国士舘大にきて人生が変わったという綱島。最後の箱根で母校を33年ぶりのシード権獲得へ導きたい
陸マガの箱根駅伝2023カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」では出場20校の注目選手を紹介。2年時の箱根から連続出場中の綱島辰弥(4年)が最後の箱根を迎える。毎年4年生がチームを勢いづける走りを見せる国士大だが、今回、綱島はそれだけでなく、日本人エースとしての覚悟を持って挑むことを誓う。33年ぶりのシード権獲得へ。粘りの走りを見せ、1区から良い流れをつくるつもりだ。
スピード持久力のアップで28分台突入
箱根駅伝の予選会ではケニア人留学生のピーター・カマウ(2年)に次いで、チーム内2番手でフィニッシュ。国士舘大の7年連続出場に大きく貢献した綱島辰弥(4年)はタイムを稼ぐ役割を全うしたが、1時間04分04秒の記録にも57位(日本人43位)の順位にも納得していなかった。
「日本人エースとして他大学の選手と比べれば、劣っています。日本人15位以内を目標にしていました。あらためて、実力不足を実感したので、ここからまた練習します」
10月以降、取り組んできたのはスピード持久力のアップ。そして、11月20日に出場した10000m記録挑戦会では最後まで粘り、28分45秒21と自己ベストを更新。初めて29分台を切り、箱根駅伝に向けて、大きな弾みをつけた。
前回大会は9区で区間6位と好走し、今大会は早い段階から1区を志願。2年時に10区を走っており、大手町から鶴見中継所までの21.3kmのコースは頭に入っている。イメージするのは、前回の1区で粘りながら区間10位の力走を見せたOB木榑杏祐(現・埼玉医科大G)のような“魂の走り”。4年生の意地、日本人エースとしてのプライドを懸けて、タスキをつなぐ覚悟を持っている。
「駆け引きよりも先頭集団に死ぬ気でついて行く。ラスト5kmは離されても、必死に追いかけます。僕が流れをつくらないといけないので。前との差を少しでも縮めたいです」
国士大だから強くなれた
個人目標は一ケタ順位。国士大でのびのびと育ち、学年を重ねるごとに強くなってきた。湘南学院高(神奈川)時代は5000mの持ちタイムが14分57秒68。実力不足でどこからも声がかからず、一度は陸上競技をやめることも考えたが、思わぬ縁に恵まれた。高校のOBで当時4年生だった主務の推薦をきっかけに添田正美前監督の目に留まり、国士大に滑り込めたという。
「高校時代は、自分が箱根駅伝を走るなんて想像もできなかったです」
1年時は箱根湯本で6区の応援。沿道にあふれる観客に圧倒され、大歓声を浴びながら箱根路を走り抜ける選手たちを羨ましく思った。あのとき、心に誓った。「僕もここで走りたい」。練習に打ち込む意識がガラリと変わったのもそこからだ。充実した大学生活も残りわずか。99回大会は、自身3度目の箱根となる。
「国士舘に来て、僕は人生が変わりました。卒業後も実業団で競技を続けます。今走っていて、とても楽しいんです。僕はここだから強くなれたと思っています。最後は箱根で結果を出して、『綱島が国士舘の日本人エースだったな』と言われるような走りを見せたいです」
33年ぶりのシード権獲得を目指し、自信を持って大手町のスタートラインに立つ。
つなしま・たつや◎2000年10月30日、神奈川県生まれ。163cm、51kg、O型。藤の木中→湘南学院高(神奈川)。1年時から箱根予選会に出走し、2年時の本戦で三大駅伝デビュー。3年時は9区6位と好走し、10年ぶりとなる総合15位以内に大きく貢献した。自己ベストは5000m13分55秒76、10000m28分45秒21(共に2022年)、ハーフ1時間03分46秒(20年)。
箱根駅伝 2023完全ガイド(陸上競技マガジン1月号増刊)