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2023-01-13

【相撲編集部が選ぶ初場所6日目の一番】貴景勝が大関の意地で阿炎をストップ。6日目にして全勝消える

貴景勝がイナシで崩して押し出し。阿炎に土をつけて1敗に並び、優勝争いは大混戦に

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貴景勝(押し出し)阿炎

これが、大関の意地か。
 
琴勝峰、碧山が敗れ、幕内の全勝が阿炎のみとなっての結びの一番。貴景勝が、その阿炎を押し出して連勝街道にストップをかけた。
 
貴景勝にとっては、単に優勝争いで前を行く存在というだけではなかった。先場所、優勝決定巴戦で負けた借りを返すべき相手であり、また阿炎はこれまでかなり苦手とする相手でもあったからだ。
 
この2人の過去の対戦成績は、阿炎の5勝2敗。しかも先場所の優勝決定戦を含めれば貴景勝はこのところ5連敗中という、どちらが大関か分からないような結果が残っていた。
 
ともに突き押し得意の2人。番付下位の阿炎のほうが一方的に勝っているのは一見不思議な気もするが、阿炎は長い腕を利してのモロ手突きからの上突っ張り、貴景勝は低い体勢から頭で当たっての押し、というスタイルを考え合わせると、少し答えが見えてくる。相撲は当然ながら2人が離れた状態から始まるので、どうしても立ち合い直後の突き合いでは、腕の長い阿炎が有利。貴景勝は自分の間合いに入らせてもらえず、この対戦はいつもまず阿炎ペースからスタートすることになる、ということなのではなかろうか。
 
貴景勝にとって、その阿炎ペースに変化を与えるものが、「イナシ」だ。この日も立ち合い直後は阿炎の突きに少し押されたが、当たり負けせず、左が相手の脇の下に入ったことで、左からのイナシが利いた。
 
一瞬、横を向かせて距離を詰められれば、貴景勝の圧力が伝えられる形になる。突きを封じて押し勝つと、阿炎はたまらず引き。貴景勝は落ち着いてついていき、白房下に押し出した。
 
今場所ここまでは、引きを見せず、突きで攻め勝つ相撲が多かった阿炎だが、貴景勝の圧力に、思わず以前の癖が出てしまった、というところか。
 
これで6日目にして幕内の全勝はいなくなり、1敗は貴景勝を先頭に大栄翔、阿炎、阿武咲、碧山、琴勝峰、東龍、宝富士と8人。豊昇龍は苦手の翠富士の粘りに屈して後退、2敗が豊昇龍、翠富士、竜電、錦木、遠藤、平戸海、琴恵光の7人という状況になった。

優勝争いは、これでまたゼロに近い状態からのリスタート。もちろん可能性としては、前記の1敗以下の15人から優勝力士が出る確率が高いが、現在3勝3敗と五分の力士も、ここから驚異的な頑張りを見せれば可能性がないわけではないという大混戦になった。

さらに言えば、現状ややリードしている顔ぶれも、貴景勝、大栄翔、阿炎、阿武咲、碧山……と離れて取るタイプが多く、非常に先が読みづらい展開。ここに豊昇龍、さらには若隆景の両関脇がどう絡んでいくか、というところが焦点になるが、この場所は優勝争いに関しては、明日からまた第2幕のスタート、という感じになりそうだ。

文=藤本泰祐

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