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2023-01-06

【NFL】試合中に心肺停止のハムリンが意識回復 筆談で「我々は勝ったのか?」 医師「君は人生のゲームに勝った」

【ビルズ vs ベンガルズ】倒れる前、元気な姿を見せていたビルズのSハムリン=photo by Getty Images

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 米プロフットボール・NFLのバッファロー・ビルズは、試合中に一時的に心肺停止となり、その後も重体だったS(セーフティー)ダマー・ハムリン(24)が、「著しい回復をした」「神経学的に無傷である」と、現地1月5日(日本時間6日未明)に発表した。1月4日に意識を回復したという。

 NFLネットワークのレポーター、イアン・ラポポートによると、「著しい回復」「神経学的に無傷」とは、具体的には、目を開けて、反応があり、身近な人の手を握っていることだという。ラポポートは自身のSNSで「本当に信じられない」と、奇跡的な回復に驚きと喜びを表している。

 また、スポーツ専門局・ESPNのアダム・シャフタ―によると、ハムリンは1月4日夜に意識を取り戻した後、医師に「我々はゲームに勝ったのか」と筆談で尋ねたという。医師はハムリンに「そうだ、君の勝ちだ。君は人生のゲームに勝ったのだ」と答えたという。

 ハムリンは、1月2日にオハイオ州シンシナティで行われた、NFL第17週のマンデーナイトゲーム、バッファロー・ビルズ対シンシナティ・ベンガルズの試合中に、ベンガルズの選手をタックルした後に倒れた。
【ビルズ vs ベンガルズ】ビルズのSハムリンが心肺停止となった直前のプレー。ベンガルズのWRヒギンズをタックルした=photo by Getty Images
 そして、心肺停止となり、フィールド上で、蘇生措置を受けた。複数の米メディアによると、ハムリンは救急車で搬送される間にも心停止となり、2度目の蘇生措置を受けたという情報もあった。

 ハムリンはシンシナティ大学医療センターで集中治療室に入り、人工呼吸器をつけ、「脳に血液を集中させるため」鎮静剤を投与されて眠っていたという。


 搬送から1日後には、必要な酸素量の5割近くを、自発的な呼吸で得られるようになるなど、回復の兆しはあったものの、重篤な状態が続いていると、ビルズから発表されていた。
【ビルズ vs ベンガルズ】衝撃のあまり、涙を流すビルズCBホワイト=photo by Getty Images

選手として復帰できるか、判断は時期尚早…治療の医師が会見

シンシナティ大学医療センターで、ハムリンの治療に当たっている2人の医師が、現地1月5日会見に応じた。

ティモシー・プリッツ医師は、「我々は、フィールド上で起こった事故の後、ハムリンについてかなりの懸念を持っていたが、ハムリンは実質的な回復を遂げている」と語った

「今朝(現地1月5日)の時点で、彼は意識が回復し始めており、神経学的な状態や機能には問題がないようだ。私たちはそのことを報告できることをとても誇りに思う。彼が改善していることを彼や彼の家族、バッファロー・ビルズのオーガニゼーションに報告できることをとても嬉しく思っている」

「彼はまだ重症で、引き続き当院の外科・外傷ICUで集中治療を受けている。彼はまだ大きな改善を遂げる必要があるが。しかし、これは彼の継続的な治療の中で、本当に良い転機となった」。

 「重症から安定期に移行するためには、ハムリンを呼吸チューブから外すことができ、神経学的および呼吸器系に継続的な改善が見られることが必要だ」

 プリッツ医師によると、5日に、ハムリンと月曜の夜の出来事について話し合うことができたという。ハムリンは現在、呼吸チューブを挿管されているため、話すことはできないが、ペンと紙、あるいは頭の動きで自分の気持ちを表現することができるという。

 「彼には、シンシナティやバッファローをはじめ、全米から彼と家族へのサポートが寄せられていることを話した」。

 ハムリンは4日夜に意識を回復した際、彼が付き添いの看護師に書いた最初の質問は 「我々は勝ったのでしょうか?」だったという

 居合わせたプリッツ医師の答えは「そうだ、ダマー。君は勝った。君は人生のゲームに勝ったのです」だったという。

 会見に同席したウィリアム・ナイト医師は以下のように話した。

 「この3日間は長く、困難な道のりだった。彼は非常に状態が悪かったが、プリッツ医師が指摘したように、(ハムリンは)現在、良好な神経学的回復の兆候を示している。それと共に、バイタルサインだけでなく他の個々の臓器の回復に関連して、全体的な臨床的改善を示すまでに、かなり顕著な回復を遂げた」

 ハムリンの回復への道のりについて、ナイト医師は、ハムリンは「人工呼吸器からの解放されるには、まだ道のりがある」とした。

 そしてハムリンが再びプロフットボールをプレーできるかどうかを含め、長期的な回復を予測するのは時期尚早だと述べた。

   ◇       ◇

 ハムリンの代理人は1月5日午前、次のような声明を発表した。

「全米からのダマーへの支援の声は素晴らしいものでした。電話やメッセージ、メールをありがとうございました。ダマーの状態は一晩でかなり改善されました。最初に措置してくれた方々、医師、病院スタッフ、そしてこのプロセスで様々な役割を担ってくださったすべての方に、心から感謝しています。ダマーのために祈り続けてください。最新情報が入り次第、お知らせします」
ダマー・ハムリンが搬送されたシンシナティ大学医本拠地ハイマークスタジアムの前で、ハムリンの回復を祈るビルズファンの子どもたち=photo by Getty Images
 ハムリンは1998年3月24日生まれの24歳。ピッツバーグ都市圏の街マッキーズロックスで生まれ育ち、ピッツバーグの高校からピッツバーグ大学パンサーズへ進んだ。進学時にはオハイオ州立大、ペンシルバニア州立大からも勧誘を受けたが、やや格上の両校を断って地元のパンサーズに進学した。ピッツバーグ大で活躍し、2021年のドラフト6巡212位でビルズに指名されて入団。185センチ91キロと大型で、ビルズではセーフティーとして今季はこの試合の前まで全試合に出場、うち13試合で先発だった。91タックル、1.5サックと活躍を見せていた。

【小座野容斉】

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