米プロフットボール・NFLは第10週を終えた。前半で好調だったチームが勢いを落とす中で、実力派のチームが少しづつ、順位を上げている。NFCでは1敗のカーディナルスが、キャム・ニュートンを復活入団させたパンサーズに敗れ2敗に。王者バッカニアーズは、ワシントンの力のフットボールに屈して3敗となった。一方AFCでは、タイタンズが2敗を堅持。チーフスは久しぶりにオフェンスが高得点で快勝しAFC西地区の首位に。ペイトリオッツも4連勝で、地区首位のビルズを追走している。
現地11月14日、日曜日の試合を振り返る。(写真はすべてGetty Images)
マホームズ5TD、ハイパーオフェンスさく裂
◇チーフス41-レイダース14◆
オフェンスの不調に苦しんでいたチーフスとQBパトリック・マホームズが久々のハイパーオフェンスさく裂で快勝した。マホームズのパス406ヤード、5タッチダウン(TD)はいずれも今季自己ベスト。特にRBダレルウィリアムスを、レシーバーとして巧みに起用した。
第4Qには、マホームズがレイダースディフェンスのパスラッシュをかわしてスクランブルすると、LOSギリギリでジャンピングスロー。ゴールライン付近でRBウィリアムズがキャッチしTDとした。このプレーにつながったのは、3プレー前のPトミー・タウンゼンドによる鮮やかな16ヤードフェイクパントパス。チーフスファンにとって久々にに留飲の下がるゲームとなった。マホームズが2週連続でインターセプト(INT)が無かったのも今季初。
チーフスTEトラビス・ケルシーはパス8キャッチ119ヤード。NFL.comによると、2018年以降の対レイダース戦7試合で781ヤードを記録している。
先週に続いて連敗のレイダースは、16得点以下が今季4試合目で、0勝4敗。QBデレク・カーはパス261ヤード2TD1INTと健闘したが、チームランをわずか50ヤードに抑え込まれた。タイムオブポゼッションもチーフスに10分以上の差を付けられ、ディフェンスが516ヤードを喪失する大敗となった。

◇カウボーイズ43-ファルコンズ3
カウボーイズが大勝で2敗(7勝)をキープした。WRマイケル・ギャラップの復帰や、ファルコンズの弱いパスラッシュなどもあって、前半で36-3とリードして、大勢を決めてしまった。カウボーイズは、QBダック・プレスコットがパス291ヤード2TDと安定した成績を残した。
数字以上にプレスコットの価値を高めているのがブリッツへの対応力だ。WRのC.D.ラムに決めた2本のTDは、いずれもファルコンズがブリッツして6人でラッシュしてきた場面で決めた。特に第2Q残り1分のTDは、ブリッツが両サイドから漏れてきたが、プレスコットは、エンドゾーンでラムがフリーになるのを待ってしっかり投げ込んだ。
プレスコットが今季決めたTDパスの中では16本がブリッツされながら決めたもの。これはNFL最多という。
電撃復帰のニュートン、いきなり2TD◇パンサーズ34-カーディナルス10◆
QBキャム・ニュートンの電撃的な復帰で、話題を呼んだパンサーズが、8勝1敗でNFLトップだったカーディナルスに圧勝した。パンサーズ勝利の原動力は、負傷から復帰したRBクリスチャン・マキャフリー。ラン85ヤード、パスレシーブ66ヤードでカーディナルスデイフェンスをほんろうした。さらに、マキャフリーの負傷中に奮闘したRBチューバー・ハバード、アミール・アブドラ―も良い働きでチームを助けた。NFLのネクストジェネレーションスタッツによると、マキャフリーは、7人以上の守備選手がボックス(OLの両タックルの間のエリア)にいるディフェンスに対して、ラン12回で85ヤードという力強さを見せた。
復帰のニュートンは、第1Qにランとパスで2本のTDと、9月以降にフットボールをプレーしていなかったとは思えないパフォーマンスを見せた。
この試合は、主に控えのP.J.ウォーカーがQBを務めたが、パンサーズのマット・ルールヘッドコーチ(HC)は、次の練習からニュートンを中心にするという意向を示している。
カーディナルスは、エースQBのカイラー・マレイが負傷で、ベテランのコルト・マッコイが先週に引き続いて先発したが、パス107ヤード、1INTで2QBサックといいところが無かった。
