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2022-04-19

【競歩】35km初代日本王者は川野将虎。世界選手権代表として「競歩界を引っ張っていく存在になりたい」

川野が2時間26分40秒で日本選手権35km競歩の初代王者に。世界選手権代表に内定(写真/寺田辰朗)

東京五輪50km競歩6位入賞の川野将虎(旭化成)が逆転で日本選手権35km競歩の初代チャンピオンに輝いた。派遣設定記録を突破し、オレゴン世界選手権の代表に内定。貧血に苦しんだ1月から見事に立て直し、再び世界の舞台に立つ。

 ――優勝した今の気持ちは?

川野 世界選手権の代表獲得が1つ、目標だったので、そこを達成できてまずはうれしいです。また東洋大の先輩の松永選手(大介・富士通)とワンツーをとれたことも、すごくうれしかったです。

しかし、レースを振り返ると後半の落ち込みがありましたし、フォームの面でも課題が残りました。世界選手権に向けてしっかり立て直して、世界選手権ではベストパフォーマンスができるように頑張っていきます。

――どういうレース展開をしようと考えていて、実際に想定どおりに歩くことができましたか。感想や自己評価をお願いします。

川野 1月の貧血状態からは回復して全力で準備もしてきましたが、まだベストの状態ではありません。ほかの選手たちの力も借りてレースを展開し、ラストの勝負どころでしっかり勝負することを考えていました。(50km競歩の日本記録を出した2019年全日本競歩高畠大会のように)自分でレースを動かすところまではまだ回復していません。

――松永選手が序盤でリードしたところは、いずれつかまえられると判断したのか、勝負より派遣設定記録の突破を強く意識していたのか?

川野 松永選手があのまま行かれたら、優勝はできなかったと思います。今回はフォーム面も体力面もまだまだ調整途上だと思っていたので、世界選手権に向けてステップとすることが一番大きな狙いでした。まずは派遣設定記録を意識していました。

――1分40秒以上離されたところもありましたが、それも想定していた範囲ですか。どこでつかまえられる感触でしたか。

川野 松永選手の飛び出しは想定していましたが、あそこまでハイレベルのスピードで行くとは思っていませんでした。松永選手が東洋大で培ってきた“その1秒をけずりだす”歩きを体現されていたとすごく感じました。見習っていきたいと思いますし、松永選手に負けない力強い歩きを今後目指していきたいと思います。

東洋大の先輩である松永(右)に先行されたものの、じわじわと追い上げ逆転。互いの健闘をたたえあった(写真/寺田辰朗)

――1月に極度の貧血状態になって、そこから3カ月で世界選手権代表を内定させることができた過程は?

川野 1月に貧血状態になったときは、ヘモグロビンが9.1(g/dl)まで下がって、通常練習はまったくできませんでした。世界競歩チーム選手権も輪島もあきらめそうになった時期がありましたが、(酒井)瑞穂コーチが体調や練習の状態を気遣ってくださいました。医師の方ともコミュニケーションをとられて、貧血を治すためにできる限りの体調管理をしてくださったんです。何度もミーティングをしてもらって、心の部分もご指導していただきました。自分だけでは体調を立て直せなかったと思います。

――50km競歩、最後の国際大会入賞者である川野選手が、最初の35km競歩の日本選手権優勝者になったことの意味を、ご自身ではどう感じていますか。

川野 35km競歩の国内最初の大会でタイトルを取れたことはうれしく思っています。輪島大会は歴史があり、日本競歩界の環境が整備されていなかった時代から、ずっと開催され続けてきた貴重な大会だと聞いています。今回の35kmは、過去と現在をつなぐ役割を果たしている大会において初めて実施された種目で、そこで自分が勝てたことは本当に名誉なこと。先輩選手たちや競歩関係者の皆さんが歴史をつないできてくれたから、今日の優勝があります。東京五輪で入賞したときに、競歩界を引っ張って行く存在にならないといけない自覚を持ちました。その最初のステップとして、輪島の新種目で勝てたことはよかったと思います。

――35kmの距離が自分に向いているかどうか、世界競歩チーム選手権と今回、実際に歩いてみてどう感じていますか。

川野 今大会は松永選手が最初からスピードを上げて、ハイペースの展開になりました。(リオ五輪で7位入賞した)松永選手のように20km競歩でも勝負できる実力がないと、35km競歩でも勝負できない。自分も20kmのスピードはあるので(1時間17分24秒の学生記録、日本歴代3位記録保持者)、自分にもプラスになっていると考えています。

 プロフィール
かわの・まさとら◎1998年10月23日、宮崎県生まれ。御殿場南高(静岡)→東洋大→旭化成。高校時代から世代のトップウォーカーとして活躍。東洋大3年時の2019年、全日本50km競歩高畠大会で3時間36分45秒の日本記録を樹立。昨年の東京五輪50km競歩に出場し、6位入賞を果たした。3月の世界競歩チーム選手権35kmは日本最上位の4位。4月17日の日本選手権35km競歩を2時間26分40秒で優勝し、オレゴン世界選手権代表に内定した。自己ベストは10000m競歩38分23秒95(2020年)、20km競歩1時間17分24秒(19年)。

構成/寺田辰朗

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