陸マガの箱根駅伝2022カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」は出場20校の注目選手を紹介。過去2大会では、インパクトの強い走りで創価大学の新たな歴史を切り拓く原動力となった嶋津雄大(4年)。今季は日本人エースとしての役割を意識し、シーズンを過ごしてきた。3度目の箱根路では、何を見せてくれるのか。
日本人エースとして前々回は10区区間新記録での区間賞で初のシード権獲得、前回は4区2位の走りでチームを首位に押し上げ、往路優勝に貢献。嶋津雄大は、過去2回の箱根駅伝で勝負を決める快走を見せてきた。
4年生として今季を迎えるとき、榎木和貴監督から「日本人エースを意識しろ」と言われ、その言葉を胸に刻み、シーズンを送ってきた。そして、夏場には往路の前半区間を担うと見られていた葛西潤(3年)の故障が長引いていたこともあり、「2区も走れるように準備しておいてくれ」とも言われた。
「やっぱり花の2区を走ってみたいという思いはありました」という嶋津だが、前回の2区はエースのフィリップ・ムルワ(3年)で、区間6位ながら2位で中継する堅実な走りを見せた。それでもムルワは驚異的な区間新記録をたたき出した東京国際大のイェゴン・ヴィンセント(3年)に大差をつけられた悔しさから、オフの日にも寮の前で坂道ダッシュを繰り返していた。その姿を見ていた嶋津は、自分が2区を走るには、どうすればムルワが納得してくれるかを考えたとき、10000mで27分台を出すしかないと思ったという。
日本人エースとしては、昨年福田悠一(前回1区3位)がマークした28分19秒26の創価大日本人記録の更新を目標に掲げてきた。それまでの自己記録29分01秒84を4月に28分34秒40にした後は28分台を安定して出せる力をつけ、秋には目標突破と考えた。
「米満怜さん(前々回1区区間賞/現・コニカミノルタ)も福田さんも、(11月末の)八王子ロングディスタンスで創価大日本人記録を出したから、僕も八王子で記録を狙い、あわよくば27分台と考えました。でも今年から八王子の参加標準記録が上がって出られなくなったので、その代わりに出場する早大記録会(11月20日)では単独走でも28分20秒は切るという目標にしました」
実際、嶋津は箱根前唯一の10000m出場の機会で目標を達成するため「ひとりでも行く」と覚悟を決め、28分14秒23と大幅な自己新、そして創価大日本人記録を更新して、1位になった。
「レース序盤に1周(400m)70秒台に落ちたときがありましたが、『1秒でも遅れたらだめだ』と思って前に出て、集団に10mほどの差を付けました。途中で実業団の選手が前に出てくれましたが、トータルで6000mくらいは自分が先頭で押す形で走れたので、チームで目標にしている『強さ』もついてきたなと実感できました。それに榎木監督からはラスト1000mを2分45秒まで上げないと28分半は切れないと言われていました。日本人1位を狙った(9月の)日本インカレではそれを果たしたが(最終結果は6位、日本人2番手)、早大記録会ではそれより速いペースでいって最後も2分43秒に上げられたので、パーフェクトに近いレースができました」
初出場となった出雲駅伝ではアンカーを務め、暑いコンディションのなか区間9位
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