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2023-02-21

【連載 泣き笑いどすこい劇場】第14回「廻しにまつわる話」その4

平成17年春場所初日、新調の鮮やかな朱色の廻しを締めた雅山は、入れ込み過ぎて?送り出されてしまった

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力士が土俵に上がるとき、唯一、身につけることを許されているのが廻しです。
幕下以下は木綿製の黒廻し、十両以上は絹の繻子で色もカラフル、と地位によって違ってきますが、言わば、晴れの衣装ですね。
それだけに、力士たちの廻しに込める思いや、こだわりも十人十色。力士たちは廻しを締めて数々のドラマを演じてきました。
今回は廻しにまつわるエピソードを集めました。
※月刊『相撲』平成22年11月号から連載された「泣き笑いどすこい劇場」を一部編集。毎週火曜日に公開します。

燃え過ぎて

廻しも色によっては大変なことになる。平成17(2005)年春場所、雅山(元大関、現二子山親方)は見るも鮮やかな朱色の廻しで登場した。当時、雅山は前年の秋場所から4場所連続の関脇で、体調もすっかり元に戻って大関再昇進の意気盛んなとき。

「さあ、もう一踏ん張りだ」

と周囲の後押しもものすごく、これを締めたら、黙っていても燃え上がるはず、と二次的効果も願ってプレゼントされたもので、確かに血沸き、肉躍るような色の廻しだった。

もちろん、雅山もやる気満々。それが高じ過ぎて初日、土佐ノ海に送り出し、2日目、栃乃洋に引き落としで負けた。この決まり手を見れば、雅山の自爆ぶりが想像できる。そして、3日目、雅山はついに真新しい廻しの使用を断念。前の場所まで締めていた紫色の廻しに取り替えた。

「燃える色ということだったんだけど、燃え過ぎて燃え尽きました。こんな不甲斐ない成績じゃ、頂いた人に申し訳なくて。それにこの(紫色の)廻しでずっと勝ち越しているんで。でも、こんな形でせっかくもらった廻しを取り代えなくちゃいけないなんて、悔しいな」

と雅山は切歯扼腕していたが、いったん狂った歯車をもとに戻すのはなかなか難しい。この場所、雅山は5勝10敗と負け越し、大関取りも振り出しに戻った。

月刊『相撲』平成23年12月号掲載

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