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2021-12-30

日本のラジオ体操をカナダ・ミルトンで浸透させたタイガー・ジェット・シンが名誉市民に【週刊プロレス】

タイガー・ジェット・シン

 来日経験が豊富なタイガー・ジェット・シンは嘆いていた。「最近は日本も、アメリカの悪いところばかり取り入れる。カナダもそうだ。アメリカの影響でいろいろと問題が起っている」。その1つが、ことあるごとに子供たちに説いている「アンチドラッグ、アンチアルコール」。最近はこれに「子供の肥満」も問題視されているという。シンはそんな問題にも取り組み、そこで考案したのが「タイガー・フィット」と呼ばれる運動メニューである。「タイガー・フィット」のアイデアは日本にあった。
※週刊プロレス2010年5月19日号(No.1524)掲載

「子供たちにとって、何よりの仕事は勉強と運動だ。運動することによって体が鍛えられる。少し体を動かすだけど、もっと走り回りたくなるだろう。そのきっかけとなるのがタイガー・フィットだ」と語るが、意外にもそのアイデアは日本にあったという。

「日本に初めて行った時にこういう光景を見た。朝早く観光バスが何台も停まっていたんだけど、バスガイドが降りてきて、みんなで体操を始めたのだ。ほかに列車で移動している時にも、似たシーンを見た。乗客がプラットフォームに降りてきて、みんなで体操をはじめたんだ。素晴らしいことだと思った。決して激しい体操ではない。タイガー・フィットも簡単な運動。あの時に日本で見た光景をカナダの子供たちのために伝えたい。ああいう習慣はもうなくなってしまったのか? あの頃の日本人は、そんなに太った人はいなかったと覚えている。肥満が増えた要因はいろいろあるだろうけど、運動しなくなったことが大きな原因といえる。あの習慣を取り戻したら、日本ももっと健康的な国になると思う」

 シンが語ったのはおそらくラジオ体操のことだと思われるが、日本の文化が彼なりの解釈でカナダに伝わり、「タイガー・フィット」として浸透する。これを含めた地元での慈善活動が評価され、2007年にはミルトン市役所内のウォーク・オブ・フェームに選出され、名誉市民として表彰された。その際、ゴードン・クランツ市長からは「彼にはミルトンと世界を結ぶ大使の役割を果たしていただきたい」との言葉が贈られている。

橋爪哲也

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