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2023-09-18

さよなら、私のアイスリボン――20歳の女子レスラー、朝陽が語るアイスリボン退団とアクトレスガールズ完全移籍

アイスリボンを退団し、アクトレスガールズに移籍した朝陽

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アイスリボンに所属していた二十歳の女子プロレスラー、朝陽が9月1日付けで退団。4月より“仮移籍”していたアクトレスガールズに完全移籍した。 

6年間所属したハッピーのリング。「アイスを辞める時はプロレスを辞める時」、こうまで語っていた朝陽は何を思い、退団、そして移籍を決めたのか。古巣への複雑な思い、新天地への意欲、ファンへの感謝、そして未来――。

2021年にプロレス団体としての活動を止め、リングを用いたエンターテインメント・パフォーマンス集団となったアクトレスガールズへ闘いの場を移した朝陽に、おそらく最後になるであろうインタビューをおこなった。
アイスリボン所属として最後の聖地出場となった3・19後楽園ホール大会
――中学3年生でデビューしたアイスリボン、間もなく21歳になろうかという9月に退団。仮移籍中だったアクトレスガールズに完全移籍となりました。

朝陽 プロサーに通い始めたのが中学1年。好きになったのは小学生の頃だったかな、小4。興味を持ち始めてから10年で移籍。本来あるべきだったアイス×アクトレスの交流戦をする約束を朝陽だけが守りに行ったのが仮移籍期間だったのかなと感じます。今回も移籍という言葉が先にいってますけど、私のなかではアイスリボン退団ありきの移籍なので。大きな決断、覚悟、希望をもってのことです。

――アイス退団はそれぐらい大きなものだったと?

朝陽 はい。以前、週プロさんのインタビューでも言ったと思うんですけど、アイスを辞めるときはプロレスを辞める時だって。実際、ずっとそういう気持ちだったし。だから、いまアイス退団を受け入れている自分に驚いてもいて。

――大きな気持ちの変化があったと。

朝陽 はい。アイスに戻ってもしょうがないなっていうのが一番ですかね。戻ったところで居場所がないと思うし、朝陽を戻そうという気持ちも、戻ってきてほしいという努力っていったら変だけど、そういうのは何もなかったので。余計に戻る必要はないかなと思ったので。

――引き留めがなかったのは、朝陽さんの気持ちが完全に前を向いていたのを周囲も感じていたのでは?

朝陽 それもあるかもしれないですね。でも、私、話し合いの場にすら立ち会ってないんですよ。

――完全移籍に関する話し合いも場に?

朝陽 はい。社長(アイスリボン佐藤肇社長)と坂口さん(アクトレスガールズ坂口敬二代表)が8月18日に話し合いをして、それ(移籍)を決定事項として知らされたのが8月の終わりでした。確かに私はアイスに戻るつもりなかったです。でも、気持ちも聞いてもらえないんだって。あ、私ってそんなものだったんだ、私のアイスリボンはこんな簡単に終わっちゃうんだって。それでアイスへの未練と退路は断ちました。

――なるほど。

朝陽 いろんな事情があったんだと思います、知らんけど。さくらさん時代からアイスリボンが好きだったから。さみしいというか、むなしいというか…。ただ、9・5新木場公演で試合をして吹っ切れました。

――未練はない?

朝陽 ちょっとはありましたけど、もう吹っ切れたから。だから未練はないですね、やり残したこともないです。

――アイスリボンの最高峰王座「ICE×∞」のベルトを取りたかったとかは?

朝陽 アイスリボンの朝陽としてベルト姿をお客さんに見せられなかったのは残念だったけど、いまのアイスのベルトに私は価値を感じてないので。まぁ団体内でベルトを巻く立場になれなかったんだな、とだけ思っています。
時に強い口調も飛びだした朝陽
――アイス時代、一番思い出に残っている試合は?

