アメリカンフットボール・Xリーグの最上位「X1スーパー」は10月3日、東西の会場で第3節の3試合があった。富士通スタジアム川崎の、オービックシーガルズ対ノジマ相模原ライズの1戦は、オービックがノジマ相模原を破って3勝(不戦勝含む)で勝ち点9とした。ノジマ相模原は3敗で勝ち点0となった。
オービックシーガルズ○24-0●ノジマ相模原ライズ(2021年10月3日、富士通スタジアム川崎)【得点経過】
オービック 第1Q 4:28 K星野 貴俊, 47ヤードFG
[3-0]
オービック 第2Q 10:03 QBジミー・ロックレイ→WR小坂健太, 18ヤードTDパス (星野キック成功)
11回 91ヤード 3:53 [10-0]
オービック 第3Q 6:00 QBロックレイ→RB望月麻樹, 5ヤードTDパス (星野キック成功)
6回 46ヤード 2:38 [17-0]
オービック 4Q 7:34 RB地村知樹, 10ヤードTDラン (星野キック成功)
11回 97ヤード 5:56 [24-0]
QB小林、WR小坂、そしてRB望月が見せ場 終わってみれば点差が開いたが、前半は、王者・オービックが苦戦した。第1戦のヒーローだったTEホールデン・ハフがアクシデントで試合途中で退いたこともあり、オフェンスが進まない。その状況を打開したのは、普段はそれほど日の当たらないバックアップ・バイプレーヤー的な立ち位置の選手だった。
オービックは、最初のオフェンスシリーズはK星野のフィールドゴール(FG)につなげたが、その後は2シリーズ続けてパント。特に第2Q冒頭のドライブは、マイナス5ヤードの3&アウトという、王者らしくない淡白な攻撃だった。その後、ノジマ相模原のオフェンスが46ヤードを進んでゴール前9ヤードに迫った段階までは、完全にノジマ相模原がモメンタムをつかんでいた。
この危地を、ディフェンスの力で覆したのが、オービックらしさ。ノジマ相模原QBカート・パランデックからハンドオフを受けたRB森本紘介がファンブル、LB岩本卓也がリカバーした。
ここからのオフェンスシリーズで、良い働きを見せたのが、控えQBの小林優之だ。
腕から出血して、アクシデント的にサイドラインに下がったQBロックレイに急遽替わると、ノジマ相模原ディフェンスのペナルティーにも助けられ前進。WR水野太郎に31ヤードのロングパスを決め、レッドゾーンに侵入した。水野には、大型DB渡辺健太がしっかりマンツーマンでついていたが、小林が技ありのバックショルダーパスを見事に決めた。
フィールドに戻ったQBロックレイだったが、1stダウン、2ndダウンのパスは失敗した。特に2ndダウンのパスは、WRの落球だった。このチャンスは、しっかりTDを取って、流れを呼び込みたい場面だけに、イヤな雰囲気になりかけた。
ここでは、WR小坂が見せ場を作った。スロットレシーバーとしてスタートすると、ノジマ相模原のパスカバーの裂け目に走り込んで見事なTDパスキャッチを見せた。
日本体育大から入団して3年目の小林は、163センチとチームで一番背が低いが、QBとしてのセンスに優れる。小学校のフラッグフットボールから練り上げてきたパス戦術の理解に、強肩と運動能力を兼ね備え、WR木下典明も認める実力者だ。
2年目の小坂は、東北大では主将を務めた。かってオービックのエースレシーバーとして活躍した萩山竜馬監督が鍛え上げた、長身でスピードあふれる真面目なWRだ。層の厚いオービックレシーバー陣ではなかなか出番はないが、今季は2回のレシーブがいずれもTDと、集中力と勝負強さを見せている。
後半、勝負所で良い働きを見せたのは、RB望月麻樹だ。
第3Q、オービックは、LB岩本がインターセプトで得たオフェンスを繋いでゴール前まで攻め込んだが、1stダウンのランは1ヤードにとどまり、2ndダウンはパス失敗。
3rdダウンで、QBロックレイは右に走ると見せかけて、鋭いパスをエンドゾーンのレシーバーにヒットした。リードを3ポゼッションとする、貴重なTDをキャッチしたのはディフェンスも無警戒の望月だった。
望月は第4Qにも、自陣8ヤードという悪いフィールドポジションでボールを持つと、中央を突いて一発で10ヤードをゲイン。そこから、売り出し中のRB荒竹悠大、主将の地村知樹のランでTDにつなげた。
「TDのパスは、チェックダウンで、うまい具合に僕が空きました。(QBの)ジミーがスクランブルしたので、それに対応してゾーンに合わせたという感じでした」と望月は話した。
この試合では、主に3rdダウンバックとしてプレーした望月は
「RBユニットで試合に出られるのは5人。誰がどういう形で出るかというのは、年齢は関係ない。(自分の役割に)こだわってやっている結果として、今の出場機会がある。そこでどうパフォーマンスするかは、自分次第」と語る。
望月は、2年連続学生王者に輝いた関学大から、4連覇最後の年にオービックに加入した。学生時代は甲子園ボウルMVPにも輝いたスターRBを、伏兵とか脇役呼ばわりするのは、失礼かもしれない。
ただ、シーズンで100ヤード以上走ったのは2018年が最後で、2019年は82ヤード、昨年は47ヤード。李卓や地村主将ら若いRBにエースの座は譲り、徐々に活躍の場は少なくなっていた。
若い選手が増えたRBユニットでは最年長の30歳。とはいえ、老け込む年ではない。オフェンスの切り札だった李卓がCFLに挑戦中の今季は、望月にも、かってのような力強い突進でチームのランを支える機会は増えてくるだろう。
伏兵と言えば、昨年11月のパナソニック戦で、起死回生のファンブルリカバーを記録した成瀬圭汰は、この試合では1サック、2タックルフォーロスと大活躍、「メーンキャスト」のLBとして強力ディフェンスの看板を背負うまでに成長した。
学生時代からのスターばかりでなく、様々なバックボーンの選手が活躍するのがオービックの活力になっている。
次の相手は、東京ガス。規格外の新外国人QBジェロッド・エバンスを中心に、一戦ごとに力を付け、この日は、大阪でエレコム神戸を撃破した。王者が台頭する力を相手にどういうフットボールを見せるのか、今から楽しみだ。
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同日、大阪で行われた2試合の結果は以下の通り。
パナソニックインパルス○65-17●IBMビッグブルー
東京ガスクリエイターズ○27-23●エレコム神戸ファイニーズ
(2021年10月3日、エキスポフラッシュフィールド)
パナソニックは3勝(勝ち点9)、IBMは2敗1分け(勝ち点1)、東京ガスは1勝2敗(勝ち点3)、エレコム神戸は1勝1敗1分け(勝ち点4)となった。