元統一世界ライト級チャンピオンのテオフィモ・ロペス（25歳＝アメリカ）が13日（日本時間14日）、アメリカ・ネバダ州のリゾートワールド・ラスベガスでスーパーライト級10回戦を行い、ＷＢＯ11位のペドロ・カンパ（30歳＝メキシコ）に７回２分14秒ＴＫＯ勝ち。昨年11月26日、ジョージ・カンボソスJr.（29歳＝オーストラリア）に３団体のライト級王座を奪われて以来９ヵ月ぶりに再起するとともに、世界２階級制覇に向け第一歩を踏み出した。文＿宮田有理子
Text by Yuriko Miyata
写真＿マイキー・ウィリアムス／トップランク
Photos by Mikey Williams/Top Rank
「これはカムバックじゃない！」 勝利のダンスととんぼ返りは、感涙とともにあった。プロ初黒星、無冠に転落してから９ヵ月間の苦悩と、ストップ勝ちで再起を果たした安堵がにじみ出る。
激しくうねる、まさにジェットコースターのような２年間を過ごしてきた。ワシル・ロマチェンコ（34歳＝ウクライナ）の無敵時代を終わらせたのは2020年10月、23歳の時。自身のＩＢＦ王座に加えてＷＢＡ、ＷＢＯのベルトを獲得したロペスの栄華は、短かった。幾度ものリスケジュールを経て昨秋に実現したＩＢＦ指名挑戦者カンボソスとの防衛戦で、ダウン応酬のすえ、まさかの僅差判定負け。番狂わせが相次いだ2021年でもとびきりの、予想外の結果だった。試合後に発覚した呼吸器の疾患、故障などからの回復を待って進められてきたこの再起計画。減量に苦しんだライト級から５ポンドアップのスーパーライト級で、世界のセンターシーンに復帰するには、中堅のカンパを倒し切ることはいわば至上命令だった。
ロペスは努めて冷静に序盤を戦った。向かってくるクラシカルなメキシカンの攻撃の隙間を、こつこつと叩いていった。３回、相手の打ち出しを狙って右クロスを先行させ、ぐらつかせたあたりから攻めのギアが上がる。５回には速いワンツーを際どいタイミングに差し込んで、カンパの左目下の腫れが目立ってくる。そして迎えた７回、開始からまもなく、右ヒットを効かせて左をフォローし、ノックダウン。粘るカンパをロープに追い、左右連打をまとめたところで、レフェリーが試合終了を宣告した。ロペスはこれで18戦17勝（13ＫＯ）１敗。カンパは37戦34勝（23ＫＯ）２敗１分となった。
「これをカムバックと呼ばないでほしいんだ」
ロペスはあくまで、新世代の旗手としての軌道に復帰したのだと強調する。
試合前から、ロペスの父でトレーナーのテオフィモ・シニアが言い切ったとおり、目指すのは「スーパーライト級での全王座統一」なのだろう。
狙うはスーパーライト級
スーパーライト級の地域タイトルを獲得したロペス ライト級ではＷＢＣ王者デビン・ヘイニー（23歳＝アメリカ）がカンボソスの３団体王座をもぎ取って４団体統一に成功したばかりだが、一歩先にジョシュ・テイラー（31歳＝イギリス）が４団体統一を果たしたスーパーライト級は、すでに再編の激動期に入っている。
ＷＢＯ指名挑戦者ジャック・カテラル（29歳＝イギリス）との再戦に向かうテイラーは、ＷＢＡとＷＢＣの指名防衛義務を果たせずにその２王座を手放した。そしてＷＢＣ新王者の決定戦は、１位ホセ・セペダ（33歳＝アメリカ）と２位の元ＷＢＡ王者レジス・プログレイス（33歳＝アメリカ）との間で争われる予定だ。階級の勢力図がどう変化するか、ロペスのこの140ポンド・デビュー戦には多くの熱視線が注がれていた。同じトップランク傘下で長くチャンスを待っているＷＢＯ３位のアーノルド・バルボサ（30歳＝アメリカ）、そして近頃スーパーライト級に転じたばかりの“スーパースター”、ライアン・ガルシア（24歳＝アメリカ）をプロモートするゴールデンボーイのオスカー・デラ・ホーヤもリングサイドに陣取った。
「ジョシュ・テイラーがもし忙しいのなら、ＷＢＡ、ＷＢＣの争いに入っていきたい。オレはいま、他の選手たちの夢を奪う存在としてここにいる」
大柄なライト級として魅力的なＫＯを量産したロペスは、スーパーライト級でも「エンターテインメント性」を維持しながら世界を制覇できるのか。大きな期待感を抱かせるほどのインパクトが、このカンパ戦の中にあったとは言えないが、これからどうロペスが自身の言葉を実行するかは、とても興味深い。まずは12月10日、地元ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンにすでにスケジュールされている次戦の相手が誰になるのか、注目である。
