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2023-09-23

【相撲編集部が選ぶ秋場所14日目の一番】貴景勝、豊昇龍に投げられ4敗! 熱海富士が初Vに王手掛け千秋楽へ

貴景勝は豊昇龍の上手投げに転がされて4敗と大きく後退。果たして千秋楽に待つ結末は?

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豊昇龍(上手投げ)貴景勝

投げられて土俵上で裏返しにされた後、土俵に腰掛けるようにしてしばしぼう然とした表情を作った。
 
優勝に最短距離にいるかと思われた大関貴景勝が豊昇龍の上手投げに敗れて4敗目。痛すぎる星を落とした。
 
やはり、豊昇龍戦には落とし穴が待っていた。この日の立ち合い。きのうのこのコラムで書いたように、相手を見ていこうとしたかどうかは分からないが、この日の貴景勝は、豊昇龍の鋭い立ち合いに対して少しタイミングが遅れ、低く当たりに行ったものの、すぐに起こされ、先に少し押されてしまった。
 
貴景勝はその後、押して出るが、少し上体が立っているのと、立ち合いから継続した勢いのある押しでないので、豊昇龍に動きを見るだけの余裕を与えることになった。相手の胸を突いたり、手を叩いたりしながら距離を取った豊昇龍は、動きの中で右に回るとサッと廻しを取って、即座に上手投げ。豪快に貴景勝を転がした。豊昇龍はこれで7勝7敗。千秋楽の勝ち越しへ望みをつないだ。
 
一方、きのうまでのもう一人の3敗の熱海富士は、この日は阿炎との対戦。立ち合いの阿炎の変化をよく残すと、得意の右差し左上手。胸を合わせて寄り切った。
 
この日、4敗だった力士では、大栄翔、髙安、北青鵬が勝って4敗を守り、その結果、熱海富士がただ一人3敗、4敗に貴景勝と上記3人という形で千秋楽を迎えることになった。もちろん、ただ一人3敗の熱海富士は千秋楽に勝てば初優勝だ。21歳の若いパワーで一気に決めることができるか。
 
また、トップを走る力士が2人から1人に減ったことで、きのうまではあまりなかった優勝決定戦の可能性も、一気に大きくなってきた。熱海富士がもし千秋楽に敗れれば、4敗力士のうち、あす勝った者との優勝決定戦だ。
 
史上4番目の若年優勝を果たしての熱海富士の笑顔も見てみたいが、一方で、この日、腰を痛めながらも懸命の突きを繰り出して翔猿を送り出した髙安や、霧島に二本差されながらも相手をいったん腰に乗せての小手投げという捨て身の技で白星をもぎ取った大栄翔の執念を見ると、彼らを優勝決定戦に進ませてあげたい、という思いも沸いてくる。
 
千秋楽の対戦相手は、熱海富士はちょっと予想外だったが朝乃山、貴景勝と大栄翔が4敗同士のサバイバル戦、髙安が霧島、北青鵬は豊昇龍と決まった。
 
熱海富士は朝乃山とは右の相四つ。とにかくどちらが先に左の上手をガッチリつかめるかが勝負だ。朝乃山がまず右を差してくるタイプだけに、熱海富士はいい立ち合いができればサッと左上手が取れる可能性はある。そうなれば、朝乃山は実力者だが今場所絶好調とは言えないだけに、勝機も十分出てくるのではないか。初顔合わせだが、あるいは対朝乃山を得意とする部屋の横綱照ノ富士から秘策を授けてもらえるかも??? そう考えると、熱海富士が勝ってすんなり優勝の可能性も、それなりにあるように思う。
 
髙安と北青鵬は、ここへきての対大関戦はさすがにやや不利か。貴景勝と大栄翔は、最近の対戦成績では貴景勝が9連勝と圧倒しているが、最近の内容のよさと、「(優勝争いは)トップで行くわけじゃないので、考えてないです」と語っているように、気持ちの上で挑戦者になれるという点では大栄翔にいい要素もある。貴景勝はすでに今場所、気持ちのピークを使ってしまったのでは? とも考えられるので、この勝負は意外にやってみなければ分からない気がする。優勝決定戦になるようなら、番付が上で経験もあるので、この一戦の勝者が熱海富士を倒す可能性は十分にあるだろう。
 
さあ、どんな結末が待っているのか。以下のコメントは貴景勝が敗れる前のものではあるが、ここに来てもまだ「(優勝争いは)別に。どうなんですかね。(ここ2日間も)ぐっすりですね。(優勝は)番付が下なので、意識することはない」と発言している熱海富士の大物感が、何とも不思議でもあり、頼もしくもある。

文=藤本泰祐

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