close

2022-09-11

【ボクシング】矢吹正道、鮮やかに復活! 無敗タノンサックを7回TKO

 今年3月、異例のダイレクトリマッチで寺地拳四朗(BMB)に3回TKO負けを喫し、WBC世界ライトフライ級王座を失った現WBC10位、WBO9位の矢吹正道(30歳、緑)が10日、地元・三重県・四日市市総合体育館で復帰戦。WBO同級4位、WBA9位で無敗(24勝22KO)のタノンサック・シムシー(22歳=タイ/グリーンツダ)と50.0kg契約10回戦を行い、7回1分19秒TKO勝ちを飾った。

取材・文_堤貴之

 2016年3月のプロデビュー以来、初めてとなる地元での凱旋試合。普段は会場になかなか足を運ぶ機会のない大勢の人々が詰め掛け、会場は賑やかな雰囲気に包まれていた。
 そんな地元の人々の大きな期待と、ほんの少しの不安が入り混じった熱気の中、矢吹の代名詞となる麻倉未稀の入場曲が鳴り響くと、大きな手拍子が“ヒーロー”を迎え入れた。

無敗の自信を胸に登場したタノンサック
タノンサックも無敗の自信を胸に登場した

 開始から細かい駆け引きを捨ててプレスと猛攻を仕掛けるタノンサックと、矢吹のカウンターが危険に交錯する。タノンサックはお構いなしにたたみかけ、それが功を奏して矢吹のジャブを封じていた。
 しかし2回、コーナーに詰まった矢吹が狙いすました右のクロスカウンターを一閃すると、タノンサックがダウン。以降は両者の間にわずかの“間”ができ、矢吹のジャブが当たり始める。タノンサックはなおも強引に距離を潰して前に出るものの、間合いを制しているのは矢吹の効果的な左ジャブだった。

 右カウンターを警戒しているタノンサックだが、左ジャブなら被弾上等と言わんばかりに上下に強打を打ちこんでいき、矢吹にプレッシャーをかけ続ける。それが奏功して、4回から矢吹の足が鈍り始め、タノンサックのペースになりつつあった。

 しかし、その強いプレスを受けて退きつつも、鋭いジャブを打ち続けた矢吹は6回終盤、一瞬の隙を見逃さなかった。密着状態の中、タノンサックの両足が揃ったところへ右オーバーハンドをヒット。ロープ際で猛烈なラッシュを浴びせて再度ダウンを奪ってみせたのだ。

矢吹はキャリアに優る老獪さ、強さを見せつけた
矢吹はキャリアに優る老獪さ、強さを見せつけた

 ここはゴングに救われた形となったが、ダメージの残るタノンサックを矢吹は逃がしはしなかった。続く7回、一気に圧力をかけてスパークすると、左右のフックから右ストレート。都合3度目のダウンでキャンバスに頭を打ちつけたタノンサックを見て、レフェリーがTKOを宣告した。
 コーナーに登り、雄叫びを上げてアピールする、帰ってきた“ヒーロー”に、熱狂的な拍手の嵐が降り注いだ。

 矢吹の戦績は18戦14勝(13KO)4敗。タノンサックは25戦目にして初の敗北を味わった。



矢吹正道選手の話
「結果的には良かった。途中からは10ラウンドやるつもりでいた。自分はジャブに自信があるが、タノンサックは表情もまったく変えずに向かってきて強かった。3ラウンドに骨盤を痛めてしまって最後まで痛かったが、倒せて良かった。再起の難しさとかいろいろなことから解放された。フライ級に上げて2階級制覇とかライトフライでの再挑戦とか、今後のことはまた考えるので、とにかく今はゆっくり休みたいです(笑)」

松尾敏郎会長の話
「今日勝った矢吹にはなるべく早く世界戦を組んであげたい。三重テレビが応援してくれているので単独でも世界戦の興行ができると思う」


★その他の試合結果



◆フライ級8回戦◆
○村上勝也(28歳=名古屋大橋)日本フライ級9位
●見村徹弥(26歳=千里馬神戸)
判定3-0(77対75、77対75、78対74)
 試合開始から中盤まで、ともにハイレベルな攻防を繰り広げるが、中盤から村上の左ジャブがやや刺さり始める。しかし見村の強打も村上の顔面を弾く。
 一進一退の展開が続いていくが、中盤になっても、両者ともまったくスピードも質も落ちない。最終回まで互角に駆け抜けた両者だったが、村上に軍配が上がった。
 村上の戦績は16戦13勝(3KO)2敗1分。見村の戦績は13戦9勝(2KO)4敗。



◆バンタム級8回戦◆
○溝越斗夢(みぞこし・とむ、23歳=緑)
●仁平宗忍(にへい・そうにん、28歳=ワタナベ)日本スーパーフライ級13位
判定3-0(78対71、78対71、77対72)
 仁平がプレスをかけ、溝越が回りながらカウンターを狙う様相で始まったこの試合。初回中盤に溝越の鋭い右カウンターが決まって仁平がダウン。続く2回も同様の展開の中、溝越が右のカウンターでダウンを追加した。
 その後、試合は落ち着いたものの5回中盤に溝越が連打で計3度目のダウンを奪うと、諦めずにプレスをかけ続ける仁平に対し、溝越は左ジャブを使って左右へサークリング。試合を終始、コントロールした。
 これで日本ランク入りを濃厚とした元日本ユース王者(スーパーバンタム級)・溝越は、連敗を2で止めて14戦9勝(4KO)4敗1分とした。敗れた仁平の戦績は19戦10勝(2KO)7敗2分。
タグ:

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事