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2023-11-15

【相撲編集部が選ぶ九州場所4日目の一番】霧島に続き貴景勝にも土。今場所後の綱取りは早くも崖っぷち?

明生に寄り切られ、天を仰ぐ貴景勝。今場所後の綱取りに向けては痛すぎる1敗となった

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明生(寄り切り)貴景勝

ほぼ無風だった優勝戦線に、急に波風が立ち出した。
 
昨日まで快調に白星を並べていた3大関のうち、2人に土がついた。
 
大関登場の結び3番。まず豊昇龍が翔猿をうまく組み止めて寄り切ったあと、ここまで3大関の中でも最もいい勝ち方をしていると思われた霧島がよもやの黒星だ。昨日まではすべて立ち合いに当たり勝って先手を取っていたが、この日は立ち合いにさほど鋭さがなく、髙安に逆に突き起こされた。体勢の低さという霧島のアドバンテージが消えてしまえば、髙安のパワーが生きる展開。突き起こされた霧島が頭を下げようとするところ、タイミングのいい突き落としが決まった。
 
館内がざわめく中、結びで土俵に上がった、「綱取り大関」の貴景勝も白星をつかむことはできなかった。
 
動きの速い明生との対戦。立ち合い少し突き起こして、左からのイナシ。そのまま青房下に押し込んだところまでは悪くなかった。ただ、「(大関のイナシは)頭に入っていました」という明生を攻め切ることができず、思わず相手の手を払うような引き。これで立ち合いからの攻めの流れを失ってしまった。いったん攻めが途切れ、動き合いの展開になれば明生に勝機が出てくる。明生は右に飛び違うように体を入れ替えると、貴景勝がたたらを踏んだところをサッと二本差し。そのまま寄り切った。

「攻め切れなかった」という問いに「まあ、負けるときはそういうことだと思う」と貴景勝。一方、明生は「しっかり集中して取れたと思います。(結びでの白星は)気持ちがいい。(懸賞もたくさんかかって)うれしいですね」と会心の1勝を振り返った。
 
貴景勝はそれでも、この日もいつもと同様、「しっかり準備して、また一生懸命やるだけ」と、明日に向けて集中していく姿勢を示した。そのことでも分かるとおり、この大関は1敗したからと言って、たちまち明日からはガタガタとなるような力士ではないが、ただ、今場所後の綱取りという観点で見ると、この時点での1敗は相当に痛い。
 
今場所後の綱取りは「高いレベルでの優勝」が条件なので、数字的にはこれで残りはほぼ全勝が要求されることに。加えて、優勝に向けても、この日を終わって豊昇龍、大栄翔、琴ノ若の3人に前を行かれ(大栄翔と琴ノ若は5日目に対戦があるので、どちらかは明日、1敗に下がってくるが)、霧島と並びという状況は、現時点で高い優勝確率をはじき出せるものではない。
 
もちろんまだ11日間も残っているので、先の展開はどう転んでいくこともあり得るが、こと今場所後の綱取りに関する限り、早くも土俵際に追い込まれたということは間違いないだろう。
 
4日目を終え、全勝は三役では豊昇龍、大栄翔、琴ノ若、平幕で熱海富士、玉鷲、一山本の計6人。貴景勝、霧島ら7人が1敗で続く形となった。
 
先述のとおり、この中から明日は大栄翔と琴ノ若の両関脇が激突。最近は三役同士の対戦を後半戦に残しすぎる傾向があったので、前半戦から少しずつ消化していく取組編成の方針には大賛成だが、さすがにこのカードはまだもったいないのでは?(笑)と感じさせる好取組だ。対戦成績も通算(琴ノ若が不戦敗1含め6勝5敗)、この1年(3勝3敗)ともほぼ互角。次の大関へ向け、ライバルを倒してリードを奪うのは果たしてどちらか。今から明日が楽しみだ。

文=藤本泰祐

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