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2021-12-30

【ニューイヤー駅伝展望】前回王者・富士通を軸に「四強」の覇権争いに?

元日決戦は東京五輪代表選手を擁するチーム同士の戦いに(左から服部、相澤、松枝、伊藤)

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1月1日に行われる第66回全日本実業団駅伝(通称、ニューイヤー駅伝/群馬県庁発着・7区間100km)。前回は旭化成の5連覇を阻止した富士通が12年ぶりの優勝を果たした。今大会も戦力は充実し、優勝争いの中心となりそうだが、他チームも簡単には連覇を許さないだろう。戦力的に王座奪還を目指す旭化成、初優勝を狙うHonda。そして前回2位のトヨタ自動車まで含めて、「四強」と見る向きが多い。富士通の再度の栄冠なるか、それとも他チームが待ったをかけるか? 元日から熱い戦いが見られそうだ。

盤石の戦力で連覇を狙う富士通

富士通は、秋の実績で抜きん出ている。11月の東日本実業団駅伝(以下、東日本予選)を制し、11月27日の八王子ロングディスタンス(以下、八王子LD)10000mでは東京五輪5000m代表の松枝博樹が27分42秒73と大幅に自己ベストを更新、さらに故障明けの新人の塩澤稀夕もここで28分27秒20と復調した姿を見せた。12月には「エディオン ディスタンスチャレンジ in 京都2021」でリオ五輪3000mSC代表の塩尻和也が5000mで13分16秒53と今季日本リスト2位、日本歴代7位の好タイムで走っている。東京五輪5000m代表の坂東悠汰も堅調なことに加え、東日本予選6区区間賞の潰滝大記、7区で好走した横手健などが脇を固める。松枝や坂東のスピードランナーが序盤で流れをつくり、最長区間4区(22.4km)の候補はマラソン日本記録保持者の鈴木健吾か、それとも浦野雄平か。前回、この4区で優勝を決定づけた中村匠吾は東京五輪のマラソン後、レースに復帰していないものの、このニューイヤー駅伝に向けて準備を進めている様子だ。戦力的には申し分ない陣容が揃っている。

勢いを感じさせるHonda

東日本予選では競り合いの末2位となったが、四強の中で最も勢いを感じさせるのがHondaだ。東京五輪10000m代表の伊藤達彦は八王子LDで27分30秒69のセカンドベスト。同3000mSC代表の青木涼真は9月に全日本実業団5000mで13分21秒81とオリンピックを機に完全にブレイクした。さらに小山直城は東日本予選の最長区間3区(16.8km)で区間賞を獲得している。スピード区間の担い手としては新人の小袖英人、川瀬翔矢が好調だ。また元マラソン日本記録保持者の設楽悠太、マラソン日本歴代5位の記録を持つ土方英和らも控える。4区に伊藤を据えることになりそうだが、その前後に青木、設楽、土方が配されれば、強力な布陣となる。前回、そして東日本で順位を落としたインターナショナル区間2区にやや不安は残すものの、そこさえ乗り切れば、優勝争いに加わることは間違いなさそうだ。

厚みを増した選手層で王座奪還を狙う旭化成

2年ぶりの王座奪還を狙う旭化成は東京五輪10000m代表で日本記録保持者の相澤晃が八王子LDで五輪後、初レース。オレゴン世界選手権参加標準記録(27分28秒00)を狙いながらも、27分58秒35に終わったが、駅伝の強さは東洋大時代から折り紙付き。元日にはさらに元気な状態を見せてくれそうだ。また2位に3分以上の差をつけ圧勝した九州実業団駅伝(以下、九州予選)で6区区間新&区間賞の鎧坂哲哉、4区区間賞の茂木圭次郎も八王子LDではそれぞれ27分41秒78、27分44秒17(自己新)で走っている。九州予選7区で好走した大六野秀畝は12月5日の福岡国際マラソンから4週間での駅伝となるが、調整がうまくいけば大きな戦力となる。さらに2年前の優勝の立役者、小野知大も今季は好調だ。村山謙太、市田孝ら、駅伝実績のある選手が多く、層が厚い点が強み。後半区間で引き離せる戦力を備える。

高い安定感を誇るトヨタ自動車

トヨタ自動車は2016年大会の優勝以来、常に3位以上に入っており、高いレベルで安定している。東京五輪マラソン代表の服部勇馬は、五輪後初レースとなった八王子LDでは28分22秒86だったが、終始、ゆとりのある走りでレースを展開し、「1カ月後にはさらに調子を上げていける」と自信ありげな表情を見せた。今季のトヨタ自動車は2年目の太田智樹が春に自身初の27分台となる27分56秒49を出しただけでなく、八王子LDでは日本歴代6位(現・7位)の27分33秒13まで伸ばし、一気にエース格へと台頭。また西山和弥も27分48秒26、田中秀幸も27分52秒60の自己ベストで走っている。また故障により、長く戦線を離脱していた2年目のスピードランナー佐藤敏也も今季は復調しており、ニューイヤー駅伝3区区間記録保持者の西山雄介もいる。2位に終わった中部実業団駅伝で臀部を痛めたビダン・カロキの状態が気になるところではあるが、戦力的には優勝を狙える力は十分にある。

前回王者の富士通と、「ストップ・ザ・富士通」を狙う3つのチームを紹介したが、関西実業団駅伝で19年ぶりの大会新記録で制したSGホールディングス、前回大会4位で初入賞を果たした日立物流(東日本予選3位)、初優勝を狙う三菱重工(九州予選2位)なども高い戦力が整っており、優勝戦線にからみそうだ。

多くのオリンピアンが集う新年最初の駅伝は2022年1月1日、午前9時15分にスタートする。

文/加藤康博 写真/中野英聡

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