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2023-04-21

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第8回「食に賭ける執念」その3

自宅で料理をする栃ノ心

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一年を通じてなにがあっても、いや、なにかがあったときこそ、めげずにもりもり食うヤツは最後に笑います。
究極の成功の秘訣、勝利の原動力は食うことであります。これに尽きます。とりわけ、体力勝負の力士はそうです。
だから、食うことに人一倍こだわり、神経を使い、その労力たるや、たいへんなものです。
そんな力士たちの食うことに賭けた執念のエピソードを紹介しましょう。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

料理でリフレッシュ

力士たちは朝、と言っても昼近くと夜の1日2食制で、関取ともなると朝は稽古や風呂を終えたあと、部屋でちゃんこ番が作ったものを食べるが、夜は外食か、自宅で奥さんの作った愛妻料理を食べることが多い。もっとも、これは結婚し、家庭を持っている関取のことで、独身か、結婚していても奥さんが実家などに帰っていないときなどは自分で作って食べる。いわゆる自炊だ。
 
下積み時代にちゃんこ番で腕を磨いたこともあって、この料理作りを得意にしている関取はとても多い。栃ノ心もそのひとりで、

「料理を作っているとリフレッシュできる」
 
と好んでキッチンに立つ。
 
大関取りに挑んでいた平成30(2018)年夏場所14日目の夜の食事も、ジョージア風の肉鍋を自分で作って食べた。この肉鍋は栃ノ心の得意料理の一つで、

「トマトベースのスープに、牛肉、豚肉など、約2キロを豪快に入れたもので、コイツを食べると元気が出るんだよ」
 
と自慢している。
 
ちなみに、栃ノ心の家の冷蔵庫には、場所前に買い込んだラム、牛、豚肉など10キロの肉がぎっしり詰め込んであるそうで、それらをさばくマイ包丁も6本持っている。

「そのうちの3本はテレビショッピングで買った。見ていると、ついつい買いたくなるんだよ」
 
と頭をかいていたが、この特製肉鍋のおかげで、翌日の千秋楽も西前頭5枚目の勢を寄り切って文句なしの13勝目を挙げ、場所後、晴れて大関に昇進した。あの当時に比べると、最近はその包丁の切れ味も、ちょっと鈍ってきているじゃないでしょうか。気になる。

月刊『相撲』令和元年11月号掲載

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