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2023-11-17

【陸上】初心にかえる 九州共立大に学ぶ 競技力向上のための自分自身との向き合い方⑤ 目標設定は登山と同じ

写真/黒崎雅久

シーズンも終盤戦。なかには残り数試合、という選手もいるかもしれませんが、多くの選手が冬期練習に入っていることと思います。さて、冬期“鍛練期”といわれるこれからの期間、「一皮むけてやる!」と意気込んでいる選手も多いのではないでしょうか。技術を積み上げるには土台となる基礎がとても大事です。
「自分自身の花を咲かせる」に続いて、学生投てき界をけん引する九州共立大学陸上競技部の疋田晃久監督に聞いた冬期練習を迎えるにあたってのポイントを紹介します。第五段は「目標設定は登山と同じ」です。正しく目標を設定し、そこに向けての道筋を立てましょう。これによってすべてがスムーズにいくとは限りませんが、壁を前にしたときの解決策も自ら引き寄せることができるようになるはずです。

目標達成への道筋を鮮明にする

自分自身を成長させるために「自分の現状を知る」ことが必要になります。「学ぶということは自分自身と向き合うことからスタート」と疋田監督がいうように、目標設定、課題解決、成長、すべてにおいて自分自身と向き合うことが第一歩です。

九州共立大では、冬期練習に入る前にシーズンの振り返りと自己分析に1週間ほどの時間を費やすそう。毎試合ごとに選手自身が記録などを入力している試合の反省ノートを作成。その蓄積したノートをシーズン終了後に選手が個々で分析をしています。
分析の一例として、シーズンを通して、記録の良かった上位5試合と下位5試合の比較があります。それぞれの試合の位置づけ、モチベーションなど体調だけでなく心理的要素の分析を行うことで、試合前にどのような精神状態で臨むと良い結果が出やすいかを客観的に評価できるのです。その分析を行った上で、冬期の目標設定に入ることでより具体的な目標が掲げられるというのです。
その目標設定について、疋田監督は、このような話を選手の皆さんにしているそうです。

これから、“目標”という山を登ります。頂上は“目標達成”。そこに向けて、準備を進めますが、そこがどんな山なのかが分からないと準備ができませんよね。山を登り始める前に、どんな山を登りたいのか、イメージを膨らませてみてください。
・山(=目標)の高さはどれくらい?
・今持っている装備(能力)は?
・山を登るに当たって足りない装備(能力)は?
・今その山のどのあたりにいる?
などなど……。

そのイメージを具体的にすることは、目標達成までの道のりをより明確にすることにつながります。シーズンの振り返りを行い、現状を把握する。そして自分が立てた目標に対して具体性が出てくると、おのずとやるべきことが見えてくるはずです。

ただ、ここで注意点が一つ。目標達成に向けて、多くの人は課題が山積みでしょう。必要な装備がたくさんあるはずです。でも冬期練習の期間は限られています。“オタク”ではなく“競技者”の皆さんは、「できることを増やす」ために地道にコツコツ同じことを反復する必要があります(第一弾「あなたは競技者? オタク?」参照)。一気に結果が出ることはそうそうありません。一番大きな目標達成のために、中目標、小目標をクリアしながら少しずつ山頂に向かって歩を進めましょう。

最初の「良くなる」感覚はあくまでも変化を加えたことでの即時効果であることを忘れないでください。身につくまでには時間が必要です。やらなければならないことがたくさんあるのであれば自分自身のなかで優先順位を決めて一つずつ丁寧に取り組みましょう。即時効果に満足せず、同じことを繰り返せるかで、目標達成に近づけるかも変わってくるのです。

5回に分けて冬期前に改めて見直すべきポイントを紹介してきました。「大会で結果を残したい」「競技力を向上させたい」などそれぞれの目標達成に向け、今一度自分自身と向き合う時間をつくってみてはいかがでしょうか。

 
※この記事は2022年11月14日発行「陸上競技マガジン12月号」に掲載したものを再編集したものです。

文/陸上競技マガジン編集部 写真/黒崎雅久

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