◇ペイトリオッツ45-ブラウンズ7◆
ブラウンズは、ゲームオープニングドライブでエンドゾーンまで迫ると、4thダウンギャンブルを選択。QBベイカー・メイフィールドがWRオースティン・フーパーにTDパスを決めて先制した。しかし、これがこの試合の最後の得点だった。メイフィールドはヒットを受けて負傷、試合から退いた。
ペイトリオッツは、ルーキーQBマック・ジョーンズの負荷を減らすためランを多用。ルーキーRBラモンドレ・スティーブンソンが、力強いインサイドのランでキャリア初の100ヤードを記録。そして、ここまでNFL最多サックのブラウンズDEマイルス・ギャレットをダブルチームブロックなどで封じ込めた。
パス成功率が8割を超え、198ヤード3TDというQBジョーンズに加え、ブラウンズでもプレーした控えQBのブライアン・ホイヤーがパス3/3、85ヤード1TDと活躍した。
ペイトリオッツは4連勝で、6勝4敗で地区首位のバッファローと勝利数で並んだ。トム・ブレイディがいないことを嘆くファンは、シーズンが深まるごとに減っているに違いない。
ロン・リベラHC、入魂の10分26秒ドライブ◇ワシントン29-バッカニアーズ19◆
昨シーズンのNFCディビジョナルプレーオフの再戦は、ワシントンがリベンジを果たした。
ワシントンは、最初の4回のオフェンスシリーズで得点を重ね、10点のリードで後半へ。第3Qに両チーム1TDずつを加えて、第4Qを迎えた。
バッカニアーズが、ファンブルリカバーから3プレー目に、QBトム・ブレイディがWRマイク・エバンスへ40ヤードTDパスが決めて、4点差に迫った後からがこの日の一番の見せ場となった。ワシントンは、残り10分55秒から始まったオフェンスで、RBアントニオ・ギブソンのランを中心に、QBテイラー・ハイニケのパスを交ぜながら、徹底的に時間を潰してドライブした。19プレー目となった4thダウンギャンブルで、ギブソンがエンドゾーンに走り込んだ時、残り時間は29秒になっていた。 10点差として勝利を確信したワシントンはエクストラポイントであえてニーダウンした。
10分26秒は今季のNFL最長オフェンスシリーズ。ロン・リベラHCらしい、力のフットボール、力のドライブだった。
バッカニアーズは手痛い連敗。ブレイディは後半2TDパスを決めたが、第1Qに2度のインターセプトで、ワシントンが主導権を握るきっかけを与えた。

◇タイタンズ23-セインツ21◆
タイタンズがセインツの終盤の追い上げをかわして6連勝で8勝2敗に。AFCトップの座を堅持した。
「キング」デリック・ヘンリーを欠いたタイタンズオフェンスは力強さを失い、トータル264ヤード、ランが66ヤード、ファーストダウン更新17回と、すべてセインツを下回った。タイタンズで6ヤード以上ゲインしたRBはおらず、ドンタ・フォアマン(1回平均2.7ヤード)、エイドリアン・ピーターソン(同2.6ヤード)、ジェレミー・マクニコルズ(同1.8ヤード)と、セインツのディフェンスに苦しめられた。
それでも勝ち切ったのは相手のミスに付け込んで得点を奪ったから。後半開始時、セインツのキックオフリターンで、スペシャルチーマーのディラン・コールがリターナーに見事なハードヒットでファンブルさせ、タイタンズがリカバー。このチャンスからオフェンスを繋ぎ、QBライアン・タネヒルがTDパスを決めた。
ディフェンスではDTジェフリー・シモンズの大暴れが続いている。2019年の1巡入団、3年目のシモンズは、この日も2QBサック、2タックルフォーロス、3QBプレッシャーを記録した。サックはこの2試合で5回。この勢いが続けばプロボウル選出は確実だろう。
タイタンズは、この勝利で、前シーズンにプレーオフに進出した5チームとの対戦成績を5勝0敗とした。これは2003年のイーグルス以来、NFL史上2回目という。
◇ビルズ45-ジェッツ17◆
◇コルツ23-ジャガーズ17◆
◇パッカーズ17-シーホークス0◆
◇バイキングス27-チャージャーズ20◆
◇ライオンズ16-スティーラーズ16◆
◇イーグルス30-ブロンコス13◆