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2023-09-29

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第12回「泣いたり笑ったり」その4

平成29年初場所千秋楽、場所前に引いたおみくじは「凶」だった御嶽海が、11勝を挙げて初の技能賞を獲得

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人生って、おもしろいですね。
いいこともあれば、悪いこともある。ホラ、よく言うじゃありませんか。降り止まぬ雨はないし、朝の来ない夜はないって。
どんなに辛いことがあったって、いつかは笑い話に変わる日もやって来ます。
決して捨て鉢になってはいけないってね。
みんな、泣いたり、笑ったりしながら生きているんですよ。
力士たちもまさにそうです。たとえ自分の思うようにいかなくても、あきらめずにコツコツとやっていれば笑う日が来ると信じているからこそ、がんばれるんです。
そんな泣き言と笑い話が背中合わせのエピソードです。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

「凶」が「大吉」に

正月に神社やお寺に初詣でに行き、おみくじを引いて新しい年の運勢を占う。おなじみの日本の風物詩だ。
 
平成29(2017)年の正月、当時西前頭筆頭の御嶽海も東京・浅草にある浅草寺に初詣に行き、願いをこめておみくじを引いた。
 
ところが、こともあろうに引き当てたのは「凶」で、争いごとは困難、と書いてあった。勝ちを争う力士にとっては最悪だ。

「なんだ、一番ダメじゃん。でも、これ以上悪いことはないだろうから」
 
と御嶽海は気を取り直して帰ってきたそうだが、初場所が始まると、いきなり初日に大関の豪栄道(現武隈親方)、2日目に横綱の日馬富士を破って2連勝スタート。その後も、横綱鶴竜(現鶴竜親方)、大関琴奨菊(現秀ノ山親方)らを相次いで破り、11日目には早々と勝ち越してしまった。「凶」が「大吉」に変わったのだ。最終的には11勝を挙げ、初の技能賞まで獲得した御嶽海は、

「この調子で来場所も同じぐらい勝ちたい」
 
と欲の深いことを言っていたが、次の場所、小結に返り咲くと、そこから17場所も連続して三役を維持する大ホームランをかっ飛ばした。こういう「凶」なら、引いてみたいものです。

月刊『相撲』令和2年3月号掲載

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