朝陽 一番はデビュー戦ですね。ファン時代、売店にうかがわせて頂いていた豊田真奈美さんに巡り巡ってデビュー戦の相手をしていただくことになって、最初のリングの上から見る景色、最後の(豊田が放った)ムーンサルトプレスの光景はずっと心に刻まれています。

 あとは(春輝)つくしさんのICE×∞に挑戦した横浜武道館大会(22年5月5日)かな。プロレスでハッピーの意味を理解して、心からプロレスでハッピーと言えた最初で最後の試合は、つくしさんとのタイトル戦だったと思います。

――心からのハッピーを。

朝陽 はい。朝陽以上のアイスリボンへの愛があった選手はいないと思います。これだけアイス愛とプロレス愛がある選手、いまいますか? いないと思いますよ。少なくともアイスにはもう出てこないと思う。それぐらい、私はアイスリボンが好きだったから。

――そういう朝陽さんがアイスリボンを離れるという選択肢を選んだわけですね。

朝陽 アイスは後悔すればいいんじゃないですか、手放したことを(笑)。もう私がアイスリボンに出ることはないと思うから。万が一、交流が生まれたとしても朝陽は基本的には出たくないですね。

――後ろ髪をひかれる思いもないですか?

朝陽 う~ん…あ、(しのせ)愛梨紗がデビュー戦でケガをしたじゃないですか。愛梨紗が欠場中に人がドンドン辞めていくなかで「朝陽さんはアイスリボンにいますよね?」って言われて、その当時はアクトレスとアイスの交流があると思っていたから「私はいるよ。愛梨紗が復帰するまで待ってるよ」って約束したことがあって。愛梨紗との約束を守れなかったことだけは心残りかもしれません。

――アイスリボンの情報とか耳に入ってきませんか?

 朝陽 仮移籍の時は、まだ所属してるっていうのもあって情報を見たり、気にしてましたけどね。映画プロジェクトとかやってますよね。

――2008年の第1回、2012年の第2回に続く、11年ぶり3度目のプロジェクトになります。

朝陽 時代が令和になって、10年以上ぶりに映画プロジェクトやってどういう結果が出るんだろう、というか、10年ぶりくらいにやったものが成功しないと私は思います。時代も様変わりしているし、温故知新とは思わないです。ただ、それ以上に、まわり(アイス所属選手)はそれをどういう思いで見てるんだろうとかは思いますね。賛成のアクションしかないのはつまらないですね。これは否定とかじゃなくて、純粋に「なんなくプロレス始めます」ということについて、どう思ってるんだろうって。

――朝陽さんがいたら何かしらモノ申してそうですね。

朝陽 発言することって大事じゃないですか。仮に否定だとしても何か言うことで何かが始まるわけだし。「デビューおめでとう」「ガンバレ」だけって…もったいないなと思います。

結果的に最後のアイス参戦となった3・25道場マッチ
――すべて肯定するばかりではなく、噛みつく選手がいたほうがおもしろいのは事実です。

朝陽 そういう選手ってノレないですよね。発言することで反発もされると思いますけど。特に朝陽は。でもそれを恐れていたら何も変わらないのが団体です。…なんだろう、思い出って美化されがちじゃないですか。実際、私もアイスリボンが大好きだったし、アイスリボンだったからデビューできたと思うし。いろいろやらかすことも多かったけど、それでもアイスに戻ることができたのは怒りつつも毎度受け入れてくれた(佐藤肇)社長、朝陽のお客さん、支えてくださった選手・関係者のおかげ。感謝はもちろんいっぱいあります。でも、それを上回るぐらいの嫌なこともいっぱいあったから。きれいな思い出にはまだなってない、生々しい感情として残ってるから。脇役だったお前が偉そうなこと言うなって言われそうだけど。

――脇役…主役になりたかったですか?

