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2023-09-14

【相撲編集部が選ぶ秋場所5日目の一番】全勝力士がバタバタと全滅。3大関は初めて全員白星でやや立て直す

朝乃山に食い下がり、外掛けで倒した霧島。これで白星が先行、ここからいい流れに持っていけるか

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霧島(外掛け)朝乃山

幕内前半から半ばにかけての取組で、きのうまでの全勝力士がバタバタと敗れた。まず熱海富士が、数少ない「大きさ勝ちできない相手」の剣翔に下手から取りに行くような相撲で先に上手をつかまれて寄り切られ土。金峰山は遠藤を突き放し切れず、我慢できずに引いたところにつけ込まれて敗れた。さらに阿武咲は豪ノ山に押し負けて突き出しで敗れ、5日目にして早くも幕内の全勝が消えた。
 
優勝争いが混迷の度を深める中、では上位の1敗力士が星を伸ばして有力候補に名乗りを上げるかといえば、そうもならない。北勝富士は明生に、琴ノ若は翔猿に敗れて2敗目。錦木も、これは番付どおりだが若元春に敗れて2敗に後退した。
 
波乱の空気が漂う土俵。しかし結び3番は、大関陣が締めた。霧島が朝乃山を外掛けで倒し、豊昇龍はまだやや硬い動きではあったが土俵際の逆転を許さず玉鷲を押し出し。貴景勝は苦手の阿炎に立ち合いモロ手突きでいく相撲で作戦勝ち、役力士ではただ一人1敗を守った。3大関がそろって勝つのは今場所初めてのことだ。
 
中でも執念が表れた相撲だったのが霧島だ。朝乃山には、先場所14日目、右の差し手から起こされ、すくい投げで転がされて負け越し決定の屈辱を味わわされている。故障があったとはいえ、正面からぶつかって負けたという内容だけに、ここは雪辱したいところだ。
 
立ち合い、低く立って右で突いた霧島は、サッと狙いの左上手。右四つで相手には上手を与えない形を作った。朝乃山が左を巻き替えにくるが許さず、逆に空間ができたのを利用して頭をつけて食い下がった。再度巻き替えにくるのも許さず、動きの中で相手に廻しを与えない体勢を作る。最後は前に出ていた朝乃山の右足に左外掛け。鮮やかに仰天させた。

「イナされて、横にされて、上手を取られて。大関の形にさせてしまった。中に入るつもりでいたけど、相手のほうが低いし、ダメでした」と朝乃山。「しっかり当たって、勝っても負けても次につながる相撲を取ろうと。廻しを絶対に離さないようにした」という霧島としては、狙い通りの会心の取り口だろう。
 
霧島はこれで3勝2敗と白星が1つ先行。まずはカド番脱出が先決だが、白星を重ねることで気持ちに余裕が出てくれば、力はあるだけに、一気にいい方向に転がり出す可能性もある。この日連敗を止めた豊昇龍も似た状況で、苦しみながらも白星を挙げることが気持ちを楽にし、好循環を生むはずだ。
 
5日目を終わり、1敗は貴景勝、豪ノ山、阿武咲、髙安、金峰山、御嶽海、熱海富士、剣翔の8人となった。状況的には1敗の中で番付上位の貴景勝が優位と言わざるを得ないが、では残りを星を落とさずにいけるか、と考えると、そこまでの安定感はまだ見えない気がする。現時点で2敗の地力のある力士、中でも貴景勝との対戦を残している力士には、まだまだチャンスがあるだろう。優勝ラインが12勝あたりなら、勢いに乗ればまだ多くの力士が到達可能だ。
 
貴景勝が半歩リードも、また中盤6日目から改めて「ヨーイ、ドン」というイメージの優勝争いになってきたか。

文=藤本泰祐

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