close

2022-03-14

【大学駅伝】山本歩夢(国学院大1年)が全日本実業団ハーフで日本人学生歴代2位の好走、5000mでユニバー代表を狙う

山本は今年の箱根で3区区間5位と好走した


インターハイでの特別な出会い


先頭集団の顔ぶれは名の知れた実業団のランナーばかりだったが、必死にくらいついた。余裕の表情でラップを刻む選手のなかには、高校時代から憧れているランナーもいた。沖縄インターハイ(2019年)の思い出は、一生忘れられない。

1500mにエントリーしていた山本がスタート前の待機所で緊張してガチガチに固まっていると、背中を思い切り叩かれた。ふと振り向けば、当時から名を知られていた瓊浦高3年(長崎)の林田洋翔(現・三菱重工)がリラックスした表情で立っていた。山本は一気に緊張がほぐれたという。

レース前に他校の年下選手に気を使った男は、本番では留学生たちとデッドヒートを繰り広げていた。その堂々たる立ち振舞いには感銘を覚えた。年齢差はわずか1歳。それでも、真夏の沖縄で見た背中は、あまりに大きく見えた。あの日以来、山本のなかでは特別な存在なのだ。

「林田さんと久しぶりに走ることができて、感動しました。集団で一緒に走りながら、この人が優勝するんだろうなと思っていたら、1位でゴールしましたね。やっぱり、すごい選手です」

レース後に林田から「ラスト2㎞でお前が出たときには焦った」と言われ、思わず顔がほころんだ。ただ、すぐに気を引き締め直し、地に足をつけて目標をクリアしていくことを誓っている。2022年のトラックシーズンは5000mで13分30秒切りを目指す。全日本実業団ハーフで好成績を残したことで、見据える場所も変わってきた。

「世界を意識したいです。まずは5000mでユニバー日本代表を狙いたい」

同期の平林清澄(1年)からは常に刺激を受けているが、同じ種目の選手として意識するのは中大の吉居大和(2年)。箱根駅伝1区の区間記録を15年ぶりに塗り替える走りを見て、スピードランナーへのライバル心に、より火がついた。

「僕も1区にはこだわりを持っています。1区で区間賞を取るのが一番かっこいい。吉居さんに追いつくだけではなく、追い抜きたいと思っています。あの人を抜かないと、世界は見えてきませんので」

柔らかい口調で穏やかな雰囲気を漂わせながらも、目はぎらぎらさせていた。野心あふれる19歳は、ここからさらに日本中を驚かせるつもりだ。



やまもと・あゆむ◎2002年6月24日、福岡県生まれ。168cm・53kg、B型。新津中→自由ケ丘高(福岡)。5000m13分48秒89(自己ベスト/2020年)で国学院大初となる13分台ランナーとして入学。故障の影響で出雲・全日本の出場は叶わなかったが、箱根では3区5位と快走。昨年11月の10000m記録挑戦会では、8組1着で28分41秒59(21年)の自己記録を更新。さらに今年2月13日の全日本実業団ハーフで日本人学生歴代2位となる1時間00分43秒(22年)で8位と好成績を残している。

文/杉園昌之 写真/大賀章好

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事