close

2022-09-02

日本定住の理由はビールだけ!? 今成夢人がハートリー・ジャクソン戦に向け挑発&入江茂弘戦を総括【週刊プロレス】

ギリギリの防衛だった入江戦

ガンバレ☆プロレス(ガンプロ)の今成夢人に、8月13日の試合について聞いてみた。ガンプロ8・13後楽園における今成vs入江茂弘のスピリット・オブ・ガンバレ世界無差別級選手権試合は激闘となり、王者の今成が辛くもスリーパーホールドで2度目の防衛に成功。しかし、試合後の光景が物議をかもすこととなる。

 試合の背景を説明すると、このタイトルマッチは今成が挑戦者に入江を指名して実現したもの。2020年10月、両者が後楽園メインイベントのタッグマッチで激突した時、今成は入江から「ここに立つべきじゃない人間がいる」と糾弾された。つまり、メインに立つ資格がないと一刀両断されたのだ。そこから、1年10カ月。ZERO1でもBASARAの阿部史典と後楽園メインで激闘、所属するガンプロでもチャンピオンに。自信を得たいまだからこそ、今成は入江に身も心もボロボロにされたトラウマを乗り超えるべく、王者自らチャレンジャーに指名して実現したタイトル戦だった。

 ある意味、入江の攻撃が厳しくなるのは当然の試合。今成は強烈なエルボーを何発も食らい、過酷な展開。戦闘不能になってもおかしくない状態まで追い込まれたが“ギリギリの勝利”。その試合後。入江は首を押さえながら、即座に退場。今成はダメージで大会を締められず、大家健にその場を託し、先に退場。王者、挑戦者ともノーコメントだった。

 まったく互いが称え合うことなく、握手もないエンディング。入江はその後、「本気で試合した結果が、ああいう終わり方だった」とコメントしたが、今成はどう感じていたのか。単刀直入に「トラウマは消えましたか?」と聞くと、王者はこう答えた。

「消えたと言い切っていいのかはわからないですけど、入江さんにあの日、目を背けないで自分の持っているものすべてを振り絞って、立ち向かったということが残っている。トラウマよりも、8月13日に真正面から立ち向かったという記憶だったり、体の痛みが、そのトラウマを完全に上塗りしましたね。自分があの日病院送り、搬送されたことも含めて、その出来事のほうがトラウマを覆うぐらいの出来事になった。トラウマを塗り替える体験、闘いだったと思います」

 試合後の感情については、大会を締められなかったことは後悔しつつも「不穏という言われ方もたくさん散見したんですけど、僕も入江さんと同じように全力で闘ったまで。たぶんプロレスの見方とか“プロレス興行の出口”が固まりすぎてるのかなという気はするんですよ。感情の出口として、いつも見ているプロレス興行の出口と違った感情を持ち帰ったから、みんなザワッとしたと思う。でも、僕たちはプロレスという生モノを提供しているし、必ずしも多幸感が約束されているとも限らない。みんなが多幸感を求めプロレス興行を見に来ているかもしれないけど、そうじゃないものも見せる可能性だってある。入江さんと同じように僕も必死に闘ったので、従来『プロレス興行はこういう感じだよな』という出口になれない、激しい闘い。締める前に果てたんだなと思います。(健闘を称え合う)その前に僕が果てちゃったし、(すぐに退場したのは)入江さんのスタンスだったり、ダメージがあったりとかもしただろうし。そこに、それ以上もそれ以下もない。僕たちは出し切った、と言えます」と振り返った。

 そして、今成が意識朦朧とするなかガンバレ王座に挑戦表明したのが、ハートリー・ジャクソンだった。ジャクソンはZERO1で活躍、2020年にはシングルリーグ戦「火祭り」も優勝した外国人選手。いまは日本に定住しながら闘い、8・13後楽園でガンプロに初登場して即座にベルトに狙いを定めた。

 その場では返答できなかった今成だが、その後、挑戦を受諾し明日に迫った9・3成増での防衛戦が決定。しかし、今成はジャクソンの“プロレスラーとしての生き方”に疑問符を持っている。以前、ZERO1のバックステージで会話を交わしたさい、ジャクソンはこの国に定住する理由として“日本のビール大好き”を本気で主張したという。

「ビールが好きだから日本にいるらしいんですよ。ジャパニーズドリームをつかみたいのか、ただビールが好きだからいるのか、僕はよくわからなかった。それぐらい、ビールが好きで日本にいると言っていたんです。クリス・ブルックスとか僕の身近な定住している外国人を見ていると結局ギラギラしているし、日本の居心地のよさだけに甘んじていない何かを感じるんだけど、ジャクソンには『オマエ、成り上がろうとしてんのか!?』と感じちゃった時がある」

 だから今成はジャクソンに次のような挑発を投げかける。

「ジャクソンはたしかに大きいし存在感もあるけど、マット界全体で見た時、たとえばスタン・ハンセン、スティーブ・ウイリアムス、スコット・ノートンのような凄味ある強豪外国人のポジションを築けなかったレスラー、という印象がある」

 ただ、シンプルに体格差はあるヘビー級のジャクソン。警戒を強めながらも、ジャクソンのまだ見ぬギラつきを引き出したうえで防衛したい思いが今成にはある。

「もしガンプロにターゲットを絞りギラついてきているなら、話は違ってくるから。怖いジャクソンに勝ちたいですよね。ジャクソンは新日本のLA道場出身で、新日本に凱旋して若い頃の後藤洋央紀選手とやってたり、ラウェイに出て無鉄砲な闘いをしていたり。元を辿ったらアントニオ猪木さんの系譜だし、断片にそういう歴史があるのに、彼のなかにそれが積み上がって見えてこない。もったいないなと思うし、幻想だって高められたのに“ビール好きのガイジン”に甘んじたジャクソン…それには、負けられない。
 変なヤツですよ。ここに定住してZERO1で定着して、(WWEの)NXTにコーチで行っても、結局また日本に戻ってきている。それ以上に、日本のビールが魅力的だってことですよね。そういうジャクソンのパーソナルな部分はすごく面白いし、レスラーとして魅力的だと思う。でも、それ以上の怖さを出せるなら出してみろ、という感じ」

 今成はジャクソンとの王座戦が決まったさい「日本のビール醸造は素晴らしい日本の文化だ。だがオマエは試合後、どの銘柄のビールも飲むことはできない」と挑発したが、そこには上記のような深い理由がある。王者がジャクソンの凄味を引き出すほどに入江戦に続く過酷なタイトルマッチになるだろうが、そのうえで防衛してこそベルトの価値は上がる。9・3成増、今成のいう“怖いジャクソン”が爆発すれば、また壮絶なスピリット・オブ・ガンバレ選手権となるだろう。

<週刊プロレス・奈良知之>

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事