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2022-08-12

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第1回「吉兆」その2

平成29年初場所、御嶽海は初めての技能賞を獲得

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平成最後の場所となった31(2019)年春場所、熱戦、熱闘のオンパレードでした。
手に汗、握った? そりゃ、そうでしょう。
でも、一歩、裏に回った力士たちの素の顔はもっとおもしろい。
勝負師とは言え、そこは同じ人間ですから、涙あり、笑いあり、失敗あり、成功あり。ありとあらゆる思惑や、出来事が入り乱れ、もつれあい、土俵上では絶対に見られないドラマを醸し出しています。
これを読めば、大相撲がもっと好きになること、請け合いです。
第1回のテーマはこの連載が成功することを祈念して「吉兆」です。
このうれしい兆しがあったときの力士たちの顔を想像してください。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

「凶」にもめげず

平成29(2017)年の正月、西前頭筆頭の御嶽海は東京浅草の浅草寺に初詣でに行き、おみくじを引いた。すると、なんと凶が出て、争いごとの項目をみると「困難」と書いてあった。

「一番ダメじゃん」
 
とすっかりヘコんだそうだが、そこは切り替えの早い御嶽海だけにこう気持ちを切り替えた。

「でも、これ以上、悪いことはないってことだから、前を向いてがんばろう」
 
この開き直りが良かったのかもしれない。場所が始まると、いきなり初日、大関の豪栄道(現武隈親方)、2日目、横綱の日馬富士を寄り切って初の金星を挙げるなど、これ以上はない好スタート。その後も4日目に鶴竜(現鶴竜親方)を押し出して2個目の金星を獲得し、6日目には大関の琴奨菊(現秀ノ山親方)にも圧勝するなど、トータルで11勝をあげ、初の技能賞にも輝いた。
 
おみくじとは正反対の結果が出たのだ。たとえ「凶」でも、考えようで「吉」にも変じる、といういい例だ。うれしそうにトロフィーを受け取った御嶽海は、

「自分はあまりワザはないと思っているので、技能賞に認められてうれしい。来場所もがんばって、この賞にふさわしい成績を残したい」
 
と浮き浮きしていた。ちなみに、この次の春場所は小結に返り咲き、9勝だった。またこのとき以来、令和元年九州場所までずっと三役の座も維持していた(令和4年初場所後に大関昇進)。

月刊『相撲』平成31年4月号掲載

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