米プロフットボール・NFLは第13週を終えた。今週のハイライトは、何と言っても、ライオンズが今季初勝利を、それも試合最後のプレーの逆転TDで決めたことだ。その他には、ジャスティン・ハーバート対ジョー・バロウという2年目のエースQB対決になったゲーム、T.J.ワットの無敵の活躍で、レイブンスに勝利したスティーラーズ。ディフェンスの奮闘で連勝を続けるチーフス、QBブレイディのワンマンショーなど、など、現地12月2日、5日のゲームを振り返った。(写真はすべて Getty Images)
セインツ、QBヒルが4INTくらう
12月2日(サーズデイナイトゲーム)
◇カウボーイズ27 vs セインツ17◆
カウボーイズのルーキーLBマイカー・パーソンズが輝いた。1QBサック5タックル。サックは5試合連続で今季10個目。QBにプレッシャーをかけるだけでなく、レシーバーのカバー、ランサポートもこなす。パーソンズの活躍もあり、カウボーイズはディフェンスの勝利を挙げた。
得点力不足に悩んでいたセインツは、テイサム・ヒルをスターターQBに起用。OL以外の全てでプレーしてきた万能ウェポンヒルだったが、正QB登用試験は不合格となった形だ。第4Qに3連続インターセプト、うち1本は、リターンTDまで許し、試合を決めてしまった。ただしランでは11回101ヤードを記録するなど、能力は健在。パスである程度試合をコントロールできるQBがいれば、戦力としては単なる控え以上のものがあるのは間違いない。
対するカウボーイズのQBダック・プレスコットはパス238ヤード、1TD、1INTと表面上は平凡なスタッツだが、今季17本目の対ブリッツTDパスで、これはNFLでは1位だという。
ゴフ、劇的な勝利のTDパス12月05日(サンデーゲーム)
◇ライオンズ29 vs バイキングス27◆
ライオンズがついに今季初勝利を挙げたが、その過程は苦難に満ちていた。
第2Qに20点を積み上げ、14点をリードして折り返したライオンズ。今日こそは勝つという流れだったがだったが、バイキングスが後半にロングドライブを重ねて追い上げた。これに煽られたのか、ライオンズの2点リードの第4Q残り4分余り、自陣28ヤードの4thダウン1で、ライオンズサイドラインがまさかのギャンブルに出た。これが完全に裏目に出て、QBジャレッド・ゴフがサックされファンブル、バイキングスにリカバーされてしまう。
バイキングスは、ランで時間を使い、ライオンズのタイムアウトを失わせたうえで、QBカーク・カズンズがWRジャスティン・ジェファーソンに逆転TDパスを決めた。残り時間は1分50秒だった。この段階で、この日の勝利をあきらめたファンも少なくは無かったろう。
しかしこの日のゴフは違った。1分44秒、13プレーすべてパスで、64ヤードを進んだ。2度、インターセプトされかけたし、ディレイオブゲームの反則もあった。だが、ゴール前11ヤードにたどり着いた。勝利には絶対にTDが必要な4点差。4th&2だが残り4秒、試合のラストプレー。ゴフはルーキーWRのアモンラー・セントブラウンにTDパスを決めた。劇的な逆転劇、最後は、シンプルなカムバックパターンだった。
ゴフは全力疾走して、ヘッドコーチ(HC)のダン・キャンベルに抱きついた。ライオンズのサイドラインは、優勝したかのような騒ぎだった。
WRセントブラウンは、この日12回ターゲットとなり10回86ヤードのパスレシーブで、キャリアハイの成績だった。
バイキングスに加入以来、ライオンズ戦7勝0敗だったQBカズンズは、初黒星を喫した。バイキングスは7敗となりプレーオフ進出が厳しくなってきた。
神様、仏様、ワット様◇スティーラーズ20 vs レイブンズ19◆
今季負傷で2試合を欠場しているスティーラーズのOLB、T.J.ワットは、健康な限り、絶対的な存在だ。12回のQBプレッシャー(今季NFL最高)、6回のQBヒット、そして3.5サックを記録した。シーズン開始直前にNFL最高年俸の守備選手となった、その契約に見合う活躍を見せた。ワットは、今季ここまで出場10試合で16サックという驚異的な数字を残している。ワットに率いられたスティーラーズのディフェンス陣は、レイブンズのQBラマー・ジャクソンに7サック、34ヤードのダメージを与えた。
