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2023-03-20

【相撲編集部が選ぶ春場所9日目の一番】新十両落合、堂々勝ち越し。豪華キャストの十両優勝争いがますます熱く

白鷹山に右足を飛ばして揺さぶりをかけた直後、上手出し投げを放つ落合。この辺の呼吸は、入門2場所目とは思えないうまさだ

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落合(送り出し)白鷹山

落ち着いている。これが新十両、さらに言えば入門から2場所目の力士の相撲だろうか。この日も相撲勘のよさをキラリと見せる取り口を見せ、落合が勝ち越しを決めた。
 
今場所から1場所に15番取ることになった落合にとって、初めての8勝目を懸けた給金相撲は、西十両9枚目の白鷹山との対戦。突き押し得意の白鷹山は、今場所は腕もよく伸び、6勝2敗と好調だ。
 
立ち合い、落合は頭からいったが、突き押しが得意で、体格的にも勝る白鷹山に押し込まれる形になった。だが落合は押されながらも上体を起こされることはなく、相手と密着した状態を保って左を差す。土俵際には詰まったが、右上手を取って四つに持ち込み、土俵中央へ回り込んだ。
 
そして、四つに持ち込んだからといって、体の大きな相手に不十分なまま勝負をかけてすぐ攻めないところがこの若武者の落ち着きだ。相手が右から絞って左下手を嫌ってきている間は攻め合いながら我慢する。
 
そして、やや膠着状態になるかと思われたそのとき。攻防の逆サイドの右から足を飛ばして揺さぶると、相手の左足が引かれるのと同時に右から上手出し投げ。そのまま後ろに回って送り出した。
 
落合は8日目の志摩ノ海戦でも、モロ差しを挟みつけられ、やや膠着するかと思われた状況から、左足を飛ばしたのをきっかけに肩透かしを決めているが、こういう、相手の予測しない方向から揺さぶって次の技につなげる呼吸が実にうまい。とても入門2場所目とは思えないゆえんだ。

ただ本人は、白鷹山戦後、「立ち合いから押していくっていうのを意識しているんですけど。最悪の相撲だった。まだまだ場所でうまくいかないんで、稽古場で鍛えていきたい」と反省の弁。それでも「まずどういう体勢になっても慌てない、落ち着いていくのを意識して取っている」ということが、しっかりと勝ち星につながっているようだ。

これで十両優勝争いでも、朝乃山、逸ノ城の幕内優勝経験者と並んでトップを並走。ここに2敗で地元大阪の声援を受ける豪ノ山が続き、十両の優勝争いは幕内の優勝争いに勝るとも劣らぬ?豪華キャストの熱い争いになっているが、落合がこのまま優勝争いに残っていくようなら、終盤戦には朝乃山や逸ノ城との直接対決が組まれる可能性も浮上する。

「(いつごろまでに勝ち越したかったとか)そういう気持ちは一切ないです。目標というのはそんなになくて、明日やることをやる、という、そういう気持ちです」と言う落合。もちろん本当の目標はまだまだ先にあり、ここで必要以上に一喜一憂することもない。チャレンジャー精神のみを携えてぶつかっていけば、幕内優勝経験者にひと泡吹かせることもない話ではなく、終盤戦へ向け、楽しみは膨らむばかりだ。
 
この日、幕内の優勝争いのほうは、全勝の翠富士、1敗の大栄翔とも快勝して先頭グループの状況は変わらず。2敗同士のサバイバル戦で正代に勝った琴ノ若のほか、遠藤、髙安が2敗で続く形になった。このあと、翠富士を他の力士がどのラインまで引きずり降ろすことができるかが焦点になる。

文=藤本泰祐

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