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2023-03-19

【相撲編集部が選ぶ春場所8日目の一番】規格外の魅力! 新入幕北青鵬が豪快な波離間投げ決める

この廻しのつかみ方! 北青鵬はここから琴恵光を持ち上げ、土俵の外へと投げ捨てた

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北青鵬(波離間投げ)琴恵光

「(両ハズのいい形で攻め)自分の持ち味は出せたんですけど、土俵際で残られてしまって……」と、まさかの逆転を食らってしまった琴恵光もビックリだ。
 
新入幕の北青鵬が、幕内ではめったに見られない「波離間投げ」を決めた。これは、多くは攻められた時に土俵際で出る技だが、両上手を相手の肩ごしに縦ミツ近くの深い位置でつかんで抜きあげるように持ち上げ、自分の体を反って振り回すようにそのまま背中側へ投げ捨てる、豪快な技だ。幕内の取組でこの技が出たのは、令和3年7月場所の初日に一山本が石浦相手に決めて以来のこと。
 
立ち合いからの相撲の流れは、完全に琴恵光だった。相手に廻しをつかまれないよう、両ハズで距離を取りながら押していく。が、土俵際、引っ張り込まれたか右を差す形になってしまった。何とか捕まえようとした北青鵬の、ここからの上手の取り方がすごかった。右手を、琴恵光から見て頭の右側から回し、縦ミツより右側の横ミツをまずつかんだのだ。これを軸に体を入れ替えつつ、左手でも横ミツをつかみ、そのまま琴恵光を持ち上げて投げ捨てた。

波離間投げは、身長が高く、懐の深い力士が、体格差のある小柄で軽量の力士に決めるというのがほとんどで、この日も身長204センチの北青鵬が、その懐の深さを生かして決めたわけだが、琴恵光はそうは言っても身長176センチ。その相手に決めてしまえる規格外のスケールには、驚くばかりだ。

新入幕の今場所、北青鵬はこれで5勝目と好調だ。身長が高いため、やや立ち腰というきらいはある力士だが、今場所序盤は金峰山や水戸龍相手に右四つからのよく腰の下りた寄りを見せ初日から4連勝。そのあと、逸ノ城、大翔鵬と、体の大きい相四つの相手に、いつもの調子で引っ張り込んでしまって敗れるなど3連敗し、少しブレーキがかかったが、この日の豪快な勝利でまた乗っていけるだろう。この日証明されたように、その懐の深さは幕内力士にとっても難攻不落で、立ち腰にならず、ヒザを曲げて取ることさえできれば幕内下位なら大勝ちも可能なポテンシャルはある。師匠の宮城野親方(元横綱白鵬)は、同じく身長204センチだった横綱曙のような突きを身に付けることも期待しているが、それを身に付けた暁には三役、さらに上も期待できるスケール感の力士だ。
 
今場所は、同時に新入幕した金峰山も力強い相撲を見せており6勝2敗。そろって幕内前半の土俵に強烈な新風を吹かせている。ともに二ケタ勝利に乗せる可能性も十分あり、後半戦は熱い敢闘賞争いが展開されそうで、楽しみが膨らむ。
 
この日、優勝争いのほうは、翠富士が自分より72キロも重い碧山を寄り切って全勝を守り、ストレートで勝ち越し。1敗組は大栄翔は阿炎に押し勝ったが髙安は平戸海にうまく取られて2敗目。全勝1人、1敗1人、2敗5人(琴ノ若、正代、遠藤、髙安、金峰山)で折り返す形に。翠富士の対上位戦はとりあえず10日目以降になりそうだが、またまた混戦となっていくのかどうか。とにかく見通しが難しいことだけは間違いないようだ。

文=藤本泰祐

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