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2022-12-26

【箱根駅伝一番星】「常に箱根をイメージして走ってきた」専修大・髙瀨桂。前回2区で味わった苦しみを糧に、悲願のシード権獲得に挑む

どの区間でも区間5位以内を狙うという髙瀨。最後の箱根で16年ぶりのシード権獲得を目指す

陸マガの箱根駅伝2023カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」では出場20校の注目選手を紹介。前回の2区の苦い経験は、今季の髙瀨桂(専修大4年)を大きく成長させた。キャプテン兼エースである髙瀨は今回も2区を意識するところが大きいが、どの区間を任されても5位内を狙うことだけは明言する。前回のリベンジができる最後のチャンスに、懸ける思いは一層強くなっている。

 
 

前回は「スタート前から気持ちで負けていた」

 出場が2区とは限らないが、今季の髙瀨桂(4年)は2区を想定することで頑張ることができた。毎日意識してきたことは何か? という問いに、「常に箱根をイメージして走ってきました」と髙瀨は答えている。

前回は予選会で個人10位(日本人3位)と快走しながら、本戦2区は区間20位(1時間11分04秒)に終わった。1区の木村暁仁(3年)が区間4位と上位でタスキを持ってきたにもかかわらず、18位まで後退した。3区のダンカン・キサイサ(2年)も区間20位で、2年連続最下位の20位へ序盤で悪い流れをつくってしまった。

失敗の要因に「緊張してしまっていました。スタート前から気持ちで負けていた」とメンタル面を挙げたが、1カ月前まで2~3週間、故障をしていたのは事実である。練習期間の不足が直前の調整練習にも影響し、自信を持てずに鶴見の中継所に立ってしまった。

しかしエース区間であり、難コースでもある2区を走った経験は鮮烈に残った。
 
「権太坂で想像以上に脚に来ました。(だらだら続く上りで)いかに力を使わない走りができるかが重要です。ラスト3kmの戸塚の壁は、本当に壁だと感じました。でも、あそこのペースダウンを最小限に抑える選手が、2区の区間上位になれるのだと思いました」

繰り返すが起用区間は2区とは限らない。専大が7年ぶりに本戦復帰した2年前に走った1区の可能性も、3区の可能性もある。
 
「チームとしてシード権を目標にしているので、10位ラインを維持する走りをすることが目標です。そのためには配置された区間で区間5位以内を狙って走ります。2区に起用されたら、前回以上では確実に走れると思います」

前回の2区の経験が、キャプテンも務める最終学年のモチベーションになった。

 全日本大学駅伝2区での大きな経験

しかし髙瀨の最終学年は、すべてが順調だったわけではない。
6月の全日本大学駅伝関東選考レースは全体で15位、29分06秒71の自己新と好結果を得た。チームでの全日本大学駅伝出場はかなわなかったが、日本学連選抜メンバー入りをすることができた。

だが、7月後半に故障をしてしまう。ヒザや腿の痛みで8月時点では「マネジャー的な役割」(長谷川淳監督)をしていた。10月の箱根駅伝予選会が不安視されたが、リハビリトレーニングへの取り組みをしっかり行ったことが大きかった。

専大は2年前から大桃結花トレーナーの指導を受け、「体幹トレーニングだけでなく呼吸や腹圧など、良いフォームで走るトレーニングを行っています。準備体操や補強のメニューも一新しましたし、どこを鍛えるか個別メニューも出してもらっています」と長谷川監督。

髙瀨も「教わった(リハビリ)トレーニングを7月後半から9月中旬まで、妥協することなくやったことで身になり、故障が明けて、予選会までの1カ月で驚くスピードで回復しました」と話す。

箱根駅伝予選会は64位(チーム内3位)、11月6日の全日本は日本学連選抜チームの2区に出場した。葛西潤(創価大4年)、佐藤圭汰(駒大1年)、三浦龍司(順大3年)、井川龍人(早大4年)、丹所健(東京国際大4年)、石田洸介(東洋大2年)といった、そうそうたるメンバーのなかで区間10位。髙瀨本人は「区間賞と1分43秒差は少し空きすぎでした。他大学の主力が相手でしたが、そこに食い込みたかった」という受け止め方をした。それに対して長谷川監督は「あの顔ぶれのなかで箱根駅伝前に走れたのは大きかった」と、プラスにとらえている。

外部のライバルだけでなく、チーム内のライバルである木村の存在もプラスになる。髙瀨は箱根駅伝予選会8位(日本人1位)の後輩を、次のように意識している。

「木村はストイックに、自分に厳しくやっていて、見習うべき点が多い選手です。しかし予選会で日本人トップを取ったときは、うれしさ3割、悔しさ7割でした。木村がいるからこそ張り合える。違う区間でどちらが上か、箱根駅伝ではその勝負をしたい」

1~3区に登場する2人が共に区間5位以内で走れば、専大は目標とするシード圏内で走り続ける。



たかせ・けい◎2001年3月10日、福岡県生まれ。170cm・56kg、A型。学業院中(福岡)→鳥栖工高(佐賀)。中学3年時に800mと1500mで全日本中学校選手権に出場し、高校でも2年時に1500mでインターハイに出場を果たした。大学入学後から本格的に長距離に取り組み、2年時の箱根駅伝の1区で三大駅伝デビュー。今季は全日本大学駅伝に日本学連選抜の2区で出場し区間10位と力走した。自己ベストは、5000m14分17秒84(2020年)、10000m29分06秒71(22年)、ハーフ1時間02分49秒(21年)。

文/寺田辰朗 写真/田中慎一郎、JMPA

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