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2022-04-08

上田馬之助の前田日明との場外心中で脚光を浴びた初のイリミネーションマッチ…新日本プロレス歴史街道50年(37)【週刊プロレス】

5vs5イリミネーションマッチで勝った新日本本隊

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 軍団抗争における全面戦争で考案されたルールで、最高傑作ともいえるのがイリミネーションマッチ。それまで採用された綱引きマッチ、勝ち抜き戦は1対1の闘いが基本ラインにあった。

 それをタッグマッチにまで拡大。勝敗をはっきりさせるために、対戦相手全員を失格させると勝利となる。そこで場外乱闘を禁止すべく付け加えられたのが「リング外に落ちた選手は失格となる」特別ルール。これがゲーム性の高いイリミネーションマッチを緊張感のある闘いに引き上げた。

 イリミネーションルールが初採用されたのは86年3月26日、東京体育館でのUWFとの5対5。新日本プロレス本隊とUWFの全面戦争がスタートしたシリーズの最終戦だったが、一度発表されたアントニオ猪木vs前田日明を変更してのもの。両者の一騎打ちの機運が最も高まっていただけに、むしろファンからすればトーンダウンした感すらあった。結果、これ以降、両者のシングルマッチは組まれず、猪木が前田との対戦を避けたとの印象が残った。

 5対5イリミネーションマッチが発表されても新日本側はギリギリまでメンバーが決まらず。直前になって上田馬之助が助っ人として編入された。

 全面対決をうたったこともあって、場外乱闘での不透明決着を避けるべく付け加えられたのが「リング外に転落した時点で失格」というルール。昨今の「オーバー・ザ・トップロープで……」ではなく、例えばパートナーにタッチしてロープをくぐろうとしたところに攻撃を受けて連絡した場合も失格。極端にいえば、エプロンに控えているところに攻撃を受けた場合や、足を滑らせて転落するなど、試合権利がなくとも場外マットに足が着いた時点で失格となる。

 この特別ルールによって失格となった第1号が木村健吾。前田の蹴り浴びてリング外に転落した。そして第2号が藤波辰巳(当時)と藤原喜明。こちらはもつれ合ってセカンドロープとサードロープの間から同時に転落して“両者リングアウト”となった。

 そして、この試合のハイライトとなったのが上田の場外心中作戦。前田の蹴りを何発も浴びながらもダウンせず。最後には蹴り足をキャッチ。そのまま自ら前田を道連れにして場外へ引きずり込んだ。

 最後は1人残った猪木が高田伸彦(当時)と木戸修を連破して逆転勝利。3回の場外転落がいずれも異なりシチュエーションだったのに加え、日本プロレス育ちの上田の打たれ強さがクローズアップされたことで緊張感が高まり、ゲーム的な要素を吹っ飛ばし大いに盛り上がった。

 その後、新旧世代闘争、新日本vs長州軍などで組まれただけでなく、WWF(当時)が輸入してイリミネーションマッチだけの「サバイバーシリーズ」を開催、クラシック4大PPVといわれるまでの人気大会に押し上げた。

 最近もユニット対抗戦としてしばしば組まれるイリミネーションマッチ。しかし決まり手がすべて「オーバー・ザ・トップロープによる失格」で、ピリピリした緊張感の漂う新日本vsUWFとは遠くかけ離れた変則ルールマッチになってしまったのは残念だ。
(つづく)

橋爪哲也

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週刊プロレスNo.2175(2022年4月20日号/4月6日発売) | 週刊プロレス powered by BASE

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