この試合の前に、ESPNなど米のメディアで、今季限りで現役を引退すると報じられたQBベン・ロスリスバーガー。前週のベンガルズ戦では限界を感じさせるパフォーマンスだったが、この日は違った。第4Qに2本のTDパスとFGで17点を奪って、逆転勝ちした。
忘れてはならないのが、スティーラーズのルーキーRBナジ-・ハリスの活躍だ。ハリスは21キャリーで71ヤードを記録したが、これはNFL1位のレイブンスランディフェンスが、最も走られたRBということになった。ハリスはパスキャッチでも5回36ヤードと活躍した。NFL.comによると、今季ハリスがランで20回以上走った6試合は5勝1分で、20回以下の6試合は1勝5敗だという。
レイブンスは、残り試合時間16秒で、QBジャクソンがTDパスを決めて1点差としたが、エクストラポイントで2ポイントコンバージョンを選び、失敗して敗れた。この判断が波紋を呼んでいる。ジョン・ハーボウHCは、DB陣の負傷者のため延長戦は戦えなかったと、2ポイント選択の理由を説明した。CBのマーロン・ハンフリーがシーズンアウトの可能性があるという。
この2ポイントコンバージョンの場面でも、QBジャクソンにプレッシャーをかけたのはスティーラーズOLBワットだった。
チャージャーズ、パスラッシュの勝利◇チャージャーズ41 vs ベンガルズ22◆
チャージャーズは、オフェンスがスタートダッシュに成功し、第2Q4分過ぎまでに、QBジャスティン・ハーバートが3TDパスを決めて、24点をリードした。
QBジョー・バロウのキャッチアップに頼らざるを得ない形となったベンガルズを、チャージャーズのパスラッシュが追い込んだ。DEジョーイ・ボーサが脳震盪で途中退場したにもかかわらず、QBバロウに対してドロップバックの37%でプレッシャーをかけ、QBヒット11回、QBサック6回を記録した。
それでもベンガルズは、第3Qに22-24と2点差まで差を詰めたが、RBジョー・ミクソンがファンブル、CBテボーン・キャンベルが61ヤードのリターンTDを決めて突き放された。2ndダウン2ヤードで、レシーバー1人、OLを8人というラン重視のプレーコールだったが、ハンドオフされたミクソンが、割って入ってきたチャージャーズDTクリスチャン・コビントンにボールを弾き出されていた。このプレーで変わった流れをチャージャーズが失うことなく押し切った。
ベンガルズは敗れただけでなく、QBバロウが利き腕である右手の小指を脱臼した。ただし、負傷は試合の序盤で起きており、次週以降も試合には出られる見込みだという。
マホームズのインターセプトに情状酌量も◇チーフス22 vs ブロンコス9◆
チーフスが、シーズン中盤以降好調なディフェンスの活躍で勝利した。ダニエル・ソレンセンが第4Qに、インターセプトリターンTD。また、Kハリソン・バトカーが最長56ヤードの3本のFGを決めた。QBパトリック・マホームズは、パス成功率51.7%、TDパスは無く、1インターセプト。今季12本目のインターセプトは自己ワーストタイだが、マホームズばかりが悪いわけではない。米の分析サイト、プロフットボールフォーカスによると、マホームズの今季のインターセプトのうち5本がレシーバーが捕れず弾いたボールをディフェンスが奪ったもの。これはNFLのQBの中では最多だという。この試合のインターセプトも、WRタイリーク・ヒルが弾いたボールだった。
羊たちはジャガーで元気回復◇ラムズ37 vs ジャガーズ7◆
11月は1度も勝てず3連敗したラムズが12月は最高のスタートを切った。オフェンスが418ヤード、24回ファーストダウンを更新し、37点を奪った。中心となったのはRBソニー・ミッシェル。24キャリーで121ヤードをゲインした。ラムズのチームラン成績は、128ヤードとなったが、3連敗中はすべて二桁台だった。
