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2021-09-24

【NFL】パンサーズ、チーム史上5回目の開幕3連勝 ディフェンスがハッスル、テキサンズ新人QBミルズを封じる

【パンサーズ vs テキサンズ】パンサーズ3連勝の原動力となったQBダーノルド=photo by Getty Images

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米プロフットボール・NFLは、現地9月23日、テキサス州ニューストンで開催された第3週のサーズデイナイトゲームで、カロライナ・パンサーズとヒューストン・テキサンズが対戦。オフェンス・ディフェンス共に力強さを見せたパンサーズがテキサンズを撃破し、開幕3連勝とした。

カロライナ・パンサーズ○24-9●ヒューストン・テキサンズ
(2021年9月23日、NRGスタジアム)

【得点経過】
パンサーズ 第1Q 残り6:36 QBサム・ダーノルド5ヤードTDラン (キック成功)
7-0
テキサンズ 第2Q 残り0:25 QBデービス・ミルズ1ヤードTDパス→WRアンソニー・ミラー(キック失敗) 
7-6
パンサーズ 第3Q 残り6:20 TEトミー・トレンブル7ヤードTDラン (キック成功)
14-6
パンサーズ 第4Q 残り12:44 Kゼイン・ゴンザレス21ヤードFG
17-6
テキサンズ 第4Q 残り9:09 ジョーイ・スライ53ヤードFG
17-9
パンサーズ 第4Q 残り4:07 サム・ダーノルド1ヤードラン (キック成功)
24-9

「雑草系の再建屋」パンサーズのルールHCが見せる手腕

 テキサンズは第2週のブラウンズ戦で、先発QBのタイロッド・テイラーが負傷した。オフシーズンから長引く放出要求と訴訟問題などがあり、昨年までのエースQBデショーン・ワトソンは登録のみ、ゲームに出す意思はチームとしてもない。

 やむなく、今春のドラフト3巡指名入団のデービス・ミルズが先発した。QBとして技術的基礎がしっかりしている上に、名門スタンフォード大でプレーしていたことから、評価の高かったミルズだが、実戦経験の不足が懸念されていた。スタンフォードでは、3シーズンで13試合、昨年は5試合しかプレーしていなかった。

【パンサーズ vs テキサンズ】テキサンズの新人QBミルズを追いかけるパンサーズディフェンス陣=photo by Getty Images

 そのミルズに、パンサーズディフェンスは容赦なくラッシュを仕掛けた。過去2試合、ディフェンスプレーの中で29%だったブリッツをこの試合では4割近くまで増やした。

 厳しいディフェンスのプレッシャーの中、テキサンズのミルズは健闘した。ターンオーバーはゼロ、前半終了の2ミニッツオフェンスでは、ノーハドルオフェンスを操って、1分12秒で64ヤードを進んでTDを記録した。ただ、見せ場はこれだけだった。

 テキサンズのオフェンスは9回のドライブでパント6回、4thダウンギャンブル失敗1回に終わった。

 試合を通じて猛ハッスルを続けたパンサーズのアタッキングディフェンスは、QBサックは4回、タックルフォーロスを6回記録した。

 パンサーズのマット・ルールヘッドコーチは就任2年目の45歳。コーチ歴は23年だが、パンサーズのHCになるまでは、どちらかと言えば無名の存在で、選手としてもコーチとしてもNFLとは無縁の人生だった。風貌的には、ブルーワーカー。厳しいが、熱い、選手の立場に立つプレーヤーズコーチだ。

【パンサーズ vs テキサンズ】パンサーズのOLパラディスと談笑するルールHC=photo by Getty Images

 カレッジからNFLに転身するコーチは多いが、選手・コーチとしてNFL経験を持っているか、強豪大学で実績を積んでいるか、あるいは両方を兼備しているか、いずれかのパターンが多い。今のNFLでは、シーホークスのピート・キャロルHC、カーディナルスのクリフ・キングスベリーHC、ジャガーズのアーバン・マイヤーHCが好例だ。

 ルールHCは、カレッジでのHC経験は2校で、テンプル大とベイラー大。2校とも強豪大学とは言えない、FBSの中位~下位の大学だ。そして、キングスベリーHCやマイヤーHCのような、優れた戦術を駆使するタイプでもない。ディフェンスが専門だが、OLやRBのコーチもできる。言ってしまえば、「雑草系」何でも屋コーチだ。

 ただ、ルールHCは、チーム再建に高い能力を持つ。テンプル大では就任1年目は2勝10敗だったが、3年目に10勝3敗、4年目10勝4敗で所属カンファレンスAACを連覇した。ベイラー大では1年目1勝11敗から、3年目には11勝3敗まで立て直した。

 手法としては、タレントに頼らず、現有戦力を束ねてチームを活性化する。埋もれていた選手の能力を発掘し育成する力もある。テンプル大では4シーズンで25人、ベイラー大では3シーズンで12人をNFLに送り込んだ。リクルート力が弱い中位以下の大学としてはかなり異例だ。

 パンサーズでもその手法は変わらない。エースQBだったキャム・ニュートンを2020年3月に放出しながら、昨年、今年と、ドラフト1巡でQBを指名しなかった。パンサーズの1巡指名権は昨年が7位、今年が8位。多少のトレードアップは必要だとしても、その気になればエリートQBを指名するチャンスがあったが、見向きもしなかった。

 昨年はテディ・ブリッジウオーター(現ブロンコス)を選び、今季はジェッツの元1巡QBダーノルドに白羽の矢を立てた。そのダーノルドが確実に本来の能力を発揮し始めている。ジェッツ時代に重ねた辛い記憶を少しづつ拭い去るような司令塔ぶりだ。

 この試合では、今季ここまで大車輪の活躍だったRBクリスチャン・マキャフリーが、第2クオーター早々に負傷退場する危機を迎えたが、第3Q、自陣9ヤードから始まったオフェンスで、ダーノルドが4回のパスを成功させ、レッドゾーンへ侵入しTDに結びつけた。

 ダーノルドはこの試合、パス304ヤード、TDパスはなかったが、第1Qと第4QにはランでTDを奪った。
【パンサーズ vs テキサンズ】第1Q、自らのランでTDを奪ったパンサーズQBダーノルド=photo by Getty Images

 伏兵も活躍した。ドラフト4巡RBチューバー・ハバードが、第4Q、残り9分からのオフェンスでファーストダウンを更新するランを連発した。リードは8点、できればパスを使いたくない場面だった。このドライブはTDにつながり、勝利を決定的にした。

 ハバードは、カナダ出身で、高校までカナディアンフットボールしかプレーしたことがなかったが、オクラホマ州立大時代の2019年には全米1位となるラン2094ヤードを記録した実力者。前半のゴール前ギャンブルで、1ヤードが取り切れない失態を犯したが、終盤の大事な部分で取り返した形だ。

【パンサーズ vs テキサンズ】第4Q、ファーストダウンを奪うRBハバード=photo by Getty Images

 昨シーズン5勝11敗だったパンサーズだが、8点以内の差で負けたのが8試合。ディフェンスを強化し、競り合いに勝つことで、改善できるとルールHCは睨んでいるが、ここまではその通りとなっている。

 パンサーズの開幕3連勝は、球団創設以来5回目という。過去の4回中、3回がチャンピオンシップ以上、2回はスーパーボウルまで進出している。

 今季、いきなりそこまでの成績を残せるかはわからない。ただ、目を離すことができないチームに変わりつつあるのは確かだ。

【小座野容斉】

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