかげで敗者復活のトーナメントを薄氷を踏む思いで戦わなければならなかった。雪辱がかなっても、次は現役レジェンドのひとり、ロニエル・イグレシアス(キューバ)との対戦となる。32歳となって、さすがにかつてほどのオーラはなくなっても、特級のテクニシャンであることに変わりはない。同じ山型には瞬間スピードでは最高レベルのデランテ・ジョンソン(アメリカ)もいれば、五輪出場のためにキューバからアゼルバイジャンに国籍を変えたベテラン、ロレンゾ・ソトマヨル、そしてザムコボイ。いずれも強敵だらけ。岡澤がこの強豪たちすべてを打ち破れば、それだけですごいことだ。

文◎宮崎正博 写真◎ゲッティ イメージズ、BBM Photos by Getty Images,BBM
35歳のソトマヨル(右)は迫力満点のファイトを見せる
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