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2021-09-02

【ボクシング】苦心さんたんのV3。井岡一翔が判定で王座を守る

井岡(右)にいつもの冴えは見えない。苦しいラウンドがいくつもあった

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 1日、東京・大田区総合体育館で行われた世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦は王者の井岡一翔(32歳=志成)が果敢に攻めてきた同級2位のフランシスコ・ロドリゲス・ジュニア(29歳=メキシコ)に3-0(116-112、116-112、116-112)の判定勝ちを収めた。昨年12月にTKOで下した田中恒成(畑中)戦以来、8ヵ月ぶりのリングで3度目の防衛を果たした。

 世界戦は20試合目。世界4階級制覇王者の井岡は老獪にポイントを手繰り寄せて、ベルトを死守した。結果は中差の判定だったものの、思い描いていた展開にはほど遠い。
「内容には全然満足していない。採点を気にしながら戦わないといけなかった。自分のやりたいことよりも、いまどうするべきかを考え、やりたいことをがまんして戦った。今日は、経験で勝てた試合」
ロドリゲスの右ストレート。井岡はそのタイミングを読み切れなかったという
ロドリゲスの右ストレート。井岡はそのタイミングを読み切れなかったという

 立ち上がりから技巧派で鳴らしてきた井岡らしさが見えなかった。自ら管理する距離で巧みに外すことをできず、相手の突進を止めるためのカウンターも冴えない。要所でボディを叩き、辛うじてポイントを稼いだものの、流れを引き寄せることはできなかった。前半は果敢に攻めてくる挑戦者の勢いに手を焼いて四苦八苦。3回には左右のフックを顔面に浴び、後退する場面もあった。
「相手が出てくることは想定していたけど、メキシカン特有の(懐に)入ってくるリズムをなかなかつかみ切れなかった」
序盤からのボディブロー。これが結果的に挑戦者の失速をまねきよせた
序盤からのボディブロー。これが結果的に挑戦者の失速をまねきよせた

 勝負を分けたのは試合中盤。ロドリゲスがペースを落とし、手数を減らすなか、王者は距離を取りながら正確なジャブを突き、ポイントをしっかり手にした。9回こそ相手の猛攻を受けて、ラウンドを支配されたものの、致命打はなし。ときには接近戦に付き合いつつも、危機を察知すると、すぐさまクリンチで逃れた。
「チャンピオンはクリーンな試合をしていなかった。抱きついて止めていた」
 果敢に打ち合いを挑んだロドリゲスは王者の姿勢を批判したが、これもまたテクニック。たとえ看板に傷がつく可能性があっても、背に腹は代えられぬ状況がそうさせたのかもしれない。世間が注目する指名試合でつまづくわけにはいかなかった。プレッシャーも少なからずあったはずだ。今年始めにはドーピング検査で日本ボクシングコミッションの不手際により違反の疑いをかけられ、リング外で心労を重ねた。さらに緊急事態宣言の延長を受けて急きょ無観客開催に切り替わるなど、不測の事態が続いた。それでも、結果がすべての世界である。
 次の目標は2団体統一戦。すでに狙いは具体的に定めており、IBF王者のジェルウィン・アンカハス(フィリピン)の名前を挙げた。今年の大晦日の実現に向けて、ジムに希望を出していることも明かした。苦難を乗り越えた32歳のチャレンジは、まだまだ続く。
 井岡の戦績は29戦27勝(15KO)2敗。2階級制覇を狙った元WBO・IBF世界ミニマム級王者ロドリゲスの戦績は40戦34勝(24KO)5敗1分。
文◎杉園昌之 写真◎山口高明
勝利のコール。井岡の表情には歓喜ではなく、安堵が広がる
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