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2022-05-15

【ボクシング】驚異の新星ジャロン・エニスの強打圧巻 不敗対決に2回で決着

きわめて速く、鋭くもある。エニス(左)は不敗のクレイトンを最初から問題としなかった

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 注目のウェルター級ホープ、ジャロン・エニス(24歳=アメリカ)がまた恐るべきパフォーマンスを披露した。14日(日本時間15日)、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス近郊カーソンのディグニティヘルス・スポーツパークの統一世界スーパーウェルター級王座統一戦のアンダーカード、IBF世界ウェルター級挑戦者決定戦12回戦に出場したエニスは、カスティオ・クレイトン(34歳=カナダ)を2回2分47秒KOで降した。

 あまりに早く、あるいはセンセーショナルなノックアウトで勝負を決めた。このエニスに限っては、結果も内容もまた決して驚くべきではない。あらかじめ予想できたものだ。たとえ、クレイトンが手堅い技巧派で不敗(19勝12KO1分)だったとしても、10年前のロンドン五輪ではベスト8に進出し、メダルを決める戦いで、クリーンヒットの数を数え直すカウントバックに持ち込まれる接戦に末に敗れた実績があるとしても、今のエニスの敵ではなかった。

 試合開始のゴングは、エニスのワンマンショー開始を告げる合図に過ぎなかった。オーソドックス、サウスポー、両方を高水準で使いこなせるエニスはまず右構えでスタートを切る。178センチのスレンダーな体から、高速ジャブを繰り出していく。さらにワンツーを打ち込む。クレイトンはそのスピードと圧力に圧倒され、ガードを固めるだけで反撃の手立てさえ見つからない。その表情には怯えさえ見えた。ラスト1分、サウスポーにチェンジしたエニスは今度は右ジャブから、接近の機会をうかがうカナダ人に風を切る左ストレート、アッパーとカウンターし、さらに恐怖心を煽り立てていく。
右のクロス一撃。エニスは19連続KOを決めた
右のクロス一撃。エニスは19連続KOを決めた

 2回はサウスポーで戦い始めたエニスが、強烈なボディショットを打ち込む。そして、このラウンドも2分を経過したところで、サウスポーから再びオーソドックスにスタイルをチェンジしたエニスは、あとは仕留める機会を待つだけ。そしてウェイティングサークルでの待機時間は1分となかった。

「相手がガードをかたくしていたので、前傾姿勢になるのを待っていたんだ」(エニス)

 ステップインをうかがうクレイトンがわずかに上体を沈めた一瞬だった。エニスがワンツーのタイミングで打ち込んだ右。このパンチがブロックの後ろ、テンプルの後部を叩いてダウンを奪う。クレイトンのダメージはすでに深い。フロア上で体を半回転して、何とか体を引き上げたが、ダメージを確認するためにレフェリーのレイ・コロナがコーナーに行くよう指示されると、その足元はがくがく。最上段のロープをつかんで、何とか倒れるのを免れたのを見て、コロナはそのまま試合終了を宣した。

「相手は誰でもいい。世界戦をやりたい」とエニス。リングサイドにはウェルター級のWBC・WBA・IBFのベルトを持つエロール・スペンス(アメリカ)がいたが、大いに警戒感を強めたに違いない。

 これで不敗のレコードを29勝(27KO)に伸ばしたエニスは、対戦者の負傷による無判定試合を1つはさんで19連続KO勝ち。世界でもっともハイレベルなクラスとされるウェルター級で、もっとも危険な存在である。

文◎宮崎正博(WOWOWオンデマンド観戦)写真◎Getty Images

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