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2023-09-15

【相撲編集部が選ぶ秋場所6日目の一番】好調の若手を吹っ飛ばす! 髙安が1敗対決に圧勝しトップ並走継続

豪ノ山の腕をはね上げて横向きにし、一気に攻める髙安。この調子で悲願の初Vへ突き進めるか

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髙安(押し倒し)豪ノ山

5日目を終わって、大関貴景勝と7人の平幕力士が1敗で並走する形になったこの場所。6日目には平幕の1敗同士の対戦が2番あった。最初の御嶽海-熱海富士戦は、御嶽海の攻めを熱海富士が俵に足を乗せながらギリギリのところでかわして物言いがつくという際どい相撲が2番続き、取り直しの末に熱海富士に軍配が挙がるという大熱戦になったが、2番目の豪ノ山-髙安戦も違った意味ですごかった。ベテラン髙安が若手成長株の豪ノ山を一気の攻めで吹っ飛ばしたのだ。
 
先場所のこの対戦は、髙安の叩きを難なく残した豪ノ山が突き起こし、押し出しで完勝。髙安としては借りを返したい気持ちはあっただろう。
 
立ち合い、髙安は胸からいったが、得意のカチ上げではなく下から掬うような感じで当たった。すぐに右手を相手の脇にあてがい、ノド輪にきた腕をはね上げる。これで相手を横向きにし、そこからは体を浴びせるように出て、一気に押し倒した。

「今場所一番いい相撲」と言われ、「そうですね。考えた相撲が取れたので」と髙安。「(考えていたのは)引かないように。それぐらいですかね」と余裕のコメントだ。立ち合いからの圧力に定評のある若手に押し勝ち、まだまだそのパワーは健在であることを示した。
 
これで6日目を終わり、貴景勝、金峰山、熱海富士、剣翔と並んでトップ走者5人のうちの一人に名を連ねる。昨年は3月、9月、11月と3度の優勝争い。いずれもあとわずかのところでチャンスを逃したが、もちろん元大関でもあり、その実力は誰もが認めるところ。今年に入ってからは、右足のさまざまな部分を痛めるなど故障がちで、3月場所に10勝を挙げた以外は低調な成績に終わっていたが、今場所は「どこも痛いところがない。それが一番」と本人も語っており、稽古も積めて、本来の実力が出せる形になっているようだ。
 
この日は3大関がそれぞれに持ち味を出して連勝、さらに琴ノ若も好内容で錦木を降すなど、地力を持つ上位陣の動きがよくなってきた印象があり、優勝争いが番付どおりの争いに向かっていきそうな気配も漂ってきたが、近年は平幕で勝ち込んだ力士が終盤まで優勝争いに絡むケースは少なくなく、今場所は今のところ、その立場に一番近いのが髙安であることは間違いない。さらに今場所は上位でそれほど突出した存在がなく、今後の潰し合いが期待できるので、状況的に大チャンスであることもまた事実だ。
 
過去、優勝同点、あるいは次点となること7度。「今度こそ優勝」と思われることは何度もあったが、そのたびにあと一歩のところでチャンスを逃し続けている髙安。もしかしたら悲願を目の前にするとどうしても意識してしまうタチなのかもしれないが、ここは一つ、はやりに乗って、阪神ナインのごとく目の前にちらつく2文字を意識の外に追いやって頑張ってもらいたいもの。そうすれば、もしかしたら、悲願の「アレ」が手に入るかもしれない。

文=藤本泰祐

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