WBOアジアパシフィック・フライ級王座決定戦、4位の山内涼太(角海老宝石)対5位、戸高達(レパード玉熊)の12回戦は19日、東京・後楽園ホールで行われ、戸高が3回終了時点で棄権し、山内が新チャンピオンになった。
上写真=3回終盤、山内(左)が一気にスパークし、戸高を棄権に追い込んだ
あっけない幕切れではあった。3ラウンドの半ば過ぎまで、試合の主導権を握っていたのは、しつこく攻める戸髙である。ただ、流れは一撃で変わる。山内の右アッパーカット。戸高は腰からダウンしてしまう。立ち上がった直後も、同じパンチを食ってまた腰砕け。このときはからくもダウンを免れたが、戸高はその後も山内の追撃打にさらされた。
そしてラウンド終了後だ。レパード玉熊ジム側のセコンドが、戸高を押しとどめて、棄権を申し出る。展開を読むならば、勝負はこれからだったかもしれない。それでも、実力差は歴然である。戸髙の攻勢の場面でも、パンチの質は山内のほうが圧倒的に切れていた。コロナ禍のなかでのコンディショニングはたやすくはない。しかも、猛暑日が続き、ピークを保つのはなお難しい。明白な実力差を覚悟して、傷つきながら勝利を拾うのはあまりにも危険かもしれない。選手の力量、コンディションを知るからこそのこの判断。英断だったと思う。
とにかく、立ち上がりから戸髙は威勢がよかった。低い構えで内懐を狙い、右のクロス、ストレート、フックを好打する。軽いパンチでも、ボディ攻撃もしつこい。「やや相手に合わせてしまうところがある」と阿部弘幸トレーナーが評する山内は、はっきりと立ち遅れてしまう。3回になって、山内はピッチを上げるが、すぐに戸高にやり返されてしまった。唐突なエンディングまで、山内のじり貧はそうして続くのだ。
「(相手が棄権して)ホッとしました。ボクシングをやってきて、初めて形を作れて、ちょっと泣きそうになりました」と山内。この勝利でWBOランクも確定的になった。ただし、内容は及第点からはほど遠い。「会長もすごく怒っていたし。とにかく頑張ります」。反省するより前に、ベルトの重みを体いっぱいに感じたい。率直な笑顔に好感が持てた。
前座には日本ランカー同士が対戦する8回戦が2試合、組まれた。
ライト級6位の力石政法(緑)と同9位、粕谷雄一郎(角海老宝石)の対戦は、5連勝を続ける長身サウスポー、力石が粕谷を無難にアウトボックスし、大差の判定勝ち。粕谷にも策がなかったが、勝った力石も左カウンター狙いの一本やり、あまりに平坦な8ラウンドだった。
スーパーライト級6位のアオキ・クリスチャーノ(角海老宝石)は最初から一方的に攻め続ける。7位の木村文祐(加古川神戸)にまったく精細なく、防戦一方の5回2分49秒、レフェリーがストップをかけた。
文◎宮崎正博 写真◎小河原友信
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