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2023-04-18

【連載 泣き笑いどすこい劇場】第16回「懸賞」その1 

“懸賞王”の名を欲しいままにした朝青龍

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色とりどりの懸賞の垂れ幕が土俵上をゆっくりと回る景色は大相撲ならではと言っていいでしょう。
相次ぐ不祥事で一時は激減しましたが、平成24年初場所初日は90本もかかるなど、かなり戻ってきました。勝ち力士が手刀を切って受け取る懸賞袋の中味は1万円のピン札3枚。
力士たちにとってはありがたい場所中の臨時収入であり、何よりの応援歌です。
使い道も十人十色で、さまざまな人情ドラマも生まれます。
そんな懸賞にまつわるエピソードを集めました。
※月刊『相撲』平成22年11月号から連載された「泣き笑いどすこい劇場」を一部編集。毎週火曜日に公開します。

朝青龍の憧れの人
 
早く幕内に上がりたい、という思いと、早く懸賞を取れるような力士になりたい、という思いは同義語と言っていい。基本的に懸賞は幕内の取組に懸かるものだから。この夢が叶い、初めて懸賞を取ったときの喜びはひとしお。

横綱朝青龍は入門する前の明徳義塾高時代、机の前に大相撲カレンダーを飾り、その中にひときわ、お気に入りの幕内力士がいた。筋肉質で男前の時津海だった。
 
後年、何度も“懸賞王”になった朝青龍だが、初の懸賞が、それも1本懸かったのは新入幕の平成13(2001)年初場所9日目、奇しくも憧れの時津海戦だった。
 
何かが懸かったときの勝負強さには定評のあった朝青龍だが、このときも本領を発揮して突きで先手を取って寄り切り、見事懸賞をゲットした。このときの懸賞袋は人生の記念として後生大事に取っており、平成20年10月5日の時津海の引退相撲のとき、

「自分の大事な宝物ですよ」
 
と話している。不本意な形で引退したが、いまでもこの懸賞袋は無事だろうか。

月刊『相撲』平成24年2月号掲載

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