決戦まであと6日──。23日(月)、神奈川・横浜アリーナで元世界3階級制覇王者・八重樫東(36歳=大橋)の挑戦を受けるIBF世界フライ級チャンピオン、モルティ・ムザラネ(37歳=南アフリカ)が17日、東京の帝拳ジムで練習を公開した。昨日来日した疲れも見せず精力的にトレーニングに没頭する姿は、「アウェーで戦い慣れている」と自信を見せるとおり、経験の深さを感じさせるものだった。
上写真=リラックスした右ストレートを打ち込んでいくムザラネ
ここ最近、来日する外国人選手の、メディアへの練習公開は、軽いシャドーボクシングを1、2分見せるだけというものが増えている。が、ムザラネはとにかく精力的に動いた。ロープスキッピングに始まり、シャドー、ミット打ちと淡々とこなしていく。圧巻だったのはサンドバッグ打ち。なんと6ラウンドにもおよび、偵察に訪れた大橋秀行会長に、「ベテランは本当によく練習するよね」と、愛弟子・八重樫も引き合いに出して、舌を巻かせた。
ムザラネは、さらに最後の締めとしてふたたびロープを跳んで、試合と同じトータル12ラウンドをきっちりと動いてみせた。
それでも、滴り落ちる汗の量に比して、疲労の色をまったく浮かべない。周囲も気にしない。マイペースぶりを存分にアピールした。
「あれだけサンドバッグを打って、呼吸が一切乱れない。持久力は相当」と大橋会長は感心し、「持久戦となれば、八重樫のストロングポイント」と、同行した松本好二トレーナーも望むところと身構えた。
しかし、シャドーにしろ、ミット、バッグ打ちにしろ、決して力強いものではなく、同じテンポ、リズムでリラックスして放つもの。この“リズミカル”こそが、近年のムザラネの厄介さで、八重樫も、そこに乗せてしまわないようにしなければならない。
「ヤエガシは、どんな戦い方もできる選手。とてもリスペクトしている。でも、そんなヤエガシの出方次第で、私も対応できるようにトレーニングしてきた。ベルトは南アフリカに持って帰ります」と、柔和な表情を浮かべながら、しっかりと自信のアピール。
2001年にプロデビューし、40戦を戦ってきた大ベテランは、「長く戦い続ける秘訣」を訊ねられると、「規律正しく生活すること。そしてなにより、この競技に自分自身のすべてをいかに捧げられるかです」と即答。プロデビュー年こそ2005年だが、アマチュア開始からは20年超となる八重樫との、“ボクシングへ注ぐ情熱”のぶつかり合いが見られそうだ。
文&写真_本間 暁
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