QBマシュー・スタフォードは、前半はパス13/22、139ヤードでTDは無かったが、後半は13/16、156ヤードで3TDと調子を上げた。
ただスタフォードにとっては次のスタッツの方が意味がありそうだ。スタフォードはブリッツが入った際のパスは11/16、184ヤード、2TDだった。またインターセプトが無かったのは10月最終週以来。スタフォードがインターセプトしない試合ではラムズは5勝0敗となった。
何点差で勝とうと勝利は勝利◇ワシントン17 vs レイダース15◆
僅差で勝って大差で負ける。それが今季のワシントンだ。総得点は246で総失点が297。6勝のうち5勝が5点差未満。2週続けて17-15で勝ったこの試合も、ワシントンの術中にレイダースがはまった形となった。オフェンスのリズムを作っているのがQBテイラー・ハイニケだ。4試合連続でパス成功率70%以上、この日も10ヤード以下のパスは18/20で108ヤード1TD。サードダウンコンバージョン7/13の原動力となった。
レイダースは11月以降1勝4敗で、再び6勝6敗の勝率5割となった。AFCは地区首位の4チームを除いて5、6敗が8チームという混戦となっている。
イルカ復活はディフェンスの復調◇ドルフィンズ20 vs ジャイアンツ9◆
ドルフィンズは、1勝7敗のあと、5連勝で6勝7敗に。5連勝中の1試合平均失点は11点と、ディフェンス建て直しに成功した。開幕8試合の1試合平均失点は29点だった。またスターターQBとして、トゥア・タゴバイロアが本領を発揮してきたのも大きい。タゴバイロアは、直近4試合でパス成功率78%、5TDで1INTと安定した成績を残している。
44歳でパス3部門トップのQBブレイデイ◇バッカニアーズ30 vs ファルコンズ17◆
現在のNFLで、40歳以上でプレーしているのはバッカニアーズのQBトム・ブレイディただ一人。そのブレイディがこの日もワンマンショーだった。パス368ヤードで4TD、1INT。1試合300ヤード、4TD以上は通算28試合目(NFL最多はドリュー・ブリーズの32試合)。そして、ファルコンズ戦は通算10勝0敗(スーパーボウルも含む)となった。
ブレイディは、ここまで12試合で、パス3771ヤード、1試合平均314.3ヤード、34TDパス。すべてNFLトップの成績だ。世界で最も激しいコンタクトスポーツのリーグにおいて、44歳4カ月で、この成績を残しているのは、「衰えを見せない」どころではなく、人智を超えている。「不老長寿」を研究する、先端医療ベンチャー企業が解析が乗り出してもおかしくないのではないだろうか。
◇コルツ31 vs テキサンズ0◆
コルツが完勝。エースRBジョナサン・テイラーを中心にラン238ヤードで、テキサンズディフェンスを蹂躙した。ラン143ヤード2TDのテイラーは、13試合で1348ヤード16TD。テイラーが100ヤード以上走った7ゲームと、今季コルツの7勝は完全に一致している。
◇イーグルス33 vs ジェッツ18◆
イーグルスが、対ジェッツ戦の不敗連勝記録を12に伸ばした。
代役で先発したイーグルスQBガードナー・ミンシュウがパス20/25、242ヤード2TDと、ほぼ完璧なパフォーマンスを見せた。ただし、今のイーグルスを支えているのは強力なランオフェンスだ。24キャリー、120ヤードのRBマイルス・サンダースを中心に、チームランは185ヤード。6試合連続でラン175ヤード以上を記録した。
◇カーディナルス33 vs ベアーズ22◆
カーディナルスが、両カンファレンスを通じて10勝1番乗り。ロードでは今季負けなしの7連勝となった。QBカイラー・マレイはパスとランで2TDずつを記録した。マレイは、NFL史上4番目の若さでパス通算10000ヤード超えを果たしたが、前の3人はドリュー・ブレッドソー、ジェイミース・ウィンストン、ダン・マリーノだという。
◇シーホークス30 vs 49ERS 23◆
49ERSがプレーオフを狙う上で痛い1敗。泥沼の連敗中だったシーホークスだが、QBラッセル・ウィルソンは、これで49ERS戦は通算17勝4敗と相性がいい。