close

2020-04-21

【BBMカードコラム #2020−10 1stバージョン】シークレット版誕生秘話「あの日まいた種が、やっと花開きました」

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • line

BBMカードの編集担当が、担当アイテムへの愛情を綴るこの連載。今回は4月に発売したベースボールカードの王道、「1stバージョン」から。大人気のシークレット版がどうやって誕生したのか、その秘話をいま紐解きます。

2012年の企画書

 ずっとあたためてきた企画があった。

 その「BBM週刊ベースボールカード2012」と仮タイトルがつけられた企画書が最初に書かれたのは、2012年のこと。企画書をまとめていたパソコンのフォルダの中に、そのアイデアは実現を見ぬまま、長い間埋もれていた。

 企画説明には、こう書かれている。

 ……コンセプトは、「週刊ベースボール」(別冊、増刊含む)とBBMカードのコラボ。週ベのインタビュー企画で使用された写真をそのままカードにします。写真はインタビュー写真だけでは厳しいので、プレー写真もOK。むしろ担当編集者が選び抜いた写真なので、プレー写真でも迫力あるベストショットが使われています。もちろん、「週べ」ならではの特写やスナップショットも満載……

 2000年代前半にアメリカでヒットしたドンラス「STUDIO」からヒントを得て、インタビューカットを中心に雑誌で使用した写真のみで一つのアイテムを制作することで、ベースボール・マガジン社の強みを生かした、今までにないカード商品ができるのではないか。これが狙いだった。

 昨年の「2ndバージョン」や今年の「1stバージョン」を購入していただいた方は、もうお気きづきかもしれない。この「週刊ベースボール」のインタビュー写真をカードに使用するという企画は、提出された当時こそ実現されることはなかったが、アイデアの種として残り、時を経て、レギュラーカードのシークレット版やウルトラシークレット版という形で生かされることになったのだ。

埋もれていた企画書から、新しい企画が生まれた

BBMならではの強み

 レギュラーカードの写真バリエーションが流行りだしたのは、ここ10年くらいで、本家はトップス「シリーズ1」に封入された「ショートプリント」(SP)が始まりだという。カード番号や裏面の表記などは通常レギュラーと同じだが、表面の写真を変えて、封入のオッズも低くしたフォトバリエーションはコアなカードファンの人気を博した。

 この風潮は徐々に進化し、5年くらい前には「スーパーショートプリント」(SSP)も登場。こちらもレギュラーのフォトバリエーションだが、出現率はさらに低く、カートンから1枚程度。しかも使用する写真は、通常レギュラーとはまったく関係ないレジェンドOBに変わっていたりしていた。例えば、通常レギュラーは現役スター選手だが、同じカード番号のSSPは、ノーラン・ライアンが私服で自ら経営する牧場でのんびりしている写真が使われているという具合。このおおらかさはアメリカの国民性なのか、何とも自由に1枚のカードで楽しんでいたのだ。

 さらに、最近ではSSPよりレアな「ウルトラスーパーショートプリント」(USSP)なるものまで誕生している。出現率も数カートンに1枚なら、バリエーションで使用している写真はもはやOB選手ですらなく、MLBのコミッショナーや白熊(本物!)というレベル。フォトバリエーションを白熊にされてしまったメッツのピート・アロンソは昨季のナ・リーグ本塁打王なのだが、ニックネームが「polar bear」(北極熊)というのがウィットに富んだところだろう。日本人選手で例えるなら、松井秀喜のウルトラシークレット版が本物のゴジラ(本物というのはおかしい?)で、佐々木主浩が本物の大魔神(特撮映画の!)というような発想だろうか。ここまでくると、もはや何でもありなのである。

 カードは元々がホビーで、ファンが楽しむためのもの。メーカーサイドとしては、「こういうカードがあれば楽しいだろうな」というところから想像を巡らせることが大切で、そして、それを実現できる自由、もちろん多少の制限は当然あるが、それでも、ある程度の自由がカードには許されていると思う。

 今回、「1stバージョン」で制作したシークレット版やウルトラシークレット版に関して言えば、できる限り「週刊ベースボール」でのインタビュー記事で掲載したカットを使うことにした。この写真の強みはBBMならではで、海外メーカーにもなかなか真似できない部分だと思うからだ。

 例えば、ソフトバンク・千賀滉大と巨人・菅野智之のウルトラシークレット版は、ともにスーツ姿で白球を右手に持っている写真を使用したが、実はこの2枚、もとは「週刊ベースボール」2019年1月6・13日合併号の表紙で使われた2ショット写真なのである。ガッツのあるカードファンは、ぜひ2枚ともゲットして、並べて見てほしい。

 シークレット版やウルトラシークレット版以外でも、中日・根尾昂の通常レギュラーで使ったジャンピングスローも「週べ」の使用写真からの1枚だ。普段ならサングラスをしていて顔が見えにくいということで、レギュラーとしては選ばれにくい写真だが、構図の素晴らしさのほうを優先して、この写真を採用した。

No.035 千賀滉大(H) ウルトラシークレット版

No.166 菅野智之(G) ウルトラシークレット版

No.285 根尾 昂(D)

企画書には続きがある

「週刊ベースボールカード」の企画書には、続きがある。それは、直筆サインカードについて。その写真に「週べ」の表紙をそのまま使うというものだ。

 最近の「週べ」は、傾向として複数の選手の切り抜き写真を組み合わせてコラージュした表紙が多いのだが、昔は1人の選手が表紙を飾ることのほうが多かった。その表紙を使って、OB選手の直筆サインカードを制作したら、今までにない雰囲気のサインカードができるのではないか。そう考えたわけだ。

 すぐには難しいだろうけれど、いつか実現できるかもしれない。その時に備えて、1958年の創刊号(4月16日号)から2008年の2900号(11月10日号)までの表紙をスキャンした画像を密かに集めもした。

 今回のシークレット版やウルトラシークレット版のように、この“週べ直筆サインカード”がいつか、何かの商品に封入される日はくるのだろうか。そして将来、もし、この記事を読んでいる皆さんがそんなカードを目にする機会があったら、このコラムを思い出してください。

 その時は、あらためて報告します。

 あの日まいた種が、やっと花開きました。

このアイテムの詳細はこちら!

おすすめ記事

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事