第10回大阪マラソン・第77回びわ湖毎日マラソン統合大会が2月27日に行われ、7名が2023年秋のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)進出を決めた。
トップ3のフレッシュな顔ぶれ初マラソンの星岳(コニカミノルタ)が大阪マラソンとびわ湖毎日マラソンが統合して初開催されたレースで“初代チャンピオン”の座を射止めた。優勝タイムの2時間07分31秒は初マラソン日本最高記録。2024年パリ五輪代表選考のMGC(23年秋予定)への進出条件、今夏の世界選手権派遣標準記録(2時間07分53秒)をクリアした。
2位はマラソン2回目の山下一貴(三菱重工)で2時間07分42秒、3位は初マラソンの浦野雄平(富士通)で2時間07分52秒だった。
レースは、3人のペースメーカーが1km2分58秒~3分01秒で刻む好ペース。多くの選手がこのペースに乗り、20km通過時点で50人以上が先頭集団を形成していた。動かしたのは、これがマラソン114回目となる川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)だった。ペースメーカーが外れる30kmの直前、下りを利用して集団から飛び出した。
浦野らが追い、やがて吸収。31kmすぎから今度は山下が先頭に立った。徐々に脱落者が出て、35kmからは山下、浦野、星の三つどもえに突入。実業団2年目の山下と浦野が牽引役を譲り合うなか、実業団1年目の星は3番手に待機した。
37kmすぎ、星が前へ。意を決したスパートではなかったが、山下と浦野にはボディブローのようにダメージを与えた。
「35kmあたりから初マラソン日本最高記録が出るかもしれないと思い始めて、余力はありませんでしたが、勝負に勝つ、タイムを出すというところで、あそこで前に出て押し切るのがベストだと思って行きました」と星。“ここで”という見極めが大当たりした。
2位の山下は、初マラソンだった昨年のびわ湖を2時間08分10秒で18位。35~40kmで15分56秒を要した点が課題だった。今回、その5kmで星に差をつけられはしたが、15分13秒でカバー。
「自己ベストを少ししか更新できていませんが、2位でこのタイムだったので、手ごたえとしてはよかったかなと思います」と山下は悲観視していなかった。
2位の山下一貴(三菱重工)は駒大卒で実業団2年目3位の浦野は37kmまではゆとりを感じさせたが、残り5kmで失速。「足が止まったのは38kmから。練習ではなかった止まり方でした。これを経験できたことは大きい。課題にして今後の練習に落とし込んでいければ」と克服すべき課題を見つけていた。
3位の浦野雄平(富士通)中堅・ベテランも活況若手のホープが1~3位に入った一方、31歳の丸山文裕(旭化成)が2時間07分55秒で4位、37歳の岡本直己(中国電力)が2時間08分04秒で5位、同じく37歳の今井正人(トヨタ自動車九州)が2時間08分12秒で6位となり、いずれもMGC進出条件を満たした。
4位の丸山文裕(旭化成)と5位の岡本直己(中国電力)また、2時間08分49秒で9位となった川内も、昨年12月の防府読売(3位、2時間10分11秒)との2レース平均が2時間10分00秒以内となり、MGC出場権を手にした。
東京五輪代表をめぐるMGCが設けられて以降、若手が台頭し、中堅・ベテランも気を吐き、日本の男子マラソンが活性化してきた。MGCには届かなかったが、今回2時間08分48秒で8位入賞した武田凜太郎(ヤクルト)も初マラソンだった。
日本記録は2時間4分台に突入し(鈴木健吾、富士通=21年びわ湖の2時間04分56秒)、2時間8分台・9分台では騒がれなくなっている。大阪とびわ湖の統合大会は、日本の男子マラソンの上位層が多層的に厚くなっていることを改めて感じさせるレースだった。
優勝者プロフィール●星岳(ほし・がく)
1998年9月17日、宮城県生まれ。桜丘中→明成高(宮城)→帝京大→コニカミノルタ。帝京大2年時に箱根駅伝10区区間賞。同4年時には主将を務めた。自己ベストは5000m14分04秒23(2019年)、10000m28分14秒12(21年)、ハーフ1時間02分20秒(18年)。