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2022-07-09

【ボクシング】期待に違わぬ倒し倒されの大熱戦! 佐々木尽、関根幸太朗は引き分け

佐々木(左)、関根ともに、自らの不甲斐なさに不満の表情

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9日、東京・エスフォルタアリーナ八王子で行われた64.5㎏(スーパーライト級リミット+1㎏、ウェルター級は上限が66.6㎏)契約6回戦は、豪打の佐々木尽(20歳=八王子中屋、日本ウェルター級3位)と昨年度全日本新人王MVPの関根幸太朗(24歳=ワタナベ、日本スーパーライト級18位)がダウン応酬の激戦の末、57対55(佐々木)、56対56、56対56の1-0で、規定の2票に達せずドローとなった。

文_本間 暁 写真_馬場高志

パワーの佐々木vs.技術の関根…という展開

佐々木必殺の左フック

豪快な佐々木必殺の左フック

 わずか6ラウンド(18分)の攻防は、濃密なまま、あっという間に終わってしまった。

 試合は初回からいきなりボルテージ最高潮。左ジャブ、ストレートを上下に送り、左フックも上下に打ち分けるコンビネーションを決めて、いいリズムで立ち上がったのは関根。シャープでスピード感あふれるリードブロー、そして必殺の左フックを放っていく佐々木だが、関根が程よい距離をキープしてコントロールしていた。だが、ラウンド終了間際、関根がショートコンビネーションを放って、スッと距離を取った瞬間、佐々木が飛びかかるようにして放った左フックが、関根の右顔面をえぐる。すると、関根の体は斜めになってキャンバスに沈んだのだ。

初回終了間際、佐々木が左フックで関根をなぎ倒した
初回終了間際、佐々木が左フックで関根をなぎ倒した

「(パンチは)見えていたけど、テンプルを打たれてしまった」(関根)

 この一撃で終わっても不思議ではなかったが、関根は立ち上がる。レフェリーが再開を促すのとほぼ同時にゴングが鳴り響き、1分間のインターバルに入った。

 関根はゴングに逃れられたのか。ダメージを引きずって2ラウンドに入るのか。

 佐々木は当然、開始から攻めていった。しかし、関根はガードでしっかりと対処して、回復に努める。そして、佐々木が決めにいく左フックに、インサイドから左フックを合わせていった。
「ボクシングを徹底するつもりだったが、ダウンして打ち合いにいかざるをえなくなった」と関根が言えば、佐々木は「両足の付け根がしびれて、力が入らなくなった」。ともに、不測の事態によって、プラン変更をせざるをえなくなったというわけだ。
 左だけでなく右を強振するも、足がついていかない佐々木は、ラフな攻撃が目立つようになる。一方、関根の足は回復傾向にあった。

佐々木の左フックに左フックを合わせる関根
佐々木の左フックに左フックを合わせる関根

 ラウンドが進むごとに、アマチュアキャリアの長い関根の左ジャブ、ショートの左右アッパーカットが冴えていく。左ボディブローも混ぜたコンビネーションもスムーズで、佐々木を捉えていく。一方の佐々木は、その間隙をぬって、パワーパンチを叩きつける。関根はそのほとんどをガードで止めたものの、浅くでももらうと、バランスを崩される。軽打のヒットを取れば関根だが、一撃の効果は佐々木。そういう展開になった。

5回終了間際、今度は関根が倒し返した!
5回終了間際、今度は関根が倒し返した!

 そして、さらなるクライマックスが訪れる。コンパクトなブローでリズムを取り戻した関根は5回、左フックを放ってバランスを崩した佐々木に、脇を絞った左フックをヒット。お株を奪ったブローで佐々木を倒し返したのだった。
 これもラウンド終了間際の出来事。戦前、「左フックに左フックを合わせて倒す」と公言していた関根は、大きく開く佐々木のそれに、インサイドから合わせるタイミングを何度も図っていたが、ついにそれが捉えた瞬間だった。

 すっかり流れが悪くなった佐々木は、だが、ラスト6ラウンドに猛然と出る。しかし、関根も丁寧な戦い方で、豪打を打たせずに打つ。白熱の18分は、こうして終了ゴングを迎えたのだった。

