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2021-12-26

【箱根駅伝の一番星】苦難を乗り越えた次代のエース明治大学・児玉真輝が「花の2区」に意欲

堂々と2区出走を宣言した児玉。どの区間で起用されても力を発揮する準備を進めている(写真/馬場高志)

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陸マガの箱根駅伝2022カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」は出場20校の注目選手を紹介。予選会を圧倒的な強さで1位通過し、全日本大学駅伝でもシード圏内の7位でフィニッシュした明大が箱根駅伝で5位以内を目指す。今季、全日本では2区2位、予選会では17位、チーム3番手でフィニッシュした児玉真輝(2年)が、「花の2区」に意欲を燃やす。

「2区を走ります!」

『箱根駅伝2022完全ガイド』のSNS用動画を撮影していた時のことだ。
「2区を走ります!」
 明大の2年生、児玉真輝はカメラに向かって高らかに宣言した。

 2年連続2区を走り、もちろん今回も2区を希望している加藤大誠(3年)、そして、山本佑樹駅伝監督が2区候補筆頭に挙げる主将の鈴木聖人(4年)が、隣にいるにもかかわらず、だ。
 なんとも大胆な2年生。もっとも、物怖じしないこの性格が児玉の強さの秘訣なのかもしれない。

 余談だが、児玉の実家は2区のコース上にあるという(加藤談)。もちろん、その逆の9区もしかり。箱根駅伝は、今回もコロナ禍での開催となり、沿道での観戦自粛が呼び掛けられているだけに、児玉が2区(または9区)を走ることになれば、自宅にいる家族に直でその勇姿を見せることができるというわけだ。

 前回の箱根駅伝は、大事な1区を任された。しかし、12月上旬に右足の足底を痛めた影響もあって、トップには1分以上離され、区間16位と不本意な結果に終わった。
 優勝候補にも挙がっていたチームは、その後なかなか流れに乗れず、挽回することも叶わず、結局総合11位に終わった。

 その雪辱を期した2年目のシーズン。この1年間の目標には「箱根の2区を走ること」と「全日本大学駅伝で区間賞を獲ること」を掲げた。

 しかし、順調には進まない。5月の関東インカレの直前に肺気胸を患ってしまう。
 手術から1カ月間は激しい運動を控えなければならず、6月末までは走るさえもできなかった。7月に入って、ようやくジョギングを開始。本格的な練習ができるようになったのは7月が終わる頃だった。
「なんとか駅伝には間に合うだろう、と思いましたが、焦ってケガをしたら、絶対に間に合わなくなるので、目標を駅伝を走れるように頑張ろうと下方修正しました」
 前半戦はほとんど走ることができなかったのだから、児玉が目標を下げるのも当然のこととも言えた。

 ところが、思いのほか、調子が戻るのは早かった。もちろん、1年目にしっかりと基礎づくりを行ってきた成果でもあるが、戦線に復帰してからは好調だ。
 復帰初戦の箱根駅伝予選会は、チーム内3位(17位)。好走にも「チームトップを狙っていたので、悔しかったです」と、まだまだ納得のいく走りではなかった。

 2週間後の全日本大学駅伝は2区に起用された。鈴木が万全な状態ではなく、主力の櫛田佳希(3年)もケガで欠場。前半で出遅れないための2区抜擢だった。児玉は、その期待に見事に応える。
 オリンピアンの三浦龍司(順大2年)には届かなかったが、連戦の疲れをものともせず、区間2位と好走。今度はチームを勢いづけることに成功した。連戦をこなすタフさも見せた。
「一度は下方修正しましたが、意外に力が戻ってきているので、(箱根の)2区を狙ってもいいのかなと思いました」
 児玉にとって、現状に手応えを感じたレースになった。

 ちなみに、大学に入ってからここまで出場したすべての駅伝で三浦と同じ区間を走っている。
「そろそろ勝ちたいなと思っていたんですけど、ラスト、さすがのロングスパートに付いていくことができなかった。箱根で同じ区間になったらリベンジしたいなと思っています」
 高校時代に度々競ってきた三浦には、ライバル心を燃やす。

  全日本の後も順調だ。11月24日のMARCH対抗戦には授業があって出られなかったため、児玉は前日の10000m記録挑戦会に出場。
「タイムを狙うというよりも、28分30秒から40秒でしっかりまとめるというのを目標に走りました」
 この言葉の通り、28分32秒71で走り切った。
 だいぶ余裕があるようにも見えたが、ライバル校の主力にも競り勝ち、この競技会で全体トップのタイムをマーク。記録会ながら、今季チームがこだわってきた“強さ”を感じさせるレースを見せた。エース区間の2区で勝負できる強さは備わっていると見ていい。

 希望は2区だが、「どの区間でも行ける準備はできている」と頼もしい。いよいよ次代の紫紺のエースが本領を発揮するときが来る。



こだま・まさき◎2002年1月3日、神奈川県生まれ。高校時代には、全国高校駅伝で2年連続エース区間の1区で出走した。昨年は、全日本で1区を区間新の5位で走り、3位に貢献したが、前回の箱根は1区16位。今季は、予選会でチーム3番手の17位、全日本では2区2位。自己ベストは、5000m13分53秒95(2021年)、10000m28分22秒27(20年)、ハーフ1時間02分58秒(21年)。

文/和田悟志 写真/馬場高志、中野英聡

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