朝陽 んー、狙ったところでそういう素質がないのはわかってるので。

――朝陽選手がアイスリボンの主役を張る日を期待したファンは多いと思いますよ。

朝陽 …わかんないですね。でも脇役だった自覚はあるし、そういうふうに言われてきたから。なれるものならなりたかったけど…って言ってる時点でなれないんですよ。

――朝陽選手はまだ20歳です。ここから主役を狙うことも十分、可能だと思います。

朝陽 私、まだハタチなんですよね。プロレスラーとしてのキャリアでいったらまだまだ赤ちゃんだと思うけど、未来が詰まってんだから、私の中に。その可能性を、十代の頃の人生をアイスリボンに注いできたんだから。それをちょっとでもわかってくれるお客さんはアクトレスガールズに移ってもついてきてくれてる人なのかなって。

――変わらず応援してくれるファンもいると。

朝陽 めっちゃいます。ホントにうれしい。ありがたいですよね。アクトレスって話題がずっと続いていて、ドンドン進んでいく感じなんです。(アイスだと)道場で始まって後楽園とかビッグマッチで決着戦を迎えてみたいな感じだけど。(アクトレスは)終わりが見えない感じがずっと見続けようと思える部分なのかなって。それが弱点でもある気もするけど。

――現在、朝陽さんは松井珠紗、山田奈保選手とのユニット、てっぺん☆で文字通りアクトレスガールズのテッペンを狙っています。

朝陽 (アイスを退団したいまは)身も心も放たれた感じがしていて。もちろん過去にとらわれることもありますけど、過去は過去でしかないし、変わることがない。それを生かしていくには(アクトレスガールズは)いい場所かなって思う。ほかのアクトレスの子が経験してきたことを私はしてないけど、私が積んできた経験も他のアクトレスの子にとっては知らないことだと思うから。それを自分の強みにしたいなって思います。

現在はアクトレスガールズでてっぺん取りをもくろんでいる
――アイスリボンでもアクトレスガールズでもリングで闘っていることは同じかもしれません。ただ、それでもアクトレスガールズはプロレスとは一線を画した団体だと公言。必然、朝陽選手もプロレスというジャンルから飛び出す形になりますが?

朝陽 でもWWEもプロレスじゃなくて、スポーツエンターテインメントですよね。やってることはプロレスと同じだと思うし、私はアクトレスガールズにいても気持ちはプロレスラーである時と変わってないし、別にプロレスを引退や卒業をしたわけでもないし、結局レスラーなんてみんなエンターテイナーっていうところに落ち着きますかね。確かに(アクトレスガールズに)完全移籍することで違和感を覚える人もいるかもしれない。そういう人は一回でいいから見てから言ってほしい。文字という便利な代物に圧力をかけていないで、目で見て、肌で感じたものをSNSでもなんでもいいけど、発信してほしいなと思う。

――なるほど。ただ、こうして朝陽さんを取材する機会が今後は基本的にはないのかなと思うとさみしい気がします。

朝陽 私もそうですよ! 週プロさんに取材してもらうのも載せてもらうのも、名鑑に載るのも、女子プロレスカードになることももうないんだなって。そこはホントさみしい。

――だけど、それが朝陽さんの決めた道なんですもんね。

朝陽 うん。こういう話をすることってもうないと思うけど、仮移籍の頃、自分の中で「アクトレスでやってくのが正しいのかな」とかいっぱい考えたんです。そもそもエンタメ業界を辞めればいいんじゃないかとかも考えたし。でも、1人でも朝陽のことを応援してくれるお客さんがいるなら、その人に向けて朝陽を届けたいなって。そういう人がいるのに自分で朝陽を殺しちゃうのは違うよなって。闘う場所は変わっちゃうけど、朝陽は朝陽だから。私は朝陽としてこれからアクトレスガールズのリングで闘っていきます!

――では最後にメッセージをお願いします。

朝陽 週プロをご覧の皆さま! アイスリボンの朝陽を応援してくださった方々! 本当にありがとうございました!! 思えば、週プロモバイルで半年くらいコラムを書かせて頂いたり、BBMカードにして頂いたりなどなど、デビュー戦から週プロに掲載して頂くなど、本当にお世話になったのが週刊プロレスさんでした。湯沢編集長はじめ、関わって頂いた関係者様、ありがとうございました。これからも益々のご活躍をお祈り申し上げます。

今回、これが朝陽として最後の取材でした。

リングは繋がっている。
続けていればいつか交わる。

そんな誰もが言う綺麗事、朝陽は信じません。自分が決めた道を貫きます。皆さまも、己が決めた道を貫いてください。それでは、また逢う日まで!

朝陽

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