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2023-04-30

ロックダウンでプロレスラーに…“アイアン・メイデンの姪”レイン・レイバークーセンに聞く【週刊プロレス】

5・3横浜へ赤井との対戦を重ねたレイン

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1975年にロンドンで結成され、メンバーチェンジを経ながら現在も活動を続けている世界的ヘビーメタルバンド、アイアン・メイデン。メジャーデビューからサードアルバムまで参加したドラマー、クライブ・バーの姪がプロレスラーとしてDDTにやってきた。ロンドン北東部のウォルサムストウで生まれたレイン・レイバークーセンは、1998年生まれの25歳。10年前に56歳でクライブ・バーが他界するも、幼少の頃からアイアン・メイデンをはじめとするロックミュージックに親しんできた。と同時にプロレスへの興味も大きく、新型コロナウイルス禍のロックダウンでレスラーになることを決意。キャリア1年半にして、初来日が実現したのである。そこで本欄では、レイン・レイバークーセンにインタビュー。自身の生い立ちから5・3横浜武道館における赤井沙希との一騎打ちまで、話を聞いてみた。(記事提供:DDT/聞き手:新井宏)

 

 

――叔父が世界的に有名なハードロックバンド、アイアン・メイデンのメンバー、クライブ・バーだと知ったのは?

「叔父が亡くなったのがちょうど10年前。正確にはおぼえていないんだけど、叔父が有名なバンドのメンバーと知ったのは12歳、13歳の頃かな。私の記憶にあるのは、家でよくアイアン・メイデンの曲がかかっていて、ある日、『あなたの叔父さんがドラムやってるのよ』と聞いてすごく驚いたの。すごくクールだと思って、誇らしかったわ。ミドルティーンって、ロックミュージックに夢中になる世代でしょ。だからすごくエキサイトした。ただ、そのとき叔父はすでに闘病中で、車いすの生活だった。会いに行ったことはあるんだけど、話はできなかった。それでも、叔父は、私が姪であることは認識してくれたみたい」

――家ではロックをよく聞いていたのですか。

「アイアン・メイデン、アリス・クーパー、モトリー・クルーをよく聞いていたわ。これって全部、兄の影響。8歳上の兄がいるんだけど、彼がロックにハマってて、私も自然と聞くようになったの。その中で私の親戚がいるなんて、なんてクールなの!(笑)。ただ、リアルタイムでなかったことが残念。もっと早く生まれてロックへの興味が芽生えていたらいいのにって思ったわ。それが悲しい」

――叔父であるクライブ・バーについてもっと知りたかった?

「イエス。彼は初期の頃からのメンバーで3枚のアルバムに関わった。それもあとから聞いた話。兄は私よりも知ってるし。でも、叔母さんのミミが叔父のゴールドディスクや衣装、楽器を保管してる。叔母さんからも直接はあまり聞いていないので、バンドについてもっと聞きたいと思うわ。彼女はいまもスティーブ・ハリスのバンドをサポートしてるの。叔父の闘病中にはいろいろ世話になったから、いまでもメンバーとはつながりがあるのよ」

――アイアン・メイデンからの影響はありますか。

「100パーセント! 髪型からして影響を受けてるでしょ(笑)。それこそ、お隣さんの女の子がこの髪型で大胆に変身したって感じ。

髪型だけじゃなく、スタイル、服装にも影響を受けてる。いままさにアイアン・メイデンのTシャツを着てるんだけど、プロレスの試合でも、ふだんからも、このような格好でいるのよ」

――24時間365日、影響を受けているということですね。

「そう(笑)。ドクター・マーチンのブーツだったり、パンツもジャケットも聞いてきた音楽の影響を受けてる。アイアン・メイデンだけじゃなく、アリス・クーパーやいろんなロックバンドの影響を受けてるわ。やっぱりこれも兄の影響ね。兄と一緒に聴くのが日常になってて、たとえば学校へ行く前、キッスのアルバムを聴きながら歯を磨いて顔を洗って、それから登校するとか(笑)。友だちはジャスティン・ビーバーが好きでも、私はアイアン・メイデン唄ってたし(笑)」

――クライブ・バーの親戚ということを友人には言っていたのですか。

「すこしだけね。私がアイアン・メイデンを知った頃、自分たちの年代には80年代のロックミュージックはちょっと過激。ライブにも出かけたんだけど、私が会場内で一番年下だったみたい(笑)。私が学校で唄ってる曲は、みんな知らなかった。私は80年代の曲をおもに唄ってたの。ガンズ・アンド・ローゼズとか。『クールね』とは言われたけど、みんなわかってなかった(笑)」

――なるほど。ところで、レイン選手は現在プロレスラーです。いつどのようにしてプロレスを知ったのですか。

「これもまた兄の影響。兄の影響がすごく大きい。テレビでよくWWEのプロレスを一緒に見てた。スマックダウンやロウを小さい頃からよく見ていたの。ロンドンでのライブイベントにも行ったわ」

――家の中ではロックミュージックとWWEのプロレスに囲まれていたと。

「そうなの! テレビの画面がプロレスで、ロックミュージックが部屋でかかってるみたいな環境(笑)」

――レスラーになろうとしたきっかけは?