「こんな試合を組んでもらったのに、倒せずに申し訳ない」と佐々木はうな垂れる。一方、「デカいことを言っていたのに、これは負けに等しい。悔しいです」と関根は涙を流して押し黙った。

 軽打を打たせる傾向にある佐々木、警戒していた一撃をほんの一瞬のスキに打ち込まれた関根。不測の事態に見舞われながら戦い抜いた、両者の日常の努力ははっきりと見える。が、その上で見えた課題を収穫にしたい。

 ウェイト調整も万全だったという佐々木は、足の付け根の痺れの原因をしっかりと突き止めるべきだ。「中間距離からジャブ、ストレートを打つ練習ばかりしていた」(中屋廣隆トレーナー)と技術力向上を図っているが、足のトラブルによって、そのお披露目はかなわなかったのか、それとも足は関係ないのか。そこをはっきりしなければ、ボクシングの幅を見せられないその要因を追求できなくなってしまう。

「10オンス(グローブ)はふわふわして、効いた感触がなかった」という関根(※スーパーライト級までは8オンスグローブ使用。それ以上のクラスは10オンス使用)。すでにタイトルマッチも経験している大器・佐々木と対等に戦ったこちらも大物だけに、それも含めた経験の積み重ね、佐々木との明確だった体格差を鑑みた適正ウェイトの選択も必要だろう。

 佐々木の戦績は14戦12勝(11KO)1敗1分。関根の戦績は4戦3勝(3KO)1分。

谷口がユース王座獲得/3度目の対戦は高田が伊佐を衝撃KO

タイミングのいい谷口の左がヒット

タイミングのいい谷口の左がヒット

 セミファイナルで行われた日本ユース・スーパーフェザー級王座決定戦8回戦は、2019年度全日本新人王のサウスポー谷口彪賀(たにぐち・ひょうが、23歳=八王子中屋)が、2020年度新人王西軍代表の福田星河(ふくだ・せいが、22歳=エディタウンゼント)を左ストレートで初回に2度倒した末に、79対71、80対70、80対70の3-0判定で勝利。初のベルトを獲得した。
 昨年7月に、同じ八王子で大逆転KO負けを食った谷口は「どれだけダウンを取っても倒しにいかない」と心に誓っていたという。しかし、右リードを突きながら、その場にとどまって左ストレートのタイミングを計るボクシングは、“倒したいボクシング”だったように思う。

全日本新人王から、ようやくワンステップ上がった谷口
全日本新人王から、ようやくワンステップ上がった谷口

 右でパンチのリズムは取れた(テンポがワンパターンだったきらいはある)ものの、体にリズムが流れず動きがないため、リターンブローをもらう危険性があった。技術差があったことに加え、初回に大きなハンディを福田に与えたために、大きなトラブルにはならなかったが、7、8ラウンドで見せたサイドへの動き、回り込んでかわして攻めるなど、柔軟なボクシングができる選手だけに、今後はそのボクシングを早い段階から進めたい。
 谷口は11戦6勝(1KO)3敗2分。福田は10戦6勝(1KO)4敗。

高田の左フックが決まり、倒れゆく伊佐
高田の左フックが決まり、倒れゆく伊佐

 前日本ユース・ミニマム級王者・伊佐春輔(24歳=川崎新田)と高田勇仁(たかだ・ゆに、24歳=ライオンズ)のミニマム級8回戦は、41秒の速攻劇で高田がTKO勝利。
 これが3度目の対戦となる両者。2019年の6回戦は高田の判定勝利。昨年8月のユース王座決定戦は伊佐の8回判定勝ち。そうして迎えた第3戦は、予想外の終幕。積極的にワンツーを放っていった伊佐の、その右の打ち終わりに高田が左フックを合わせると、伊佐は前のめりにダウン。レフェリーがノーカウントで止めるという鮮烈のフィニッシュだった。
 重心が高く、上体が伸び上がった状態で打ちにいった伊佐、しっかりと両足を踏ん張って合わせた高田。そこが明暗を分けたように思う。
 高田は2019年7月以来の勝利。その間、4敗2分と苦しんだ末の、劇的な白星だった。20戦9勝(4KO)8敗3分。5月のユース王座陥落から連敗となった伊佐は15戦9勝(1KO)5敗1分。

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