close

2022-08-16

“初物尽くし”のアントニオ猪木vs藤波辰巳の60分フルタイムマッチ…新日本プロレス歴史街道50年(51)【週刊プロレス】

試合後のアントニオ猪木と藤波辰巳

全ての画像を見る
アントニオ猪木にとって最後の60分フルタイムマッチは1988年8月8日、横浜文化体育館での藤波辰巳(当時)戦。猪木が年下王者に挑戦するのも異例なら、月曜日ながら特番での生中継が組まれるなど、さながら猪木引退マッチの様相。結果的に猪木にとって最後のタイトルマッチとなり、師弟対決としては日本マット初の1時間マッチとなった。

1972年の旗揚げ以来、一貫して“アントニオ猪木絶対エース路線”を推し進めてきた新日本プロレス。それが大きく変革を遂げたのが1988年だった。

1986年にUターンしてきた前田日明をはじめとするUWF勢が3月に離脱。翌4月22日には沖縄・奥武山体育館の控室で藤波辰巳が「いつまで同じことやってるんですか? 俺たちは何なんですか?」と前髪を切り落としながら猪木に詰め寄った。

「じゃあ、やれよ。遠慮なんかすんな」と猪木が返したことで、新日本マットは実力主義に突入したが、直後に猪木がランニング中に左足甲を骨折。前年にタイトル化されて初代王者になっていたIWGPヘビー級王座を返上。同王座は藤波とベイダーの間で争われて、藤波が獲得した。

その後、挑戦者決定リーグ戦が企画されたが、長州力、マサ・サイトー、ベイダー、木村健悟とともに猪木もエントリーされた。当時の猪木は負傷明けという以上にコンディション不良が目立っていた。

このリーグ戦のメンバーを見渡すと、誰が猪木に引導を渡すかが注目されて当然。しかもリーグ戦初戦で長州のラリアットを浴びてカウント3を聞く。誰もが、“もはやこれまで”と思ったことだろう。

しかしリーグ戦を制したのは猪木だった。そして迎えた横浜決戦。ここで藤波に敗れれば引退は確実。それを察してか、“燃える闘魂の語り部”というべき存在で、すでに実況を離れていた古舘伊知郎氏が一夜限りの復活。特番生中継だけでなく、新聞のラテ欄にも猪木の引退をあおるフレーズが躍った。

王者と挑戦者、立場を入れ替えての師弟対決。それは新日本旗揚げ当時、互いに目指したストロングスタイルをぶつけ合う闘いとなった。その中で猪木は、ミサイルキック、アルゼンチン式バックブリーカー、そしてブリッジして固めるジャーマン・スープレックスまで繰り出した。

藤波も年前に東京体育館での激闘を再現するかのように足4の字を繰り出しでいったが、印象的だったのは猪木の左右の張り手を浴びても倒れなかったシーン。むしろ頬を打たれるたびに前進していった。

そこであっさり倒れてしまっては、沖縄で進退をかけてまで詰め寄った“飛龍革命”が意味のないものになってしまう。直後の延髄斬りで頭を抱え、ゆっくりと尻もちをつくようにダウンしたが、初めて猪木に弓を引いた決意が感じられる決意の重さが表れたシーンだった。

生中継の時間内で決着がつかず、5日後のレギュラー枠で試合終了までオンエア。フルタイム闘った後に長州力が猪木、越中詩郎が藤波をそれぞれ肩車して握手を交わしたシーンは、新日本50年の中でも名場面となった。

それまで日本人同士の60分フルタイムはジャンボ鶴田vsキム・ドクでおこなわれていたが1本勝負でも、新日本でも初。また、師弟対決での1時間マッチでも初めてと、“初物尽くし”の激闘。猪木が底力を見せつけるとともに、藤波からすれば入門前からあこがれた師を1時間にわたって独占したぜいたくな時間でもあった。

週プロは送料無料通販やっています!

週刊プロレスNo.2198 (2022年8月31日号/8月17日発売) | 週刊プロレス powered by BASE

今週号の表紙は東京女子「東京プリンセスカップ」で悲願の初優勝を達成した坂崎ユカです。昨年同様、後楽園2連戦で幕を閉じたトーナメントは準優勝の渡辺未詩もMVP級の大活躍。決勝&準決勝を中心にリポートするほか、巻末言では甲田哲也代表に大会総括や今後の展望を聞いています。巻頭カラーはNOAHで開幕した「N-1 VICTORY」序盤3大会を全戦追跡。清宮海斗が継承後、初めて武藤殺法を解禁してリーグ戦初白星をあげた中嶋戦を中心に潮崎vs藤田、拳王vs田中、中嶋vs船木など注目リーグ戦を中心に詳報します。新日本の「G1 CLIMAX」はいよいよ佳境を迎え、ファイナルの日本武道館3連戦前の終盤4大会を全戦追跡。棚橋弘至がKENTAに敗れて優勝戦線から脱落した試合のほか、オカダvsローラー、オーカーンvsタイチなど注目リーグ戦を余すところなくリポート。スターダムの「5★STAR GP」はまだ序盤。こちらも3大会を全戦追跡。後楽園でおこなわれた注目のMIRAIvs鈴季すずのほか多くのリーグ戦を掲載。また全日本では「王道トーナメント」で宮原と永田がベスト4進出。KAORU、Gammaと長きに渡りリングで活躍した選手の引退興行リポートも。そのほかドラゲー後楽園&大阪、DDT後楽園、大日本・保土ヶ谷、FREEDOMS新木場、ガンプロ後楽園、PURE-J後楽園など掲載。【注意】発送後の返品・返金は原則不可とさせていただきます。送料は無料ですが、第三種郵便での発送となります。通常2~4日でのお届けとなります。また、事前に購入されても発売日にお届けすることは、お約束できません。ご了承ください。

shupuro.base.shop

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事