「パフォーマーになりたかった。ダンスや唄、演技をミュージカルシアターで勉強していたのよ。でもCOVID―19(新型コロナウイルス)でロックダウンになり、業界が大きなダメージを受けた。仕事がなくなり、楽しみもなくなった。エンタメ業界が多大なダメージを被ったわ。ロックダウンによって描いていた未来が大きく崩れてしまったの。でも、パフォーマンスしたい気持ちに変わりはない。それでも現実はロックダウン下で仕事を得るのは難しい。そこで考えたのがプロレス。人生、やりたいことをやろうと。もしもロックダウンがなかったらレスラーになっていなかったかもしれない。この時期、人生についていろいろ考えたわ。ダンスには運動神経が必要でしょ。プロレスにももちろん運動神経が必要。そこは共通してるから、もしかしたら自分にもできるんじゃないかなと思って、活動制限が緩和されたらやろうと決めたの。それでトレーニングセッションに出かけて、だんだん練習量を増やしていったのよ」

――どこでトレーニングを積んだのですか。

「北ロンドンのエンフィールドにあるハッスル・レスリングスクール。NXT UKのGMをつとめていたシッド・スカーラのコーチを受けたわ。トレーニングを開始したのが、2021年6月2日だったわね」

――デビューは?

「デビューもハッスル・レスリング。21年10月でエヴァ・ホワイトとのシングルマッチ。デビュー戦はもちろん負けたけど、いまは巡り巡ってハッスル・レスリングのチャンピオンよ」

――クライブ・バーの姪としてリングに上がっているのでしょうか。

「知られてはいるけれど、大々的にアナウンスはしていない。クライブ・バーの姪と言われるのは構わないけど、必ずしもそこに頼ってはいないから。確かに、私には“メイデン・オブ・メタル”のキャッチフレーズもあるし、リング内外で影響を受けてる。ただ、クライブ・バーの姪であることを全面的に出してはいない。レスリングとは別だから。リングではクライブ・バーの姪ではなく、レイン・レイバークーセンとして闘いたい。これでもイギリスではベビーフェースでやってるのよ(笑)」

――ロックとプロレスに共通点はありますか。

「100パーセント! ロック好きなプロレスファンって多いと思う。とくにイギリスではその傾向が強いわ。イギリスのプロレスファンはだいたいロックも好きだと思う。その傾向はサッカーファンより顕著かも。プロレスの方がインディペンデント的。ロックも音楽のジャンルからしたらインディペンデント的でしょ。テイラー・スウィフト、ドレイクとはまた違うの。ロックもプロレスも反抗的なところがある。そこに親和性があると思うの」

――なるほど。約1年半のキャリアの中で、これまでどこで試合をしてきましたか。

「イギリス内ではイングランド、ウェールズ。オーストリアでも試合をしたわ。6月にはイタリア、10月にはキプロスで試合をする予定」

――今回が初来日ですが、日本はどうですか。

「クール! ジャパンはクレイジー(笑)。新宿のネオンがきれいすぎる。自販機からホットドリンクが出てくる(笑)。コールドとホットが同じマシンから出てくるなんてウソみたい。それに、トイレのシートがあったかくて驚いた。イギリスにはないわ。シートがあったかいトイレって、日本に来た特権みたいね(笑)。アイ・ラブ・イット! それに日本のステーキも好き。イギリスのステーキとは違うわ。(松永光弘さんの)デンジャーステーキに行ったの。人生最高のステーキが食べられたわ。帰国したら食べられないかと思うと、もうすでに寂しい(笑)」

――5・3横浜では赤井沙希選手とシングルで対戦します。すでに6人タッグで2度前哨戦(4・22春日&4・23鹿児島。4月25日取材)をおこなっていますが、赤井選手の印象は?

「彼女はグレート。マジ、グレート。打撃が強い。日本のレスラーは打撃が強烈とわかってはいたけれど、それでも彼女の打撃は強いと思う。それに、あんなに背が高いとは思わなかった。私より背が高いから、どんな化学反応が起こるのか、いまから楽しみ。いい試合になると思うわ。シングルできるのが楽しみなの。DDTヨコハマ、いまからエキサイトしてる」

――現在、3つのベルトを保持しているそうですね。

「イエス。ハッスル王座は男女混合。22年11月に取って、次の防衛戦は男子レスラーでDDTから帰国後すぐ。ハッスルのベルトは4WAYマッチで取ったの。ローラ・ディ・マテオが王者で、男女混合試合。勝ったときは、うれしくて泣いたわ。EVEタッグ王座はローラ・ディ・マテオとのチームで取ったの。マテオはハッスルで一緒にトレーニングした仲だし、組んでも闘っても尊敬してる。メイデン・オブ・ケイオス王座はPWCの女子王座」

――メイデンは偶然ですか。それともタイトル名にメイデンとあったから意識して狙ったとか?

「偶然ね(笑)。ただ、アピールするときにはネタにさせてもらったわ。Maiden of metal becomes maiden of chaos.メイデン・オブ・メタルがメイデン・オブ・ケイオス王者になるってね。もしかしたらそれが効いて取れたのかも(笑)。PWCはブリストルのプロモーション。いろんな選手が集まってくる、とても素晴らしいプロモーションよ」

――将来は?

「DDTも含め世界中で試合をしたい。もうすでに、日本でまた試合がしたいと思ってるわ。小さい頃から憧れていたWWEにも上がりたい。ミュージシャン? ピアノはやってたことあるけど、ミュージシャンになるには忍耐が足りないわ(笑)。兄はドラムをやったけど、私にはプロレスの方が合ってると思うの。Make it Rayne! なにかが起こるわよ!」

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