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2021-10-19

【泣き笑いどすこい劇場】第4回プレゼントその3

現役当時、歌舞伎座を訪れた角聖双葉山。一芸に秀でた者から何かを学ぼうという姿勢からだったと言われる

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寒い時期、心温まる話を聞くのはうれしいものです。平成22(2010)年に突然、全国的に広がった、さまざまな事情から養護施設で暮らす子どもたちに幸せのおすそ分けをする“タイガーマスク運動”もその一つですね。思いがけないプレゼントをもらったり、あげたりすると、もらうほうも、あげるほうも、心豊かになります。今回のキーワードは「プレゼント」です。

生涯の友

力士は常に勝つことが求められるのだが、負けたときこそ、その力士の生き方や人生哲学が垣間見え、時には勝ったとき以上に得るものも多い。

白鵬が超えることができなかった双葉山の69連勝が安藝ノ海の外掛けで止まったのは昭和14(1939)年春場所4日目のことだった。白鵬は63連勝でストップしたとき、転がり落ちた土俵下で、

「これが負けか」

と思ったというが、双葉山の敗戦ショックはより大きく、このあとさらに2連敗している。この連敗直後、当時、名優と言われた歌舞伎の尾上菊五郎(6代目)から、

「今度のようなときこそ、その人の心境がよくわかる。ぜひお会いしたい」

という手紙が届いた。双葉山が歌舞伎座に会いにいくと、

「力士としてではなく、人間として、友達として、お付き合いしたい」

と言われ、以後、2人は四股名や芸名ではなく、双葉山は菊五郎のことを「寺島さん」、菊五郎は双葉山のことを「穐吉君」と呼び合い、親交を深めたという。この話は双葉山著『相撲求道録』(現在は『横綱の品格』と改題し、小社より発行)の中に出ている。

双葉山は連勝が止まったことで、生涯の心の友を得たのだ。白鵬は、連勝ストップのあと、どんな友達を得たのだろうか。気になる。

月刊『相撲』平成23年2月号掲載

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