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2021-07-26

元ソフト日本代表・山根佐由里が見た東京五輪アメリカ戦「5回まで無失点の藤田投手、すごく良かった」

7月21日(水)から27日(火)まで、福島・あづま球場、神奈川・横浜スタジアムで開催される『2020東京オリンピック』。ソフトボール・マガジンWEBでは、元日本代表の山根佐由里さんに、各試合を振り返っていただく。本日は、26日(月)に行われた予選リーグ第5戦のアメリカ戦の振り返りと、27日(火)20時から行われる決勝戦の見どころをお伝えする。

アメリカとの前哨戦
いつもと違う3つのこと

 すでに2チームとも決勝進出を決めているので、手の内を隠しながらの難しい戦いになりました。その中で、日本の選手起用に関してはいつもと違う点が3つあったので紹介したいと思います。

 一つ目は、山崎早紀選手を一番に起用したこと。一番は打席が多く回ってくる打順なので、いい当たりが出ていなかった山崎選手に一つでも多く打席に立たせることで、調子を上げていってほしいという考えがあったのかもしれません。

 そして二つ目は峰幸代選手に先発マスクをかぶらせたこと。峰選手がマスクをかぶることで、実際に座ってみて感じたことをベテラン捕手の視点から伝えることができると思いますし、これまで先発でマスクをかぶってきた我妻悠香選手にベンチからアメリカ打線を研究してほしかったという考えもあるのでは。

 最後に、藤田倭選手を「四番・投手」で起用したこと。先発の機会を与えられた第3戦のイタリア戦では途中降板となり、本人もすごく悔しい思いをしたと思います。この試合はあなたが試合をしっかりつくりなさいという、宇津木麗華ヘッドコーチからのメッセージが込められていたのではないでしょうか。


アメリカはカーダが先発
一発を浴びサヨナラ負け

 アメリカチームについていつもと大きく違ったことは、先発がキャット・オスターマン投手でもなく、モニカ・アボット投手でもなく、今大会初先発となるアリー・カーダ投手だったこと。カーダ投手は右打者に対して食い込んでくるボールを持っているので、案の定、右バッターが苦戦していましたね。

 そのほかにも、バッターがのけぞるほどのライズボールも投げていましたし、内容としてはすごく良かったと思います。何よりも、気持ちのこもったピッチングをしていました。オスターマン投手をワンポイントで起用したことには驚きもありましたが、市口侑果選手、当たっていた川畑瞳選手と左バッターが続く場面だったので納得です。


▲アメリカは今大会初先発のアリー・カーダが試合をつくった(写真/Getty Images)

 日本の藤田投手に関しては、5回までノーヒットに抑える素晴らしいピッチングを見せてくれました。まず、試合の入り方が良かったですね。大会を通して6割超えの一番打者、ヘイリー・マクレニーを第1打席、第2打席と抑えることができましたし、投げたいところにしっかりと投げ込んでいた印象です。中盤以降は四死球もありましたが、あれは攻めた結果。何よりも、終始落ち着いて投げていたのが良かったです。イタリア戦よりも集中していましたし、心が整っていたと思います。


▲アメリカの強力打線を相手に5回まで無失点の好投を見せた藤田倭(写真/Getty Images)

 6回に同点とされ、最後はホームランを打たれてサヨナラ負け。スイッチが入ったときのアメリカの怖さをあらためて感じましたね。6回から一気に雰囲気が変わりました。


▲7回にサヨナラのソロ本塁打を放ちベースを回るケルシー・スチュワート(写真/Getty Images)

投打で役者がそろう
アメリカの攻略法とは!?

 今日の試合でサヨナラのホームランを打ったのは、七番のケルシー・スチュワート選手。実は彼女、2018年の世界選手権決勝でもサヨナラ打を打っています。あの試合では九番を打っていましたが、アメリカは下位打線だからといって油断できません。なぜなら、誰もがホームランを打てるバッターだからです。

 また、前述したマクレニー選手も、アメリカ打線のキーとなる一番バッターです。全球種にしっかり対応してきますし、広角に打てて、バットに乗せるのも上手。そして、この試合でもそうでしたが、マクレニー選手が塁に出ると二番のジェニー・リード選手もいい働きをする。とにかく、マクレニー選手を出さないことが大事です。


▲6割超えの脅威の一番打者、ヘイリー・マクレニー(写真/Getty Images)

 投手陣のレベルもピカイチ。今大会は4人のピッチャーを登録していますが、全員が違うタイプ。アボット投手は左の速球派でライズ系、同じく左腕のオスターマン投手はスピードはそこまでないけれどドロップ、ライズといった変化球がある。カーダ投手は右の速球派でライズと横の変化球がある。若き右腕、レイチェル・ガルシア投手も速球派で変化球もある。それぞれがいい働きをしていますし、アボット投手とオスターマン投手のベテラン二人は北京五輪を経験し、試合のつくり方を知っているのが強みです。

 そのアメリカに対して日本は、武器としている小技をどれだけ正確に決められるか。もちろん長打が出ればいいけれど、アメリカの投手陣から何本も奪うのは難しいので。投手陣に関しては、上野投手、後藤投手、藤田投手と3本の矢で戦ってほしいですね。藤田投手は2012年から日本代表に選ばれていて、上野投手が欠場した16年の世界選手権は投手陣の軸となりました。決勝では、3人で一つのゲームを勝ち切る姿を見られたらうれしいですね。


▲試合後に上野由岐子と会話を交わす藤田倭(©WBSC)

 ここ数年、日本もアメリカもあまり大きなメンバー変更はなかったので、お互いを知り尽くした中で戦うことになります。オリンピックに向けていろいろと準備してきていると思うので、やってきたことを信じてあとは出し切るだけだと思います。


▲決勝戦は27日20時にプレイボール(写真/Getty Images)

【PROFILE】
やまね・さゆり/1990年1月24日、三重県生まれ。右投右打。投手。宇治山田商業高-レオパレス21(2008年~09年)-トヨタ自動車(10年~17年)。トヨタ自動車では12年から16年までの5年間でリーグ記録の42連勝を打ち立て、14年には最優秀投手賞を受賞。日本代表では10年、14年、16年と世界選手権出場。17年限りで現役を引退し、現在はトヨタに勤務しながらソフトボール普及のためメディア等で活躍中。

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