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2023-03-01

ZERO1 3・5後楽園で引退となる、武骨な寝業師・太嘉文(たかふみ)が心境を吐露【週刊プロレス】

現役を引退する太嘉文(中央)

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プロレス総合学院を2期制として卒業後、WRESTLE-1で「タナカ岩石」のリングネームで活動し、団体の活動休止とともにフリーとなり、'20年8月にZERO1に入団。リングネームを本名の「太嘉文(たかふみ)」に変更し、バックボーンの柔術を武器とした関節技で武骨な闘いを繰り広げてきた太嘉文。突然の発表となった3・5後楽園での引退を前に、その心境が語られた。(聞き手・戸井猛道)

――プロレス引退を考えられるようになったのはいつからだったのでしょうか?

太嘉文 デビューしたときから「5年くらいできればいいんじゃないか」と思ってて、実際にWRESTLE-1で活動していく中でなかなかうまくいかない日々が続いたので、気持ちのどこかでは「自分はもういいんじゃないか」と思ってたんです。そしてWRESTLE-1がなくなるタイミングで「これで完全に辞めよう」と思ったんですけど、ZERO1で闘っていく中で「もう少し頑張ってみよう」という気持ちにもなったんですね。でもやっぱり、30歳になる前にそのときの状況を一度見てみようとあらためて考え直して。今の自分の現状を見たときに「もしかしたら今が次の道に進めるタイミングなんじゃないか」と。

――レスラーとしては若手時代は苦闘が続き、ようやく花が開き始めてきたという感もあります。

太嘉文 自分で言うのもなんですけど、そういう状態にある内に辞めるのもアリなんじゃないかなと。今回引退を発表してから「もったいない」という言葉をすごく聞くようになって、「意外と自分も必要とされてたんだな」って思えたし、自分が思う以上に「プロレスラー太嘉文」の可能性ってあったのかもしれないなって感じたんですけど、これも自分らしい選択なのかなと思っています。

――約6年半のキャリアを振り返ってみていかがですか?

太嘉文 やりきったような感じもありながら、自分の中でつかみかけていた可能性のようなものもあって。でも、それを成し遂げる前に辞めるという決断をしたことに後悔はないです。ひとつ良かったと思えたのは引退が武藤(敬司)さんの後になったことですね。武藤さんの付き人をやらせていただいて、あの人の背中を追ってきて。武藤さんの引退を聞いたときに、自分の中にも辞めるという選択肢があったので、先になる可能性も当然ありましたからね。

――思い出に残ってる試合などはありますか?

太嘉文 自分にはこれといったものってないんですよ。武藤さんがよく自分の試合のことを「作品」って呼んでいて、僕もそれを意識しながらやってきましたけど、自分が納得するような作品を作れたことはなかったですね。毎回試合が終わった後に遠目から見てみて、「何か物足りないな」とか「もっとこうしたら良かったんじゃないか」って。周りからの意見も聞きながら、プロレスって正解はないなっていつも思っていました。強いてひとつ挙げるなら、去年のZERO1両国の試合ですね。

――永田裕志選手、小島聡選手、タイガーマスク選手、高岩竜一選手との8人タッグマッチですね。

太嘉文 試合が終わった後にマイクで自分の主張を語りかけて、新日本プロレスの永田さんがその気持ちに対して言葉を返してくれたということが印象に残ってます。試合というよりもあくまでもマイクの部分ですけどね。

――先に栃木プロレスでの卒業大会がありましたが、残るメンバーに対しては?

太嘉文 先に辞める身なので自分が言えることはないですけど、最後のパートナーだった松永準也を始め、彼らには僕はしっかりバトンを渡したつもりでいるので。彼らはものすごい可能性にあふれてると思うので、そこを信じたいし、その可能性をどんどん広げていってもらいたいですね。

――今後の進路については固まっているのでしょうか?

太嘉文 まだハッキリと決まっているわけではないんですけど、自分の中でこれをやりたいとか、この道に進んでみたいというものはあります。今の時代、プロレスラーになる敷居が低くなってると思われがちですけど、「選ばれた人しかなれない」という部分はいつの時代も変わらないと思うので。その中の1人になれたというのは僕の中での財産です。プロレス総合学院の2期生として卒業したときに、近藤修司さんに「オマエは絶対にデビューは無理だ」と言われてたくらいで。そんな自分でもなんとか6年半やってこれたことは、どこかで絶対大きな力になると思います。

――3・5後楽園での引退試合の相手は佐藤嗣崇選手と組んで、近藤修司選手&菅原拓也選手との対戦になりました。

太嘉文 僕の中でこのメンバーは本当に大きく関わってきた人たちで。パートナーの佐藤嗣崇は僕の一番最初の後輩で、お互いにWRESTLE-1から出た後にZERO1で再び巡り合った仲ですし、菅原さんは同じ団体の人間として最後に一番やり合ってきた相手で、僕自身すごく菅原さんのことを意識してやってきて。それに近藤さんと菅原さんは闘龍門の同期ですからね。僕と佐藤からすれば近藤さんはコーチで、プロレスのプの字から基礎を全部教えていただいた相手なので。最後にその4人で終われるというのは、点から線が最後に全部つながったなって。

――当日はファンにどんなものを見てもらいたいですか?

太嘉文 シンプルに僕の最後の勇姿を見てもらいたいと思います。本当にプロレスを通して今日まで生きてきたので、その生き様の集大成を見届けていただければ、僕はそれだけで十分です。

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