close

2021-12-12

【NFL】1試合パス3回で勝ったチーム 選手たちは、なにをどのように感じていたのか

◇ペイトリオッツ vs ビルズ◆RBにハンドオフするペイトリオッツQBジョーンズ=photo by Getty Images

全ての画像を見る
いよいよ佳境となり、毎週、熱戦が続く米プロフットボール・NFL。現地12月6日(日本時間7日)に行われた第13週のマンデーナイトゲームでは、現代のアメリカンフットボールではあり得ないような展開となった。AFC東地区の首位争い、ニューイングランド・ペイトリオッツ(8勝4敗)とバッファロー・ビルズ(7勝4敗)を振り返った。

ニューイングランド・ペイトリオッツ○14-10●バッファロー・ビルズ
(2021年12月6日、ハイマークスタジアム<旧ラルフ・ウィルソンスタジアム>)

 ペイトリオッツのQBマック・ジョーンズは、1967年以降で、先発して7連勝した4人目のルーキーQBとなった。他の3人は、ベン・ロスリスバーガー、カイル・オートン、ダック・プレスコットだ。

 ただ、この日のジョーンズの勝利への貢献は、それ以前の3人のQBとは全く違ったものだった。

過去50年で2番目にパスが少ない試合

 この試合、ジョーンズが投げたパス=ペイトリオッツのパスはわずか3回。これは過去50年のNFLでは、1974年第3週にビルズが対ニューヨーク・ジェッツ戦で記録したパス2回以来の少ない回数だった。

 1974年のビルズには、前シーズンに史上初めてシーズン2000ヤードを超えたO.J.シンプソンという不世出の天才RBがいた。ビルズはシンプソンと、もう一人のRBジム・ブラクストンのランでジェッツを圧倒したのだった。

 今回ペイトリオッツが、こういう極端なオフェンスを展開した最大の理由は天候だった。バッファローはカナダとの国境に近い町で、緯度的には北海道の釧路と変わらない。そしてこの日は、気温がほぼ摂氏1度前後、風速18mの風が吹き荒れ、試合前は吹雪いていた。

◇ペイトリオッツ vs ビルズ◆悪天候のハイマークスタジアム<旧ラルフ・ウィルソンスタジアム>=photo by Getty Images

 ビルズは地元だけあって、プレー選択をあまり変更しなかった。パス30回に対しランは25回。アレンのパスは15/30、145ヤード。インターセプトは無かったし、決して不出来ではなかった。10回のオフェンスシリーズでレッドゾーン侵入が4回と、得点機はあった。特に第3Q終盤以降は3回続けてレッドゾーンまで進んだ。ただ、その3回でFG1回の3点しか奪えなかった。

 試合最終盤のゴール前ディフェンス。4点を追うビルズは、3rd&9でペナルティを犯し、3rd&14となった。ゴールまでは18ヤード。

 3rd&14でQBアレンは、ペイトリオッツディフェンスのラッシュに囲まれて、ポケットから出て右に流れた。そしてエンドゾーンのTEドーソン・ノックスを狙ってパスを投げたが失敗した。このプレーでは、右外にいたエースWRステフォン・ディグスがシャロ―アクロスを走ってエンドゾーン前でフリーになっていたが、アレンの目には入らなかったようだ。

 4th&18、アレンはエンドゾーンに左外から走り込んだWRガブリエル・デービスを狙ったが、パスは手前でペイトリオッツのDBマイルス・ブライアントに叩かれて失敗に終わった。ブライアントはビルズのWRコール・ビーズリーをマンツーマンカバーしていたが、途中でアレンの動きを見てビーズリーを放し、パスへ反応していた。

 2人のレシーバーを見落としたアレンは、2回ともエンドゾーンを狙ってパスを投げた。4thダウンのパスは決め打ちだったのかもしれないが、3rdダウンは、TDを狙う必要は無かった。2回のプレーでファーストダウンを奪えばよい。まだ2ミニッツの前だったので、4th&ショートにしてしまえば、自身のランもあるアレンの能力が生きたはずだった。

◇ペイトリオッツ vs ビルズ◆ビルズのQBアレン=photo by Getty Images

「何回走ったか、何回投げたか、そんなことは問題じゃない」
 
 ペイトリオッツは、ダミアン・ハリス、ラモンドレ・スティーブンソン、ブランドン・ボールデンの3人のRBを中心に222ヤードを稼いだ。ハリスは左のスィーププレーで64ヤードを走って先制TDを決めた。ハリスは今季ランで9TD。2016年に、RBルガレット・ブラウントが16TDを挙げて以来のランTD数となった。

 パスを3回しか投げなかったQBジョーンズだが、第3Q10分過ぎには、3rd&5でQBスニーク。そして4th&1のギャンブルでもスニークした。それだけ、オフェンスコーディネーター、ジョシュ・マクダニエルズのプレーコールは徹底していた。

 QBジョーンズは「僕はただ勝ちたいだけだった。何回走ったか、何回投げたか、そんなことは問題じゃない。勝てばみんながハッピーになる」と話した。
 「我々のオフェンスが、ラン・ザ・ボールに徹するということがわかっていて、毎プレー、鼻先から突っ込んでいって、それを実現したOLは本当に信じられない。彼らには脱帽した。こんなフットボールに関わったことはない。このような試合は今後もないと思う」とジョーンズはOLを賞賛した。

◇ペイトリオッツ vs ビルズ◆ペイトリオッツQBジョーンズ=photo by Getty Images

 ジョーンズにボールをスナップし続けたCのデビッド・アンドリュースは「僕は6歳からフットボールをプレーしているけれど、3回しかパスを投げない試合など聞いたこともない。6歳の時のチームだってもっとパスを投げていたよ」と話した。

 そしてベリチックHCは「勝利を得るために必要だと感じた方法でプレーしただけだ。最終的には、十分な得点を得ることができた」とそっけなかった。

◇ペイトリオッツ vs ビルズ◆「勝利を得るために必要だと感じた方法でプレーしただけ」と試合後に語ったベリチックHC=photo by Getty Images

 ペイトリオッツはディフェンスでは、OLBマシュー・ジュドンが今季12.5個目となる1サック。これはビル・ベリチックHCになって以降の22年で、チャンドラー・ジョーンズ、マイク・ブレイベルに並ぶシーズン最多記録となった。

NFLの最少パス回数はゼロ回

米Yahooスポーツによると、NFLの最少パス回数は0回で、1933年から1950年にかけて6試合があったという。また、カレッジフットボールでは、パス0回は時々起きていて、最近では今季第13週の11月26日、空軍士官学校vsネバダ大ラスベガス校(UNLV)の試合で生じた。空軍士官学校がパス0回、ラン69回511ヤードでUNLVに48-14で圧勝している。

【得点経過】

ペイトリオッツ 第1Q 残り5:18 RBダミアン・ハリス64ヤードTDラン(2ポイントCV、ラン成功)
3プレー69ヤード1:37 [8-0]

ビルズ 第1Q 残り2:02 G.Davis 14ヤードTDパス←QBジヨシュ・アレン(キック成功)
1プレー14ヤード0:05 [8-7]

ペイトリオッツ 第2Q 残り11:28 Kニック・フォーク41ヤードFG
9プレー52ヤード5:34 [11-7]

ビルズ 第3Q 残り6:35 Kタイラー・バス 35ヤードFG
8プレー46ヤード2:40 [11-10]

ペイトリオッツ 第4Q 残り13:01 Kフォーク 34ヤードFG
14プレー59ヤード8:34 [14-10]

【小座野容斉】

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事