陸マガの箱根駅伝2023カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」では出場20校の注目選手を紹介。１年時からメンバー入りを果たし、３年連続で箱根路を走る東京国際大の日本人エース。今季は、10000ｍで自己記録を更新し、出雲駅伝では３区５位、全日本大学駅伝では２区８位で共に順位を上げた。前回、ラスト３㎞で抜かれたことで悔しさを味わった丹所健（４年）が地元での区間賞を獲得し、往路優勝に弾みをつける。
主力が復帰 良い流れをつくって往路優勝へ創部12年目で、箱根本戦出場７回目を迎える東京国際大。初出場を果たした2016年は８区でたすきを途切らせたが、20年から一気に飛躍し、総合５位という栄えある結果に到達した。以来、大志田秀次監督は、「次はまず往路優勝したい」と繰り返してきた。
そんな堅実な指揮官が、新たな一歩を踏み出すために、今年エースとして期待を寄せてきたのが、丹所健だ。
「大志田監督には、何事もなければ、ほぼほぼ２区だと言われています」と丹所は明かす。
このエースは、“たたき上げ”の魅力を放つ。高校時代、5000ｍの自己ベストは14分35秒14で、全国大会出場の経験はない。
しかし、大学に入学すると地力がつき、１年時から１区を任された。３年になった昨年度は、箱根駅伝３区を１時間00分55秒で走り、区間賞を樹立。10月の出雲駅伝では３区２位でトップに躍り出て、チームの初出場＆初優勝に貢献。続く全日本大学駅伝でも６区区間新をマークし、誰もが丹所を大学界のトップランナーと見るようになった。丹所は１年前について「もう自信しかなかったです」と明るく振り返る。
だが、今シーズンについて話がおよぶと、丹所は困った顔を見せた。出雲駅伝は３区５位、全日本大学駅伝は２区８位と手ごたえを得られなかった。
不安材料は夏合宿の消化不良だという。昨年度はスピードを磨く練習が中心で、好成績を残せたが、22年度は30km走を３回走るなど距離重視の内容で疲労が抜けず、調子が上がってこない。
「こういう経験は初めてなので、どうしてなんだろうと、もどかしいですね。でも、確実に量をやってはきたので、それを信じるしかないという感じです」
さらに最終学年として、責任を果たしたいという思いが強くなれば、その分だけ、焦りも増す。だが、それでも前に進もうと思うとき、丹所には思い出す光景があるという。
前回の箱根で、青学大の太田蒼生に残り３km地点で抜かされ２位で中継した場面だ。実は箱根３区は、母校の近くで、沿道には友人たちが多く駆け付けた。しかし、２位通過だったため、丹所が日本人最高記録を塗り替えたことを知らない人が結構いるという。
「“丹所、区間賞だったの!?”みたいな感じに言われちゃうんです（苦笑）。あんな終わり方だと、そうなっちゃうんだなって。それが悔しくて……」
だからこそ、今回、２区にかける思いは強い。丹所の実家は権田坂の近くにあり、今年も家族やたくさんの友人が見守ってくれるはずだ。
「前回、ああだったから、地元で区間賞とれたらカッコいいなと思ってずっと練習してきたんです。もう箱根しかないので、最後くらい、カッコいい終わり方をしたいと思っています」
もちろん、丹所は出雲８位、大学駅伝11位だったチームが、箱根で往路優勝は厳しいという見方があるのは知っている。だが、エースは最後にこう言い切った。
「今回は山谷（昌也、４年）や（イェゴン）ヴィンセント（４年）といった主力が戻ってきています。往路からいい流れをつくれると思うので、あとは復路が楽に走れるように、自分たちが往路優勝します！」
「なにもなければほぼほぼ５区」と大志田監督に言われているという丹所。花の２区で他大学のエースと肩を並べる（写真／井出秀人）たんしょ・けん◎2001年２月７日、神奈川県生まれ。平戸中→湘南工科大附高（神奈川）。177cm・63kg、O型。１年時から箱根駅伝のメンバー入りを果たし、１区13位、１区14位、前回は３区区間賞と実力をつけている。昨年の全日本では、３区でトップに立ち、初優勝に貢献。全日本でも６区区間新の区間賞でトップに立った（チームは最終的に５位）。自己ベストは5000ｍ13分46秒17（2021年）、10000ｍ28分01秒24（22年）、ハーフ１時間04分37秒（21年）。
箱根駅伝 2023完全ガイド（陸上競技マガジン1月号増刊）
