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2022-08-07

【ボクシング】狙うはスペンス? クロフォード? オールKO勝利の倒し屋オルティスが19勝

中盤はやや中だるみだったものの、最後はきっちり仕留めてみせた

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 KO率100%の倒し屋、WBA、WBO世界ウェルター級1位のバージル・オルティス(24歳=アメリカ)が 6日(日本時間7日)、アメリカ・テキサス州フォートワースのディッキーズ・アリーナでWBO同級5位のマイケル・マッキンソン(28歳=イギリス)に9回27秒TKO勝ち。戦績を19戦19勝(19KO)に伸ばすとともに、WBOインターナショナル王座2度目の防衛とWBA次期挑戦権獲得を果たし、「世界」へ向けて前進した。

文_宮田有理子
Text by Yuriko Miyata

写真_ゲッティイメージズ
Photos by GettyImages

およそ1年ぶりの試合。力みも目立ったオルティスだが、そのパンチはド迫力
およそ1年ぶりの試合。力みも目立ったオルティスだが、そのパンチはド迫力

 オルティスの攻めは猛烈だ。ファイトウィークの会見で、「KOはいつも、決して狙っているわけではない」と語っていたが、頑強な体で厳しいプレスをかけ、パワーパンチを重ねて、粘り強いサウスポーをボディブローでひざまずかせてしまった。
 とはいえ、「7ラウンドまでは、何もできてなかったね。ビッグチャンスを迎えるために調整していた」と試合後に語ったとおり、右ジャブを前に出しよく動くサウスポーのイギリス人をとらえるのに手間取ったのもたしか。これまですべて8回以内に決着をつけてきた強打者が、初めて9回開始のゴングを聞いた今回は、プロキャリアで2度目の対サウスポー戦だった。

 22戦全勝もKO勝ちは2つというマッキンソンは「私はオルティスが今まで戦った誰とも違うタイプだからね」と、オールKOの豪腕との対戦に自信満々だったのだ。実際、右利きサウスポーはジャブを駆使してよく動き、巧く左を差し込んでオルティスを攪乱。しかしやはり、力の差には抗えなかった。

 オルティスは左ボディと右アッパーを軸にした上下攻撃で相手を痛めつけ、8回終盤、左ボディブローをガードの奥にめり込ませてついにダウンを奪う。立ち上がったイギリス人はラウンド終了ゴングまで逃げ切り、9回開始のゴングに応じてみせたが、ほどなく再びの左ボディブローでフロアを這う。最後はトレーナーである父が白いタオルを振った。

「明日、ランニングを再開しようかなというくらい、僕はいつも動いている。早く次の試合がしたい。少なくとも今年中に。チャンスがありさえすれば世界王座にもいつでも喜んで挑戦する」
 リング上でそう宣言したオルティスの世界挑戦計画は、この勝利をもって再開する。

絶大な人気を誇るオルティス。いよいよ次は“勝負”のときか?
絶大な人気を誇るオルティス。いよいよ次は“勝負”のときか?

 昨年8月に実力者エギディウス・カバラウスカス(リトアニア)の闘志を奪い去り、スローペースでも順調にみえた新スター候補は、キャリア最長1年のブランクをつくることになった。
 WBA・WBC・IBF3団体王者エロール・スペンス(32歳=アメリカ)、WBO王者テレンス・クロフォード(34歳=アメリカ)というツートップが占めるウェルター級。どう頂上に斬り込むかをうかがうオルティスのマッチメイクに、興行主ゴールデンボーイはきわめて慎重で、時間もかかる。キャンプはギアを上げたまま長期間に渡り、若い体さえ悲鳴をあげてしまった。当初3月19日にロサンゼルスで予定されたこのマッキンソン戦の直前に、横紋筋融解症が発覚。オーバーワークや脱水により筋肉細胞が壊死する病気で、「トレーニングは順調だったのに急激な脱力感に襲われて」、医師から安静を言い渡された。主役不在で挙行された興行の放送を見ながら「とても複雑な気持ちで、今まで以上に戦いたい気持ちが強くなった」というホープは、6月上旬には地元テキサスから練習拠点のロサンゼルスに戻り、この日の戦いに備えてきたのだった。

 前座に出場した同門の元WBO世界スーパーライト級チャンピオン、モーリス・フッカー(33歳=アメリカ)を応援するために会場にいたクロフォードはマイクを向けられ、「バージルはちょっと力みすぎじゃないかな」とコメントしたとおり、今日の試合運びで、オルティスが超難関階級の頂点に立つ姿を想像できる人は少ないだろう。しかし、やはりオルティスの破壊力、熱量はあまりに魅力的。ここからの勝負こそ、注目される。 


藤岡奈穂子から王座奪取のエスパルサが統一王座防衛

グスマンの入り際に、巧みなブローをヒットさせたエスパルサ

グスマンの入り際に、巧みなブローをヒットさせたエスパルサ

 この日のセミファイナルは、WBA・WBC女子世界フライ級タイトルマッチ。4月に藤岡奈穂子(竹原慎二&畑山隆則ボクサフィットネス)を判定に破ってWBA王座を吸収した統一チャンピオン、マーレン・エスパルサ(33歳=アメリカ)がWBA指名挑戦者のエバ・グスマン(30歳=ベネズエラ)を迎え、3-0の判定勝ち(99対91、98対92×2)を収めた。

 2012年ロンドン五輪女子フライ級銅メダル、2014年世界選手権同級優勝からゴールデンボーイ・プロモーションの女子契約選手第1号となったエリートボクサーは、世界5階級制覇である藤岡への勝利を経て、より自信を増した印象だ。

元名チャンピオンで彼女をプロモートするオスカー・デラホーヤ氏の祝福を受ける
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 長いジャブで挑戦者を遠ざけ、タイムリーな右クロスを次々とヒット。グスマンのボディ攻撃に耐え、得意のクリンチワークも駆使して主導権を守っての、大差の勝利だった。戦績は14戦13勝(1KO)1敗。WBC王座3度目、WBA王座初防衛に成功。藤岡戦で手にした初代女子フライ級リングマガジン・ベルトもあわせ3本のベルトを巻くエスパルサの次なる標的は、WBO同級タイトルを持つガブリエラ・セレステ・アラニス(アルゼンチン)とみられる。

 敗れたグスマンは22戦19勝(11KO)2敗1分。昨年6月にWBA暫定王座を獲得し、正規王者だった藤岡への挑戦を待っていた。

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