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2023-09-13

変形性ひざ関節症教室 第23回 変形性ひざ関節症の診断① 問診・診察から診断までの流れ

ひざは健康寿命延伸の要の関節。ところが、中高年になると、ひざ関節の軟骨がすり減り、「ひざが痛い」「水がたまる」「痛くて長く歩けない」「ひざか変形した」などといった症状に悩む方が増えてきます。今回は、医療機関を受診したときの診察から診断までの流れについて、ひざの専門医・田代俊之ドクターが説明していきます。

問診と診察、画像検査で判断

 ひざが痛くて整形外科を受診すると、まずは医師による問診から始まります。

 問診では、いつごろから痛いか、痛めたきっかけはあるか、どのようなときに痛いかなどを詳しく聞きます。こうした自覚症状のほかに、仕事やスポーツ歴などの生活背景や、過去のケガなどの病歴をお話いただくことで、医師はどんな病気か、どれくらい進行しているかなどの見当をつけます。

 次に、診察(視診・触診)を行います。視診では脚の形や歩き方をみます。触診では実際に医師がひざを触ったり動かしたりして、圧痛点、関節可動域連載20回参照、水腫、ひざの関節不安定性連載21回参照)や筋力低下なども調べます。その次に、変形性ひざ関節症の診断に欠かせない画像検査、別の病気によるひざ痛を鑑別する血液検査関節液検査を行います。

 適切な治療を行うためには、正しい診断が必要です。そのためには、問診による患者さんの自覚症状と生活背景、診察・検査による客観的な情報に基づいて、総合的に判断することが大切です。


イラスト:庄司猛

画像検査で診断を確定する

 変形性ひざ関節症の診断には、レントゲン検査が欠かせません。ひざを正面や側面から撮影し、ひざ関節(大腿脛骨関節、膝蓋大腿関節)の状態を調べます。特に重要なのは、大腿骨と脛骨のすき間です。

 レントゲンは骨を写し出しますが、軟骨や半月板は写りません。関節のすき間があるかないかをみることによって、どれだけ軟骨が残っているかを知ることができます。レントゲン検査は必ず立った姿勢で行います。座った姿勢や寝た姿勢で撮影すると、軟骨がまったくなくても、関節にすき間ができしまうため、撮影時の姿勢に気をつけなくてはいけません。

 レントゲン検査では、関節の端に骨棘(骨のトゲ)などの骨の変形が生じているか、荷重部の骨が白くなる骨硬化(骨が異常に硬くなる)が起こっているかもわかります。

 さらに詳細を知りたいときはMRI検査を行います。MRIでは軟骨、半月板、靭帯、滑膜なども写し出されるので、軟骨欠損、半月損傷、靭帯損傷、骨挫傷などを調べることができます。

レントゲン検査では撮影姿勢が重要

  下の2つの画像は、同じ患者さんを同じときに姿勢を変えて撮影したレントゲン画像です。立った姿勢で撮影した左の画像は、大腿骨と脛骨が接触しており、軟骨はほとんどないと考えられます。一方、寝た姿勢で撮影した右の画像では、大腿骨と脛骨の間にすき間があります。つまり、レントゲン画像ですき間が認められたからといって、撮影時の姿勢が不適切であると、必ずしも軟骨が残っているとは判断できない、ということです。

 ひざが痛くて困っている患者さんが、診療所などで寝た姿勢でレントゲンを撮ったら、画像ではすき間があり、軟骨はまだ残っているから痛いのは気のせいだと説明され、その後、あまりに痛くて病院に行き、立った姿勢でレントゲンを撮ったらすき間がなく、これは軟骨がなくなっているから痛いでしょうねと医師に同情されることはよくある話です。


 画像:田代俊之

プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さん
JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長
1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。

この記事は、ベースボール・マガジン社の『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(田代俊之著、A5判、本体1,500円+税)からの転載です(一部加筆あり)。 Copyrightⓒ2022 BASEBALL MAGAZINE SHA. Co., Ltd. All rights reserved.

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