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2023-07-13

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所5日目の一番】錦木が若元春も撃破。1横綱と大関取りトリオを総ナメし、先場所から13連勝!

若元春も一方的に寄り切って5連勝とした錦木。当たるところ敵なしのこの勢いはどこまで続く?

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錦木(寄り切り)若元春

錦木の勢いが止まらない。この日は関脇最後の砦の若元春を一方的に攻めて寄り切った。これで2日目の横綱照ノ富士に続いて、豊昇龍、大栄翔、若元春と、今場所話題の中心の「大関取りトリオ」も総ナメだ。先場所中日から続いている連勝も13まで伸ばした。
 
この日の相手の若元春は、錦木とは左の相四つ。ともに怪力自慢で、攻められたときにも腰を入れて相手を左右に振って逆転する力があるところも共通しており、取組前は「さて、左四つがっぷりでどちらの力が上回るか」という力相撲が見られるかと思っていたが、そうはならなかった。
 
おそらく、どちらも「最終的に左四つになるにせよ、どうすれば自分有利の形になれるか」と作戦を練ったのであろう、立ち合いは2人とも、いつもの形とは違っていた。錦木は左を差しにいくのではなく、下から廻しを狙って立ち、若元春はまず突いて相手の上体を起こす作戦に出た。

「向こうの立ち合いはいつもと違って、手から来た。(自分の左廻しは)特に狙ったわけではなく、右でもよかった。取れたほうを取ろうと思って」と錦木が振り返った、この立ち合いのぶつかり合いは、左で廻しに手を掛けた錦木が上回る形になった。廻しに手を掛けられた若元春の突きは不発。右手で上から押さえて廻しを切ろうとしたが、それも果たせず、体が伸びて、一気に運ばれてしまった。腰を浮かされてしまっては土俵際の小手投げも打てず。錦木は左の腕と肩で押すようにして黒房下に寄り切った。若元春は2敗となり、今場所後の大関取りに関しては大きく後退。

「ビックリしました。一気に行けたので」と錦木。これで今場所は初日から5連勝。しかも、休場の貴景勝をのぞいて番付上位5人に対して5勝(霧島には不戦勝)というのだから、まさにその勢いはとどまるところを知らず。「自分でもびっくりですね。こんなに勝っていいのかと思います」と本人も驚くが、どこまで勝ち続けることができるか、という興味とともに、優勝争いの上でも何とも楽しみな存在となってきた。
 
もちろん、過去の実績としては、幕内上位総当たりの地位での最高成績が先場所の9勝であり、今年8月には33歳になるベテランだけに、暑い名古屋で後半戦のスタミナがどうか、という問題もあって、単純に「番付上位に勝ってきたから、これから当たる番付同等あるいは下位の力士に対しては楽勝」とは言えないが、今場所、上位陣にも当たり負けしないだけの圧力を持ち、かつ、残りの対戦相手に強敵の数が少ないことは事実。コツコツと重ねてきた稽古の貯金もあるはずだけに「稽古は休んでも、(こっちは)休まないですよ」と笑う、“いも焼酎パワー”で疲れを吹き飛ばし、行けるところまで快進撃を続けてもらいたいものだ。
 
なおこの日、新大関の霧島は引いたところを翔猿についてこられて土。故障の影響を感じさせる負け方ではなかったが、「少しでも早く決着をつけたい」という意識は出ているようにも見えた。これで早い時点で勝ち越しへのメドを立てるのはけっこう難しい星勘定になっただけに、その辺りで焦りが出てこなければいいが……。翔猿は横綱と大関からの殊勲の星を並べての2勝目となった。
 
5日目を終わり、全勝は錦木と、髙安、豪ノ山の平幕3人。豊昇龍、大栄翔の関脇2人と、平幕の玉鷲、北勝富士、湘南乃海、遠藤が1敗で続いており、若手、ベテラン取り交ぜた優勝争いの行方は、現時点ではまったく見えない。

文=藤本泰祐

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